地域に医療の火をともし続ける庄原赤十字病院

庄原赤十字病院は、広島県庄原市で唯一の総合病院です。1925年に前身病院が開院、1943年に赤十字病院へと移管しました。以来、赤十字全体の基本原則である人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性に則り、時代と地域の医療ニーズを満たすため尽力し続けてきました。

市内唯一の総合病院として、急性期から慢性期まで対応可能な医療体制を有するほか、へき地医療や救護活動にも積極的に取り組んでいます。

病院長の中島浩一郎先生に、病院の診療体制とその特徴、医療設備や医療サービス、研修教育体制などについてお話を伺いました。

庄原赤十字病院の診療体制

なんでも受ける総合診療体制の整備

庄原赤十字病院は市内で唯一の総合病院として、地域の急性期医療と高度医療を支える最後の砦として活躍しています。一般的な診療科目ほぼすべてを有していることから、総合力を重視した診療を展開しています。

患者さんの病気や進行状態などによって必要な対応も変わりますが、当院では原則として、一度担当した患者さんは最後まで同じ医師が担当しています。同じ医師がすべての診療を担当して、患者さんに切れ目ない医療を提供することで、「ずっと同じ先生に診てもらってる」という安心感にもつながっていると感じています。

内科疾患全般に対する診療体制の構築

当院では、内科、消化器内科、糖尿病内科、腎臓内科を内科に統合して、内科疾患全般に対する診療を行っています。当院を受診される患者さんのなかには、山間部などのへき地にお住まいの方も多いです。当院を信頼して受診された患者さんに応えるため、知識や技術の習得に日々励んでいます。

特に、消化管や肝臓・胆のう・膵臓に対する診療ニーズが高いため、インターフェロン療法、各種経カテーテル治療、内視鏡治療などを実施しています。

糖尿病や脂質異常症など生活習慣病と診断される方が増加傾向にあるため、栄養課と協同で栄養指導や食事療法など生活指導に取り組んでいます。

庄原赤十字病院の医療設備やサービス

救命救急と高度医療

二次救急指定病院である当院は病院群輪番制度に参加しており、地域の救急医療を支えています。小児救急医療支援事業にも参加しているため、子どもの救急も受け入れています。子どもの救急では、他診療科の医師にも協力を仰いで診療体制を整備しています。

近隣に総合病院がない地域的な背景や、日頃から寄せられている信頼の厚さなどから、「困ったときには、まず日赤で診察を受ける」という傾向があります。患者さんのため、常に新しい知識と技術を身につける、必要に応じて他院と連携する、関連病院の先生を呼んで手術するなど、さまざまな取り組みをしています。

回復期と慢性期

急性期の治療を終えると、退院に向けた準備がはじまります。リハビリテーションによるADL（日常生活動作）改善、メディカルソーシャルワーカーによる退院調整などを行い、それらの状況について地域のサービス担当者と共有しています。

長期的な療養が必要な方に対しては、療養病棟をご案内しています。ここでは患者さんの状態に応じた看護や医学的管理により、自立した日常生活が送れるよう支援しています。

訪問看護

地域の医療機関や介護施設との連携に重点をおき、訪問看護ステーションを開設・運営しています。自宅療養を選択された患者さんが療養生活を維持できるよう、そしてご家族にかかる負担をなるべく減らせるような支援をしています。

移動診療

広島県は無医地区が多いです。県内における医療格差を解消するため、へき地診療にも力を入れており、その一環として移動診療車での巡回診療を週2回行っています。

移動診療車には、レントゲンと現像機、エコーとモニター、血液分析装置を搭載しているため、主要な検査をひととおり実施可能です。また、移動診療車が出動するときは薬剤を搭載するほか、薬剤師をはじめとする多職種のスタッフも同乗するため、病院と同じように薬を処方することもできます。

「病院に来てもらう」だけでなく「病院が行く」システムは、今後有効な診療ツールとなるのではと考えています。

災害医療

赤十字病院として、救護活動を含め災害対応にも力を入れています。現地での医療活動、被災者への心身ケアなどをつうじた健康管理をサポートするため、日頃から職員の訓練、機能の整備、物資の備蓄などをおこなっています。

地域医療連携推進法人への参画

近隣にある急性期医療を担っている病院が中心となり、地域医療連携推進法人を開設しました。医師派遣や合同の研究会・勉強会開催など、所在地も設立背景も異なる病院同士が連携を取り合い一体化することで、地域完結型の医療の実現を目指しています。

庄原赤十字病院の研修教育体制

「南斗六星研修ネットひろしま」

県内中山間地の主要医療機関による合同研修プログラム「南斗六星研修ネットひろしま」に参加しています。庄原市内の急性期医療から慢性期医療までを担う地域の中核病院なため、あらゆる病気に対する診療能力を身につけやすい環境です。

救急外来やへき地診療所での診療なども経験することができるため、医学生や近隣もしくは関連施設の研修医を受け入れています。研修を終える頃には、自分の成長を実感する人も多いです。地域や時代のニーズを考え、今後は総合診療ができる専攻医の育成も検討しています。

医学生や研修医へのメッセージ

何事にもじっくりと腰を据えて取り組んで、毎日の経験から知識・技術を身につけてください。地味なことの繰り返しではありますが、確実に医師としての成長につながります。

また病気のみでなく、患者さんその人にもしっかり向き合える医師になってください。

中島浩一郎先生からのメッセージ

地域のみなさんへ

庄原赤十字病院では、地域のみなさんが抱える医療面の問題を解消すべく常に全力で取り組み続けてきました。今後も、地域に必要な機能を備えた、地域のニーズに応えられる小回りのきく病院であり続けたいと考えています。

体や病気に対する不安、療養生活に対する疑問などがあれば、いつでも当院にご相談ください。

職員のみなさんへ

夜間に救急搬送されてきたある患者さんが「搬送されている最中は不安でいっぱいだったけど、赤十字の看板を見た途端ものすごく安心した。あの瞬間の私にとって、赤十字の存在は暗闇のなかに浮かび上がる灯（ともしび）だった」と、おっしゃっていました。

当院は赤十字病院であると同時に、市内唯一の総合病院でもあります。地域の命を守る灯であり続けるため、日々の業務に取り組んでください。