連載“そんなとき”の漢方

花粉症に漢方薬という選択――お勧めできるのはどんな人? その効果は?

公開日

2026年01月30日

更新日

2026年01月30日

更新履歴
閉じる

2026年01月30日

掲載しました。
842bc79052

花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)は国民の4割以上がかかっている“国民病”(鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版)とされ、地域によってはスギ花粉が飛散を始める1月ごろから、長い人だとヒノキ花粉の飛散が収まる6月上旬ごろまで、止まらないくしゃみや鼻水、鼻づまりなどに悩まされます。多くの人が医療機関で処方されたりドラッグストアで購入したりする西洋薬で症状を抑えていると思われます。あまり耳にしないかもしれませんが、実は漢方薬にも花粉症に効果が期待できるものがあります。漢方治療にも詳しいなのはな耳鼻咽喉科(じびいんこうか)(水戸市) 院長 境 修平(さかい しゅうへい) 先生に、花粉症治療で漢方薬を使うとよいケースや期待できる効果、使用する際の注意点などについてお聞きしました。

境 修平 先生

西洋薬に追加で漢方薬も

花粉症は基本的に、西洋薬の第2世代抗ヒスタミン薬に加えてロイコトリエン拮抗薬やステロイド点鼻薬を組み合わせる処方で治療しています。花粉症などのアレルギー性鼻炎は、発症のメカニズム*を基にした明確なターゲットが分かっており、それに直接作用する西洋薬が、漢方薬の1歩も2歩も先を行っていると思っています。

それでも、花粉症に対して漢方薬を使うことをお勧めするのは、第一に妊娠中の女性です。日本で承認されている抗ヒスタミン薬は全て催奇形性**の報告はないとされ、産婦人科の先生には、一部の第2世代抗ヒスタミン薬は飲んでもよいのではないかとおっしゃる方もいます。しかし、添付文書を見ると「妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「妊娠している可能性のある女性には、投与しないことが望ましい」などと書かれています。特に胎児の器官形成期である妊娠初期の治療希望者には、積極的に漢方薬を出すようにしています。

漢方薬を使うケースで一番多いのは、第2世代抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイド点鼻薬を使い、マスクや眼鏡で花粉をブロックしているけれども症状が緩和されない、鼻がつまって眠れないといった重症の患者さんです。こうした患者さんには西洋薬に追加して漢方薬を処方しています。

また、第2世代抗ヒスタミン薬には眠くなりにくいものもありますが、そのような薬でも眠くなる方がいます。そうした方にも漢方薬は有効です。

ほかに、レアケースですが「漢方が大好きで漢方薬しかいらない」という患者さんもいらっしゃいます。

漢方薬のメリットとしては「即効性」があります。経験上、服用後早い人だと30分ほどで効果が出てくる場合もあり、早く効いてほしいときには漢方薬が有効だと考えます。西洋薬は花粉が飛び始める前からの服用をお勧めしていますが、漢方薬は症状が出始めてから使用すれば大丈夫です。

花粉症の西洋薬は1日1回または2回の服用、1回あたり1~2錠で1日効果が期待できます。一方漢方薬は粉薬を1日3回というものが多く、1日に多量の錠剤を飲まなければならないものもあります。花粉症では普段ほとんど薬を飲まないような若い世代も含めて受診し、服薬に慣れていない方が多くいらっしゃいます。そのため、服用回数や量などが多い漢方薬では決められたタイミングで決められた量を飲み続けてもらいにくいというデメリットがあります。

*花粉症発症のメカニズム:ヒトの体は、病原体などの「異物(抗原)」が入ってくると、免疫のはたらきによって排除しようとする。免疫システムが花粉を抗原と認識するようになると、排除するためにIgEという抗体が産生され、免疫細胞の一種「マスト細胞」と結合。そこに花粉が“付着”すると炎症を引き起こす化学物質であるヒスタミンやロイコトリエンなどが放出され、アレルギー反応が起こる。抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬は、ヒスタミンやロイコトリエンの鼻や目の粘膜細胞への作用を抑えることで症状を改善する。

図:Pixta

**催奇形性:妊娠中に服用した薬などの物質によって胎児に形態的異常が生じるリスク。

「証」により変わる処方

漢方には「証(患者さんの体質や体力などの状態の個人差)」という考え方があります。私は「耳鼻科咽喉医は鼻の粘膜の所見で証が取れる」と提唱しています。粘膜が青白くなっている場合は「寒証」で、その場合は小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が使いやすく、さらに冷えが強そうな方には麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を処方します。この2つは鼻水・くしゃみ型の花粉症に効果が期待できる漢方薬です。逆に粘膜が赤くなる鼻づまりが強そうな方には越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を使うといったように、鼻の粘膜の状態を見ながら漢方薬を使い分けるようにしています。これは、漢方薬単独の場合も、西洋薬と合わせて使う場合も同じです。

2、3年前に、「花粉症で、耳鼻科の治療を全部やったけれど鼻づまりが改善しない」と、県内の数十キロ離れた場所に住む患者さんが、来院したことがあります。レーザー治療(鼻の粘膜を焼灼しょうしゃく)する手術)をお勧めしたのですが「レーザーはやりたくない。漢方薬で治療してほしい」とおっしゃいます。手術をしなければ治らないほど状態が悪かったのですが、そのときは越婢加朮湯を処方しました。この薬は熱を冷ますとともにむくみを取る効果が期待できるので、鼻づまりがひどい方にはよく処方します。

この患者さんにはよく合ったようで、2週間後の再診の際には症状を抑え込むことができていました。2か月ほど通院され、鼻づまりから解放された生活が快適だったからか、最終的にはレーザー治療を受けられました。

近年、花粉症のお子さんが増えているというデータがあり、実感として重症の子どもの患者さんも増えていると感じています。寝る前に小青竜湯を飲んでもらうと「楽になった」と言われます。

漢方薬の注意点と受診先の見つけ方

漢方薬には副作用がないと思っている方がとても多いと感じていますが、患者さんには「そんなことはない」と注意を促しています。特に花粉症の治療に使われる漢方薬は、主成分として生薬の麻黄(マオウ)を含むものが多くなっています。麻黄は薬効成分として中枢興奮作用があるエフェドリンを含みますので、高血圧をコントロールしきれていない方や虚血性心疾患の既往がある方などは、花粉症で漢方薬を服用する際に副作用に注意する必要があります。

耳鼻咽喉科(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)と漢方(日本東洋医学会)両方の専門医資格をもつ耳鼻咽喉科医は限られるため、花粉症を漢方薬で治療したいと思ったときに「専門医」という観点から受診先を探すのは難しいでしょう。

治療に漢方を取り入れている医師は、私も含めてこだわりのある人が多いと感じていますので、自院のウェブサイトでアピールしている可能性が高いと思います。花粉症の治療に漢方薬を使ってみたい場合は、そうしたアピールをしている医師を探してみるとよいでしょう。
 

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。