歯の黄ばみ:医師が考える原因と受診の目安|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
ヒトの歯冠(歯茎から顔を出している歯の部位)は、神経が存在する歯髄を象牙質が取り囲み、さらにその表層をエナメル質が覆った構造をしています。エナメル質は人体の中でもっとも硬い組織であり、白色透明で光沢があります。健常な歯の色が白く見えるのは、このエナメル質の色と光沢のためです。
しかし、歯の色はさまざまな要因によって変色することがあり、特に黄ばみは多くの人が悩まされる症状のひとつです。
これらの症状がある場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
歯の黄ばみは日常生活上の習慣が原因になることが多々あります。原因となる主な生活習慣とそれぞれの対処法は以下の通りです。
タバコなどの嗜好品、コーヒーやカレーなどの飲食物などに含まれる色素がエナメル質の表面に沈着することで歯の黄ばみを引き起こすことがあります。
着色を生じやすい嗜好品や飲食物は控えめにし、毎日丁寧なブラッシングをするのはもちろんのこと、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けるようにしましょう。
過度な力を入れたり、歯磨き粉を多用したりするような歯磨きは、エナメル質を徐々に摩耗させます。その結果、乳白色の象牙質が透けて見えやすくなり、歯の黄ばみを引き起こすことがあります。
エナメル質を保護するよう、過度な力は入れずに丁寧に優しく磨き上げ、歯磨き粉はパッケージに記載された適量を守るようにしましょう。
口の中はさまざまな雑菌が生息しており、食べカスなどが豊富に存在するため不衛生になりやすい部位です。口腔内が不衛生な状態が続くと、虫歯を引き起こして歯の黄ばみの原因となることがあります。
食後は丁寧に歯を磨いて、その都度食べカスなどの汚れを除去し、定期的に歯科検診を受けて歯垢や歯石の除去などをしてもらいましょう。
歯の黄ばみの原因となる脱灰は、菓子などに含まれる糖分が原因で引き起こされる現象です。このため、甘い物を長時間にわたって口にしていると脱灰する時間が長くなり、歯の黄ばみが目立ってしまうことがあります。
糖分が含まれた甘い物を完全にやめる必要はありませんが、決まった時間に限定して摂ったり、量を減らしたりする、甘いものを食べた後に歯磨きをするなどの対策を行いましょう。
日常生活上の対処法を講じても歯の黄ばみが改善されない場合は、思わぬ病気が潜んでいるかもしれません。軽く考えずに、それぞれの症状に合わせた診療科を受診しましょう。
歯の黄ばみはさまざまな原因で引き起こされますが、中には以下のような病気が原因の場合もあるため注意が必要です。
歯の表面は光沢のあるエナメル質で覆われており、滑らかな構造になっています。しかし、虫歯の初期段階では、歯に蓄えられたカルシウムやリン酸などの成分が溶け出す脱灰と呼ばれる現象が引き起こされます。
脱灰を生じた歯の表面は滑らかさを失って細かいでこぼこが生じ、エナメル質の光沢が低下して歯が黄色味を帯びたように見えることがあります。この段階では通常歯の痛みを生じないため、自覚症状が現れにくいです。
虫歯が進行し、神経や血管が走行する歯髄にまで炎症が波及する病気です。神経や血管がダメージを受けることで、歯に栄養が行き渡らなくなって黄色~黒色の変色を示すことがあります。非常に強い歯の痛みや歯茎の腫れなどを引き起こしますが、炎症によって神経が正常にはたらかなくなると痛みが感じられなくなることが特徴です。
抗菌薬の一種であるテトラサイクリンは、小児期に服用すると副作用として歯の黄ばみが引き起こされることがあります。加齢に伴い濃い黄色や褐色に変化します。変色は一部の歯だけでなく全体的に生じますが、痛みなどの症状は伴いません。
歯の黄ばみは生活習慣が関わっていることが多いですが、中には思わぬ病気が潜んでいる可能性があるため、見過ごすことのできない症状でもあります。
特に、突然一部の歯だけが黄ばんで見えるようになった場合や、歯の痛みや歯茎の腫れを伴うなどの場合には注意が必要です。
受診に適した診療科は歯科や口腔外科ですが、抗菌薬の長期服用などが思い当たる場合は、薬の処方を受けた病院で相談するのもよいでしょう。受診の際には、いつから黄ばみが目立つようになったのか、黄ばみ以外の随伴症状、服用中の薬などを詳しく医師に説明するようにしましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。