頚椎後縦靱帯骨化症とは、背骨の中を縦に通っている後縦靱帯と呼ばれる靭帯が骨になる(骨化する)ことによって神経が圧迫され、手足のしびれや手足の運動麻痺の症状が現れる病気です。
頚椎後縦靱帯骨化症では、必ずしもすべての患者さんに症状が現れるわけではなく、中には、症状が現れないまま経過するケースも少なくありません。頚椎後縦靱帯骨化症は、主に、症状が進行し重症化するタイプと、症状がほぼ現れず基本的に経過観察のみが行われ軽症のまま経過するタイプに分けられ、それぞれ経過や治療法が大きく異なる点が特徴です。
今回は、九段坂病院 整形外科の進藤 重雄先生に、頚椎後縦靱帯骨化症の原因や症状、この病気の特徴についてお話しいただきました。
後縦靱帯骨化症とは、背骨の中を縦に通っている後縦靱帯と呼ばれる靭帯が骨になる(骨化する)病気です。骨化することによって脳からつながる中枢神経系である脊髄の通り道である脊柱管が狭くなると、脊髄や神経根*などの神経が圧迫され、手足のしびれや感覚障害*、運動麻痺*などの症状が現れることがあります。
なお、首に位置する後縦靱帯に骨化が生じたものを頚椎後縦靱帯骨化症と呼びます。
神経根:脊髄から分岐している神経
感覚障害:痛みや温度の感覚を感じにくくなること
運動麻痺:書字が下手になる箸が使えない、早く歩けない、よろめく、平らなところでつまずく
頚椎後縦靱帯骨化症は、50歳前後の中年層で発症することが多いといわれています。ただし、30〜40歳代の若年層や、また60歳以上の高齢者に発見されるケースもあります。特に、症状が現れない場合には、病気の発症に気づかないまま経過し、何らかの画像検査をきっかけに発見されることが多いため、発症から年数が経ってから発見されることも多いと考えられています。
男女比についてお話しすると、2対1の割合で男性に多いことがわかっています。
頚椎後縦靱帯骨化症と一言でいっても、重症化するタイプと軽症のまま経過するタイプでは、経過や治療法が大きく異なります。
重症化するタイプでは、病気の進行と共に骨化する場所が広がっていったり、複数の場所に骨化が起こったりします。症状の程度は患者さんによって異なりますが、手足のしびれなどの神経症状などが現れます。
一方、軽症のまま経過するタイプでは、病気の進行が認められず、症状がほぼ現れないまま経過することが多いです。そのため、このようなタイプでは、積極的な治療は行わずに、経過観察にとどめることをおすすめします。
2018年12月現在、頚椎後縦靱帯骨化症の原因は特定されていません。現状では、複数の要因が関連しあって発症すると考えられています。
病気の発症に関連する要素として、以下が考えられています。
など
ただし、これらの要素をもつ方が必ずしも病気を発症するわけではありません。また、なぜこれらの要素が頚椎後縦靱帯骨化症の発症につながるかまではわかっておらず、研究が続けられています。
頚椎後縦靱帯骨化症は、ほぼ無症状で軽症のまま経過するタイプと、病気の進行が認められ手足のしびれなどの症状が重症化するタイプに分けられます。
頚椎後縦靱帯骨化症が起こっても、無症状のまま経過するケースも多いといわれています。このようなケースでは、何らかの画像検査によって偶然、骨化が発見されることもありますが、中には病気が発見されないまま生活される方も少なくないと考えられています。
骨化した部分がある程度の大きさになると、骨化によって神経が圧迫され、首の痛み、手足のしびれや感覚障害が起こります。さらに、病気の進行とともに、痛みやしびれの範囲が広がると、手や足が思うように動かなくなる運動障害が起こることがあります。
重症になると、手が使えなくなり、歩行困難や排尿・排便障害が起こり、一人で生活することが困難になることもありえます。
頚椎後縦靱帯骨化症は、軽症であれば、ほぼ進行しないまま経過するケースが多いです。骨化した部分がわずかに広がることもありますが、症状が現れないことが多いでしょう。
頚椎後縦靱帯骨化症が進行し重症化するタイプでは、骨化した部分が広がっていったり、複数の場所に骨化が起こったりすることがあります。そのため、骨化した部分が小さい発症初期はたとえ無症状であったとしても、骨化の広がりとともに、徐々に手足のしびれなどの症状が強く現れてくる傾向があります。
特に、50歳代までは、骨化するスピードが速かったり、さまざまな場所に骨化が起こったりするケースがあるといわれています。しかし、70歳以降になると、加齢とともに骨化していくスピードや頻度は下がると考えられています。
国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 診療部長
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