こうじゅうじんたいこっかしょう

後縦靱帯骨化症

最終更新日
2023年11月02日
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2023/11/02
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

後縦靱帯骨化症は、背骨の中(脊柱管(せきちゅうかん))を縦に貫いている後縦靱帯が骨化(骨のように厚く硬くなること)する病気です。

後縦靱帯が骨化すると脊柱管が狭くなり、後縦靱帯とともに脊柱管を通る脊髄や神経根(脊髄から枝分かれする神経)が圧迫されて、感覚障害や運動障害などのさまざまな神経症状を引き起こします。なお、後縦靱帯が骨化しても必ずしも症状が現れるわけではありません。

後縦靱帯骨化症は指定難病の1つです。50歳前後の男性に発症することが多く、糖尿病肥満症の患者が発症しやすいとされています。しかし、今のところ原因は特定されていません。

治療では、神経症状を和らげることを目的とした薬物療法や、背骨を固定するための装具装着などが行われ、症状が悪化した場合は骨化した後縦靱帯を切除する手術や脊柱管を広げる椎弓形成術などが行われます。

原因

現在のところ、明確な発症メカニズムは解明されていません。しかし、この病気は遺伝的背景、性ホルモンの異常、糖尿病、肥満傾向、加齢、背骨への負担、カルシウムやビタミンDの代謝異常など、さまざまな要因が関与していると考えられています。

また、後縦靱帯骨化症は家族内での発症が多い病気としても知られており、遺伝的な要因とそのほかの要因が重なり合うことで発症すると考えられています。

症状

後縦靱帯が骨化し、脊柱管が狭くなることにより、同じく脊柱管に存在する脊髄や神経根が圧迫され、さまざまな神経症状を引き起こします。必ずしも症状が進行するわけではありませんが、軽度の外傷や転倒をきっかけとして症状が強くなることもあるため注意が必要です。

また、症状の現れ方は、頚椎(けいつい)、胸椎、腰椎(ようつい)のどこに発症するかによって異なります。

頚椎に発症した場合

頚椎に発症することがもっとも多いとされ、首や肩甲骨の周囲、指先などに痛みやしびれが引き起こされます。症状が進行すると指の動きが悪くなることで細かい作業が困難になったり、痛みやしびれなどの症状が上半身から下半身へ広がって、足に感覚障害や運動障害などが生じたりします。さらに重症化すると歩行困難や排尿・排便の障害が現れることもあります。また、1人で日常の生活をすることが難しくなる場合もあります。

胸椎に発症した場合

体幹や下半身に症状が現れやすく、初期症状では足の脱力やしびれを感じます。頚椎よりも発生頻度は低いとされていますが、重症化すると頚椎に発症した場合と同様、立ったり歩いたりすることが困難になったり、排尿や排便の障害が現れたりします。

腰椎に発症した場合

頚椎、胸椎ほど発症頻度は高くありません。足のしびれや脱力が生じることが多く、歩行障害にまで至ることは少ないとされています。

検査・診断

症状から後縦靱帯骨化症が疑われるときは、後縦靱帯の一部が骨化しているか確認するため、画像検査を行います。

X線検査で診断がつくことが多いですが、診断が難しい場合にはCT検査、MRI検査が行われます。CT検査では骨化の範囲や骨化している部分の大きさを、MRI検査では脊髄が圧迫されている程度を判断する際に有用です。

また、後縦靱帯骨化症と似た神経症状を引き起こす椎間板(ついかんばん)ヘルニア脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)脳梗塞(のうこうそく)などの病気と鑑別するためにも画像検査が行われることもあります。

治療

脊柱管内の後縦靱帯骨化が起きても症状が現れないこともあり、その場合は特別な治療は必要ありません。

軽度な神経症状のみの場合は、痛み止めや筋弛緩薬などを用いた薬物療法が行われたり、頚椎カラー(患部を安静にして神経を圧迫から守るための装具)が使用されたりします。しかし、これらの対症療法でも症状が改善しない場合や症状がひどい場合は、神経を圧迫している骨となった部位を切除したり、脊柱管を広げたりするための手術が必要です。

なお、後縦靱帯骨化症は手術後に再発、あるいはほかの部位にできることもあるため、定期的な画像検査がすすめられます。

予防

後縦靱帯骨化症は明確な発症メカニズムが解明されていないため、確立した予防法はないのが現状です。しかし、遺伝的な要因のほかに糖尿病肥満症などの病気、背骨への過度な負担などが発症に関与していると考えられていることから、生活習慣病の予防や正しい姿勢の維持などが後縦靱帯骨化症の予防につながる可能性があります。

また、症状がない場合でも成人の約3%に後縦靱帯の骨化がみられるとの報告もあるため、気になる症状があるときは早めに医療機関を受診して適切な対処や治療を受けることが大切です。

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後縦靱帯骨化症を得意な領域としている医師

  • 北里大学医学部 整形外科学 診療教授

    • 腰部脊柱管狭窄症
      • 椎間不安定性に応じた除圧術あるいは固定術
    • 後縦靱帯骨化症
      • 病態に応じた除圧術あるいは除圧固定術
    • 椎間板ヘルニア
      • ヘルニアが生じた部位、圧迫の形態に合わせた前方、後方、前後合併アプローチによる手術 腰椎椎間板ヘルニアに対してはヘルニコアにも対応しています。
  • 品川志匠会病院 所属、新横浜スパインクリニック 所属

    • 頚椎症性神経根症
      • 顕微鏡下頚椎前方椎間孔拡大術(Microsurgical anterior cervical Foraminotomy:MacF)
    • 頚椎椎間板ヘルニア
      • 顕微鏡下頚椎前方椎間孔拡大術(Microsurgical anterior cervical Foraminotomy:MacF)
    • 後縦靱帯骨化症
      • 顕微鏡下頚椎前方椎間孔拡大術(Microsurgical anterior cervical Foraminotomy:MacF)
  • 国際医療福祉大学三田病院 整形外科 病院講師、国際医療福祉大学 医学部 整形外科学

    • 腰椎すべり症
      • 側方椎体間固定術
      • 後方椎体間固定術
      • 腰椎椎弓切除術
    • 腰部脊柱管狭窄症
      • 側方椎体間固定術
      • 後方椎体間固定術
      • 腰椎椎弓切除術
    • 頚椎症性神経根症
      • 神経ブロック
      • 頚椎人工椎間板置換術
      • 頚椎前方固定術
      • 頚椎後方除圧術
    • 後縦靱帯骨化症
      • 後方固定術
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      • 椎弓形成術