院長インタビュー

リニューアルにより在宅復帰を支援する機能を充実させた多摩川病院

リニューアルにより在宅復帰を支援する機能を充実させた多摩川病院
矢野 諭 先生

医療法人社団 大和会 多摩川病院 理事長

矢野 諭 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年08月30日です。

医療法人 大和会 多摩川病院(以下、多摩川病院)は京王線布田駅から徒歩5分のところに位置します。新宿駅からのアクセスがよいことで、住宅地として早くから開けたこともあり、東京のなかでは高齢化が進んでいる地域でもあります。

同院は1929年(昭和4年)に開院し、地域のかかりつけ病院として定着しました。2015年には地域の医療ニーズの変化に応えるべく、新設オープンし、在宅医療を促進・支援する病棟機能を大幅に強化しました。

拡充した機能のひとつは、急性期病院での治療を終えた患者さんを受け入れ、積極的な治療とリハビリテーションを行い、短期間で在宅復帰を可能にするものです。もうひとつは、自宅や介護施設などで療養中に病気になったり、持病が悪化してしまったりした方を受け入れて回復を図り、在宅医療をサポートする機能です。

リニューアルにともない、一新した病院の特徴について同院の矢野 諭(やの さとし)理事長にお話を伺いました。

外観
多摩川病院 外観

当院は、全国で26病院と70か所以上の介護施設などを運営している平成医療福祉グループの一員です。同グループの病院は一部、急性期医療を行う病院や精神科病院もありますが、ほとんどは回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、医療療養病棟などで構成されている慢性期病院です。的確な治療と強力なリハビリテーションにより在宅復帰をサポートしています。

同グループの理念は「絶対に見捨てない」医療や福祉であり、グループ全体の取り組みとして「絶対に見捨てないプロジェクト」を推進しています。

このプロジェクトは「目的を持った積極的な離床」「多剤内服にはさせません」「みんなに嬉しい食事を」「口から食べるを応援します」「身体抑制は禁止します」「自分でトイレを応援します」の6つの方針から成り立っています。全スタッフがしっかりと意識するだけでなく、患者さんにもこの方針を知っていただくために、院内にプロジェクトポスターを貼っています。

当院は2015年のリニューアルオープンに際し、在宅医療を促進・支援する3つの病棟機能の強化を図りました。

脳卒中骨折などの急性期治療後を終えた患者さんを受け入れ、専門的なリハビリテーションを行います。在宅復帰が可能な状態に患者さんを回復させることに特化した病棟です。

自宅や施設で在宅療養中の方は、基礎的な病気(持病)や合併症を持っていて急変悪化することがあります。また、新たな病気に罹患したり、転倒などの怪我をしたりして、入院医療が必要になることもあります。このような多様な病態にある患者さんを緊急で受け入れて治療し、状態を安定化させたうえで、リハビリテ―ションを行い、2か月以内に在宅復帰を目指す病棟です。

急性期病院での治療は終えたものの、数か月にわたる継続的な医学的管理が必要な患者さんや、終末期の患者さんなど、幅広い病態の患者さんに対応可能な病棟です。

超高齢社会の到来にともない、複数の慢性疾患をかかえるご高齢の患者さんが急増しており、これまでの大病院での診療や入院に依存する医療から脱却する必要があります。そのためには、地域のなかで「ときどき入院、ほぼ在宅」という「地域包括ケアシステムの一環としての医療」へのシフト転換が必要です。これは、病気にかかったり、持病が悪化したりしたときに入院し、早期に退院可能な状態にまで改善させ、住み慣れた地域で在宅医療を受ける生活を送っていただくための医療です。

このシステムを支えるべく、良質な慢性期医療を提供するのが我々の責務です。

当院では、患者さんに関わる医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・介護職員・社会福祉士・事務員などのすべてのスタッフが、それぞれの専門性を生かして治療を支えています。スタッフそれぞれの専門性を尊重し、意見を交換することで、患者さんにとって必要な医療や、患者さんが望んでいる医療を実践しやすくなります。また全国の同グループ病院のスタッフは、それぞれの専門職ごとにチーム分けされています。病院内での意見交換にとどまらず、他施設の専門職とも意見交換ができ、チーム医療の精度を高めています。

当院が所属している平成医療福祉グループは30余年に渡り高齢者医療に携わっており、専門的な治療を実施してきました。ご高齢の患者さんの身体機能は若い方たちとは違うため、同様の治療法では改善が難しいことがあります。標準療法を実施するための治療指針(ガイドライン)が少ない高齢者医療に関して、当グループは独自のノウハウを蓄積しております。高齢者医療のスペシャリストとして、地域医療に貢献できるように努めております。

リハビリ室
リハビリテーション室

ご高齢の患者さんは急性期医療を終えて、治療対象の疾患や怪我は治癒・改善したものの、日常生活をするための動作(ADL)が、病前と比較して著しく低下していることがあります。在宅復帰をするには、漫然とリハビリをするのではなく、在宅復帰後の生活を視野に入れ、目的のはっきりしたリハビリが必要です。

当院では、歩行など基本動作の回復を担当する理学療法士(PT)や、家事や手作業など細やかな動作の回復を担当する作業療法士(OT)、食物の飲み込みや発声の回復を担当する言語聴覚士(ST)などの複数のスタッフが、患者さんに応じたプログラムを組み、計画的に機能回復を図ります。

急性期病院での医療を終えた患者さんは、摂食・嚥下機能が低下し、食事ができないために在宅復帰が難しいことがよくあります。食事ができないと病気の再発やほかの病気の発病リスクが高まります。そして何より食べる喜びもなくなってしまいます。そのため、当院では口から食事ができるよう適切なリハビリを提供します。

着替えや排泄、歩行や階段の登り降りなど、日常生活のなかで介助が必要となっている動作に焦点を当て、回復に努めます。当院にはADL室があり、掃除機やアイロンがけなど、自宅での動作を想定したリバビリを提供しています。

自宅や施設に戻ってからの生活上の動作で、新たな問題の発生や、不安が生まれることがあります。そのようなときに退院後でもリハビリを続けられるよう、外来でのリハビリ、デイケア・デイサービス時のリハビリ、訪問リハビリを提供しています。新たな環境に戸惑うことなく、顔なじみのスタッフによるリハビリを再開できます。

院長

超高齢社会が到来した日本においては、これまでの病気を治すことに重きを置いた医療から、個人のQOL(生活の質・人生の質・生命の質)をできる限り維持・向上するための医療への転換が必要です。

当院では健診センターを併設しており出張健診と人間ドックをあわせて、年間約2万5千件の実績があります。今後も入院医療を中心に、予防医学から在宅医療、福祉サービスまで、幅広く地域住民のみなさんに貢献してまいります。

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