概要
強迫性障害とは、実際にはありえない事柄や状況に対する不安感に、それが不合理でバカバカしいと分かりながらも過度にとらわれ、その不安を解消するために一見無意味で過剰と思われるような行動を繰り返す病気のことです。具体的には、何度も確認したにもかかわらず“家の鍵をかけたかどうか”を不安に思って繰り返し家に戻ったり、汚物などを触ったわけでもないのに“手に病原体がついている”ことを気にして何時間も手を洗い続けたりすることを指します。
生活上のさまざまなことに不安感を持ち、何度も確認するといった行動は誰にでも経験があるものです。一方で、強迫性障害は“強迫観念”と“強迫行為”が続き支配されることで日常生活に大きな支障をきたすような病的な状態を引き起こします。
強迫性障害は10~20歳代など若い世代に発症することが多く、発症率は1~2%と珍しくない病気です。また不安症やうつ病など、ほかの精神疾患を同時に患っていることも多々あるため、治療が難しいケースも少なくありません。
原因
強迫性障害は精神疾患の1つですが、はっきりとした発症メカニズムは解明されていません。
一方で、強迫性障害は不安症、うつ病、摂食障害、強迫性パーソナリティー障害など、ほかの精神疾患を併発しているケースも多く、何らかの精神的な不調が背景にある可能性が示唆されています。また、しっかり者、頼りがいがある、真面目で完璧主義、といった性格の人が発症しやすいのも特徴の1つです。
症状
強迫性障害は、不安感や恐怖心をあおる非現実的な事柄や状況が繰り返し頭に浮かぶ“強迫観念”と、その強迫観念に対処しようとする“強迫行為”が生じる病気です。
この病気によって発生する“強迫観念”と“強迫行為”の現れ方は人によって大きく異なります。強迫観念としては、“不潔”や“感染”に対する過度な懸念、“自分の不注意で誰かを傷つけていないか”、あるいは“ミスをしていないか”に対する過度な心配、“完璧さ”への過度な追求などが挙げられます。
一方、強迫行為としては、それぞれに対して過剰な手洗いや入浴・消毒などの洗浄行為、確認行為、儀式的な繰り返し行為や整理整頓などが見られます。また数を数える、おまじないを繰り返すなど心の中の行為も含まれます。
日常生活を送るうえで、さまざまなことに不安を感じ、それを解消しようと試みるのは誰にでもあることです。しかし、強迫性障害ではそれらの心配や行為が過剰になり過ぎることにより、日常生活を送ることが困難な状態に陥ります。大半のケースでは、自身の強迫観念と強迫行為が非現実的であることをある程度は理解していますが、その行動を無理にやめようと試みるとかえって不安が高まり、精神的に不安定な状態に陥りやすくなるのが特徴です。
また、強迫性障害の多くは不安症、うつ病、摂食障害、強迫性パーソナリティー障害など、ほかの精神疾患を合併することが分かっています。そのため、抑うつ気分や不眠、対人関係の未熟さなど、さまざまな症状を伴うのが一般的です。
検査・診断
強迫性障害は、一般的な病気のように血液検査や画像検査で異常が見られることはありません。そのため、症状の程度、日常生活の困難さなど、さまざまな状況を総合的に判断して診断が下されます。
なお、アメリカ精神医学会の最新の診断基準よれば、次のような場合を強迫性障害と診断するとしています。
- 強迫観念または強迫行為もしくはその両方が存在する
- 不適切な強迫観念を和らげるために強迫行為をしようと試みる
- 強迫行為は状況に対して現実的・有効的でなく明らかに過剰なものである
- 強迫観念や強迫行為のために時間を浪費し、社会生活や日常生活に支障をきたしている
治療
強迫性障害と診断された場合は次のような治療が行われます。
薬物療法
強迫性障害の治療は、うつ病の治療に用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などによる薬物療法が主体となります。どのようなメカニズムでSSRIが強迫性障害の症状を改善するか明確には分かっていませんが、この薬を服用することで感情や気分の安定を促す“セロトニン”と呼ばれる脳内物質が増えることが症状改善につながると考えられています。
精神療法
強迫性障害の治療は薬物療法だけでは十分な効果が得られないことも少なくありません。そのため、薬物療法と同時に、症状の不合理性に関する理解を促し、行動修正(逃げない・繰り返さないなど)を図る“認知行動療法”を行うのが一般的です。また、医師や臨床心理士とのカウンセリングなどを行う精神療法を併用します。
特に“認知行動療法”は、自身の考えと現実との歪みを修正するなど強迫性障害の改善に一定の効果が期待できます。
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実績のある医師
周辺で強迫性障害の実績がある医師
東京慈恵会医科大学附属第三病院 院長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、腫瘍内科、消化器内科、肝臓内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、肝胆膵外科、肛門外科、内分泌外科、頭頸部外科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
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慶應義塾大学医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授
内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、放射線診断科、放射線治療科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
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