しょくどうけいしつ

食道憩室

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

食道憩室とは、食道の壁の一部分が、内腔から嚢状(のうじょう)(ふくろのようなかたち)、円錐状または台形状に突出したものをいいます。

食道は、喉(咽頭)と胃の間をつないでいる管状の臓器です。長さは約25cm程度、太さは3cm程度であり、食べたものを喉もとから胃へと送るはたらきをしています。食道の大部分は胸部にありますが、一部は頸部(けいぶ)や腹部に位置しています。食道壁は4mm程度の厚みがあり、内側から外側に向かって順に粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜という4つの層から成り立っています。このうち、食べた物を胃に送る働はたらきを担っているのは筋層です。筋層に運ばれ、重力で下に流れることで胃に食べ物が送り込まれます。

食道憩室は、以下の2種類にわけられます。

  • 圧出性憩室:食道の内腔の圧が高くなることによって壁が押し出されてできる場合
  • 牽引性憩室:食道の周りの臓器に起きた炎症が食道にも及んで、炎症・癒着によって食道壁が引っ張られてできる場合

構造上、圧出性憩室には筋層がなく、牽引性憩室には筋層があるのが一般的です。また、食道には憩室ができやすい部位が3か所あります。

  • 咽頭(喉の部分)
  • 中部食道(食道の真ん中の部分)
  • 横隔膜上(食道の下部)

日本では中部食道憩室がもっとも多く70~80%を占めています。次いで、横隔膜上憩室が10~20%、咽頭食道憩室が10%前後とされています。一方、欧米では咽頭食道憩室がもっとも多くみられます。

原因

咽頭食道憩室

食道の壁のうちもともと脆弱性(ぜいじゃくせい)がある部分に圧力がかかることで、咽頭(喉)から食道に移行する部分に生じる圧出性の憩室です。このうち特に、輪状咽頭筋の部分に発生するものを憩室(Zenker憩室)と呼びます。

中部食道憩室

近くにある臓器で起こった炎症(肺門部のリンパ節の結核など)が食道の壁に及ぶことで食道中部に発生する牽引性の憩室です。

横隔膜上憩室

食道の壁の脆弱な部分に、食道の動きの異常などが加わることで、内腔の圧力が高まって生じる圧出性の憩室です。横隔膜の近くの食道下部に発生します。食道アカラシア(食道から胃への食物の流れがスムーズに行われなくなってしまう病気)、食道裂孔ヘルニア(本来は腹部にあるべき胃の一部が食道のほうに飛び出てしまう病気)などに伴って発生することが多いとされています。

症状

小さな食道憩室の場合には、特に症状がないことが多いです。憩室が大きくなると、憩室自体が食道を圧迫してしまうことで飲み込みにくさを感じる、食べ物が上手く通過しないといった症状を起こすことがあります。

咽頭食道憩室では、はじめは喉の違和感を覚える程度ですが、憩室が大きくなってくると飲み込みにくさを感じたり、食べ物の逆流を起こしたりすることがあります(逆流によって、夜間に咳がでたり肺炎を起こすこともあります)。

中部食道憩室、横隔膜上憩室は症状がない場合が多いですが、憩室が大きくなると飲み込み難さ、逆流、痛みなどを起こすことがあります。憩室内に潰瘍ができて、出血したり、食道の壁に穴が開いてしまったりする(穿孔といいます)こともあります。

検査・診断

食道憩室では、食道X線造影検査が有効な検査としてあげられます。口からバリウムなどの造影剤を服用して、レントゲンを用いて食道を撮影する検査です。健診などで行われる食道X線検査において、食道憩室を認める割合はおよそ0.5~1%とされており、比較的まれな病気だといえます。

圧力が高まることで生じる咽頭食道憩室や横隔膜上憩室では、嚢状に突出する憩室が認められます。炎症・癒着によって食道壁が牽引されて発生する中部食道憩室では、円錐状または台形状に突出する憩室を認めます。

また、憩室内に食べた物が溜まってしまっていないか確認したり、癌の合併や潰瘍・出血などの有無をチェックしたりする目的で、上部消化管内視鏡検査胃カメラ検査)も行われます。

治療

食道憩室の多くは無症状であるため、治療を行う必要はありません。特に中部食道憩室や横隔膜上憩室では無症状のことが多いため、治療を要さない場合が多くあります。憩室が大きくなって、症状が出たり、潰瘍や出血などの合併症を起こしたりするような場合には、主に外科的治療(手術治療)を行って憩室を切除する治療などを検討します。横隔膜上憩室の場合には、原因となっている食道アカラシアや食道裂肛ヘルニアに対する治療も併せて行っていく必要があります。

食道憩室の多くは症状なく経過し、予後のよい病気とされています。中部食道憩室や横隔膜上憩室では、まれですが憩室内に食道癌ができることがあるため、定期的に上部消化管内視鏡検査胃カメラ検査)で確認することが望ましいとされます。

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