人を元気にする仕事がしたい——かつて抱いた思いを胸に

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人を元気にする仕事がしたい——かつて抱いた思いを胸に

スポーツ整形外科医として患者さんや選手のケアに尽力する武田 秀樹先生のストーリー

NTT東日本関東病院 スポーツ整形外科部長
武田 秀樹 先生

「自分もいつか人を元気にする仕事をしたい」と思わせてくれた存在

30年以上も前の話です。中学生の頃、大好きなバスケットボールに打ち込んでいるときになぜか思うように力が出せず、困っていました。運動をするだけで動悸や息切れがしたり、やたらと疲れや倦怠感(けんたいかん)を感じるようになっていたのです。原因がまったく分からず、“僕の努力が足りないせいだ”とさらに自分を追い込む毎日。学校の先生はそんな私を見かねて「病院でしっかりと調べてもらいなさい」と言ってくれました。

病院に行き、いくつかの検査をした結果、鉄欠乏性貧血(いわゆる貧血)であったことが判明。ヘモグロビン*の値は6g/dlほど(通常12g/dl未満で貧血と判定される)と非常に低く、治療を要する状態でした。担当医の先生に「運動量が多く鉄分が不足しやすい状態であり、さらに育ち盛りの体が必要とする鉄分を十分に取れていない可能性がある」と教えてもらいました。運動を少しの間休んで栄養バランスのよい食事をするようにと指導を受け、私はそのとおりに生活しました。すると本当に体調がよくなり、部活に全力を注げるまでに回復したのです。「ああ、医者ってすごいな」と感動しました。このときから、自分もいつか人を元気にする仕事をしたい、と考えるようになりました。

*ヘモグロビン:赤血球に含まれる赤色素たんぱく質のこと。

高校生の頃、バスケ部にて(背番号14番:武田秀樹先生)
高校生の頃、バスケ部にて(背番号14番:武田秀樹先生)

スポーツに関わりたいと思い整形外科の道へ

高校でもバスケットボール部に在籍し、練習や試合に明け暮れました。顧問の先生がとても熱心で、それこそ365日練習に付き合ってくれるような方だったので、一時期は学校の先生に憧れたことも。しかし最終的には、かねてより心に抱いていた“医師になる”という夢を叶えるべく勉強に没頭し、金沢大学医学部に進学することができました。

武田先生

当時は今のように初期研修でさまざまな診療科を経験できるわけではなく、在学中に自分の診療科を決める必要がありました。そこで、スポーツに関わることのできる診療科という視点で整形外科・婦人科・脳神経外科・循環器内科の4つに的を絞り、各診療科で活躍されている方の話を聞いたり、仕事の内容を調べたりしました。その中で、スポーツの現場ともっとも近いのは整形外科だと確信し、医学部を卒業後、東京大学の整形外科に入局することにしたのです。

整形外科の先に“スポーツ整形外科”があると知った

東京大学 整形外科に入局すると決めたのは、増島(ますじま) (あつし)先生(当時 東芝病院 スポーツ整形外科/現 帝京平成大学 現代ライフ学部 経営学科 教授)との出会いがきっかけです。増島先生は1988年のソウルオリンピックから2004年のアテネオリンピックまで連続して選手団に帯同し、スポーツドクターとして活躍されました。医学生の頃に増島先生に関する記事を読み、「まずは整形外科医として一人前になること。その先にスポーツ整形外科がある。プロとして、目の前の患者さんをいかに治すかを追求しなければいけない」という考えに感銘を受けました。増島先生の話を直接聞いてみたいと思い、すぐに東京へ。増島先生にお会いして「スポーツ整形外科の道に進みたい」と相談したところ、「まずは東京大学の整形外科で学び、基礎を固めるとよい」と助言いただいたのです。私はそのとおりに道を定め、整形外科医として一人前になるべく10年ほど臨床経験を積みました。

2012年からは東芝病院で増島先生と共に働くことができました。増島先生にはスポーツ整形外科医としての考え方や知識など、さまざまなことを学ばせていただき、心から感謝しています。

増島 篤先生(写真右)と共に
増島 篤先生(写真右)と共に

けがが起こるメカニズムなど新たな知見を得た留学

2010年にノルウェーの“オスロスポーツトラウマリサーチセンター(The Oslo Sports Trauma Research Center)”へ留学の機会を得ました。自身のキャリアパスで一度は海外に留学しておきたいと思い、周囲の先輩方に相談をしていたところ、福林(ふくばやし) (とおる)先生(当時 早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授/現 東京有明医療大学 保健医療学部 特任教授)にお声がけいただいたのです。

