DOCTOR’S
STORIES
スポーツ整形外科医として患者さんや選手のケアに尽力する武田 秀樹先生のストーリー
30年以上も前の話です。中学生の頃、大好きなバスケットボールに打ち込んでいるときになぜか思うように力が出せず、困っていました。運動をするだけで動悸や息切れがしたり、やたらと疲れや
病院に行き、いくつかの検査をした結果、鉄欠乏性貧血(いわゆる貧血)であったことが判明。ヘモグロビン*の値は6g/dlほど(通常12g/dl未満で貧血と判定される)と非常に低く、治療を要する状態でした。担当医の先生に「運動量が多く鉄分が不足しやすい状態であり、さらに育ち盛りの体が必要とする鉄分を十分に取れていない可能性がある」と教えてもらいました。運動を少しの間休んで栄養バランスのよい食事をするようにと指導を受け、私はそのとおりに生活しました。すると本当に体調がよくなり、部活に全力を注げるまでに回復したのです。「ああ、医者ってすごいな」と感動しました。このときから、自分もいつか人を元気にする仕事をしたい、と考えるようになりました。
*ヘモグロビン:赤血球に含まれる赤色素たんぱく質のこと。
高校でもバスケットボール部に在籍し、練習や試合に明け暮れました。顧問の先生がとても熱心で、それこそ365日練習に付き合ってくれるような方だったので、一時期は学校の先生に憧れたことも。しかし最終的には、かねてより心に抱いていた“医師になる”という夢を叶えるべく勉強に没頭し、金沢大学医学部に進学することができました。
当時は今のように初期研修でさまざまな診療科を経験できるわけではなく、在学中に自分の診療科を決める必要がありました。そこで、スポーツに関わることのできる診療科という視点で整形外科・婦人科・脳神経外科・循環器内科の4つに的を絞り、各診療科で活躍されている方の話を聞いたり、仕事の内容を調べたりしました。その中で、スポーツの現場ともっとも近いのは整形外科だと確信し、医学部を卒業後、東京大学の整形外科に入局することにしたのです。
東京大学 整形外科に入局すると決めたのは、
2012年からは東芝病院で増島先生と共に働くことができました。増島先生にはスポーツ整形外科医としての考え方や知識など、さまざまなことを学ばせていただき、心から感謝しています。
2010年にノルウェーの“オスロスポーツトラウマリサーチセンター(The Oslo Sports Trauma Research Center)”へ留学の機会を得ました。自身のキャリアパスで一度は海外に留学しておきたいと思い、周囲の先輩方に相談をしていたところ、
留学先では、ラース・エンゲブレッセン(Lars Engebretsen)先生の外来診療を見学させてもらったり手術の助手をしたりしながら、主に研究のお手伝いをしました。それまで日本では“けがした人をいかに治すか”というテーマを中心に臨床経験を積んでいましたが、留学先では“けがはどのようなメカニズムで起こるのか”あるいは“けがをいかに予防するか”といった新しい知見を得ることができ、大いに刺激を受けました。
最初は驚いたのですが、オスロでは皆、朝9時に勤務をスタートして午後3~4時くらいには仕事を終えます。その後は山や湖に行くのが定番で、夏季には白夜で夜9~10時まで明るいためゆっくりと夜の時間を楽しんでいました。家族と一緒に過ごしたオスロでの時間は、それまで日本で忙しく働いていた私にとって非常にありがたい時間でした。1年半の留学期間は、あっという間に過ぎていましたね。
スポーツが好きという思いからスポーツ整形外科医になり、現在は病院で患者さんを診察したり、プロスポーツ選手の試合に帯同してチームをサポートしたりしています。
病院での診察では、まず患者さんが困っていることをしっかりと理解し、寄り添うことを心がけています。そして何より重要なことは、正しく診断すること。正しく診断できなければ、適切な治療も叶いません。先入観を持たずにあらゆる可能性を知識として備え、適切に検査を行うことが、正しい診断と治療につながると考えています。また、スポーツ整形外科には中高生の患者さんも多くいらっしゃいます。「症状は?」と急に尋ねても自分の言葉で状態を伝えにくい場合もあるので、いつから・どこが・どのように痛いのかなど、なるべく具体的に質問するように努めています。