留学先では、ラース・エンゲブレッセン(Lars Engebretsen)先生の外来診療を見学させてもらったり手術の助手をしたりしながら、主に研究のお手伝いをしました。それまで日本では“けがした人をいかに治すか”というテーマを中心に臨床経験を積んでいましたが、留学先では“けがはどのようなメカニズムで起こるのか”あるいは“けがをいかに予防するか”といった新しい知見を得ることができ、大いに刺激を受けました。

最初は驚いたのですが、オスロでは皆、朝9時に勤務をスタートして午後3~4時くらいには仕事を終えます。その後は山や湖に行くのが定番で、夏季には白夜で夜9~10時まで明るいためゆっくりと夜の時間を楽しんでいました。家族と一緒に過ごしたオスロでの時間は、それまで日本で忙しく働いていた私にとって非常にありがたい時間でした。1年半の留学期間は、あっという間に過ぎていましたね。

ラース先生(写真右端)と手術室にて
ラース先生(写真右端)と手術室にて

目の前の患者さんが何に困っているのかを理解し寄り添う

スポーツが好きという思いからスポーツ整形外科医になり、現在は病院で患者さんを診察したり、プロスポーツ選手の試合に帯同してチームをサポートしたりしています。

病院での診察では、まず患者さんが困っていることをしっかりと理解し、寄り添うことを心がけています。そして何より重要なことは、正しく診断すること。正しく診断できなければ、適切な治療も叶いません。先入観を持たずにあらゆる可能性を知識として備え、適切に検査を行うことが、正しい診断と治療につながると考えています。また、スポーツ整形外科には中高生の患者さんも多くいらっしゃいます。「症状は?」と急に尋ねても自分の言葉で状態を伝えにくい場合もあるので、いつから・どこが・どのように痛いのかなど、なるべく具体的に質問するように努めています。

一方、チームドクターとして東芝のラグビー部に帯同する仕事でも、目の前の選手が何に困っていて、どうしたら治せるかを一番に考えるのは同じです。一流のアスリートたちは本当に努力されていますし、素晴らしい人格をお持ちの方ばかりで、頭の下がる思いです。試合は主に週末に行われるため、土日は返上ということが多いのですが、選手がけがをしたときに自分がその場ですぐに処置を行えたときには、大きなやりがいを感じますね。特にラグビーはコンタクトスポーツですから、私の経験上、毎回必ずといっていいほど切り傷は発生しますし、3〜4回に1回は骨折する選手がいます。そのようなときに適切に処置を行い、後遺症などを残さないよう治療するのは、チームドクターとしての大切な役割です。「武田先生に診てもらいたい」とか「治療のおかげでスポーツに復帰できた」という言葉を聞けたときには、本当に嬉しくなります。

東芝ラグビー部にて(右から2番目:武田秀樹先生)
東芝ラグビー部にて(右から2番目:武田秀樹先生)

2018年よりNTT東日本関東病院でスポーツ整形外科を担当しています。当院は整形外科の人員が充実しており、手や膝、足といったパーツごとに専門性を備えた医師が在籍しています。新型コロナウイルス感染症の影響によりスポーツをする機会が減り、その分、患者さんの数も減少傾向にありましたが、最近ようやく数が戻ってきました。現在はスポーツ整形外科医2名体制(2020年9月時点)ですが、今後はより多くの手術や診療を手がけ、スポーツ整形外科の組織を拡大したいと考えています。また、大学の医局から研修医が勉強に来る機会も多いため、丁寧に指導して“未来のスポーツ整形外科医”を育てたいです。

そして何より、病院にいらっしゃる患者さんの診療に尽力し、またスポーツドクターとしての役目を果たしながら“患者さんが困っていることを理解し、治す”という医師としての使命を全うしていく所存です。

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  • NTT東日本関東病院 スポーツ整形外科部長

    1998年よりスポーツ整形外科医師としてキャリアをはじめる。国内だけでなく、オスロスポーツトラウマリサーチセンターにおいても臨床を積む。2018年現在、NTT東日本...

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    武田 秀樹 先生の所属医療機関

    NTT東日本関東病院

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      • 循環器内科
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