一方、チームドクターとして東芝のラグビー部に帯同する仕事でも、目の前の選手が何に困っていて、どうしたら治せるかを一番に考えるのは同じです。一流のアスリートたちは本当に努力されていますし、素晴らしい人格をお持ちの方ばかりで、頭の下がる思いです。試合は主に週末に行われるため、土日は返上ということが多いのですが、選手がけがをしたときに自分がその場ですぐに処置を行えたときには、大きなやりがいを感じますね。特にラグビーはコンタクトスポーツですから、私の経験上、毎回必ずといっていいほど切り傷は発生しますし、3〜4回に1回は骨折する選手がいます。そのようなときに適切に処置を行い、後遺症などを残さないよう治療するのは、チームドクターとしての大切な役割です。「武田先生に診てもらいたい」とか「治療のおかげでスポーツに復帰できた」という言葉を聞けたときには、本当に嬉しくなります。
2018年よりNTT東日本関東病院でスポーツ整形外科を担当しています。当院は整形外科の人員が充実しており、手や膝、足といったパーツごとに専門性を備えた医師が在籍しています。新型コロナウイルス感染症の影響によりスポーツをする機会が減り、その分、患者さんの数も減少傾向にありましたが、最近ようやく数が戻ってきました。現在はスポーツ整形外科医2名体制(2020年9月時点)ですが、今後はより多くの手術や診療を手がけ、スポーツ整形外科の組織を拡大したいと考えています。また、大学の医局から研修医が勉強に来る機会も多いため、丁寧に指導して“未来のスポーツ整形外科医”を育てたいです。
そして何より、病院にいらっしゃる患者さんの診療に尽力し、またスポーツドクターとしての役目を果たしながら“患者さんが困っていることを理解し、治す”という医師としての使命を全うしていく所存です。
この記事を見て受診される場合、
是非メディカルノートを見たとお伝えください!
NTT東日本関東病院
NTT東日本関東病院 院長、ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長
大江 隆史 先生
NTT東日本関東病院 消化管内科・内視鏡部 部長
大圃 研 先生
NTT東日本関東病院 乳腺外科部長・がん相談支援センター長・遺伝相談室長
沢田 晃暢 先生
NTT東日本関東病院 整形外科・スポーツ整形外科・人工関節センター
高木 健太郎 先生
NTT東日本関東病院 泌尿器科 部長 兼 前立腺センター長
中村 真樹 先生
NTT東日本関東病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長
中尾 一成 先生
NTT東日本関東病院 肝胆膵内科 医長
藤田 祐司 先生
NTT東日本関東病院 脳神経外科 部長/脳卒中センター長
井上 智弘 先生
NTT東日本関東病院 ロボット手術センター センター長
志賀 淑之 先生
NTT東日本関東病院 血液内科
臼杵 憲祐 先生
NTT東日本関東病院 脳血管内科 部長、脳神経内科 部長
大久保 誠二 先生
NTT東日本関東病院 ガンマナイフセンター長
赤羽 敦也 先生
NTT東日本関東病院 緩和ケア科部長
鈴木 正寛 先生
NTT東日本関東病院 肝胆膵内科部長
寺谷 卓馬 先生
NTT東日本関東病院 副院長・予防医学センター長
郡司 俊秋 先生
NTT東日本関東病院 形成外科 部長
伊藤 奈央 先生
NTT東日本関東病院 呼吸器外科 部長 呼吸器センター長
松本 順 先生
NTT東日本関東病院 心臓血管外科 部長
華山 直二 先生
NTT東日本関東病院 整形外科・スポーツ整形外科・人工関節センター
柴山 一洋 先生
NTT東日本関東病院 整形外科 医長/人工関節センター長
大嶋 浩文 先生
NTT東日本関東病院 外科 医長
樅山 将士 先生
NTT東日本関東病院 整形外科 部長・脊椎脊髄病センター長
山田 高嗣 先生
NTT東日本関東病院 外科 医長
田中 求 先生
NTT東日本関東病院 消化管内科 医長
港 洋平 先生
NTT東日本関東病院 循環器内科 部長
安東 治郎 先生
NTT東日本関東病院 産婦人科 部長
塚﨑 雄大 先生
北青山Dクリニック 脳神経外科
泉 雅文 先生
NTT東日本関東病院
高見澤 重賢 先生
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。