前歯が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
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メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
前歯は、歯列の中央部、ちょうど口を開いたときに見える上下6本ずつ生えている歯のことです。奥歯と比べて扁平で薄く、硬いものの食べすぎや外傷などによってダメージを受けやすい歯でもあります
前歯にはさまざまな症状が起こり得ますが、中でも前歯の痛みは発生頻度が高い症状であり、原因は多岐にわたります。
これらの症状が見られた場合、原因としてどのようなものが考えられるでしょうか。
前歯の痛みはさまざまな原因によって引き起こされますが、以下のような病気が原因のこともありますので注意が必要です。
前歯の痛みは前歯や歯茎に生じる病気によるものがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
虫歯とは、歯の表面を覆うエナメル質が溶け出すことで、深層にある神経を刺激して痛みや腫れを引き起こす病気です。炎症が歯髄(歯の内部に走行する神経)にまで達して神経が死滅すると、痛みがかえって軽減することがありますが、放置すると抜歯が必要になるケースも少なくありません。
前歯も虫歯になることあり、痛みだけでなく、歯の隙間や裏側のエナメル質が溶解して歯が菲薄化し、咀嚼時の些細な刺激で歯が折れたり、歯の変色が見られたりするのが特徴です。
転倒などによる外傷や固すぎるものを噛んだ衝撃などで前歯の一部に亀裂が入ったり、割れたりする病気です。エナメル質の下層にある象牙質の一部がむき出しになった状態となるため、些細な刺激で神経を刺激して痛みを生じることがあります。
放置すると割れた部位からエナメル質の亀裂が広がり、非常に強い痛みを生じるようになることもあります。
歯と歯茎の隙間である歯周ポケットに細菌感染が生じて炎症を引き起こす病気です。奥歯の歯茎に生じることが多いですが、前歯の歯茎に発症することもあり、歯茎の腫れや出血を生じ、炎症が悪化すると膿が出てくることもあります。また、歯茎に痛みを伴うため、前歯に放散して前歯の痛みと感知されることも少なくありません。
口腔内の粘膜に表面が白い偽膜で覆われた潰瘍を形成する病気です。虫歯や入れ歯などによる慢性的な粘膜への刺激、外傷、喫煙、感染症など原因は多岐に渡りますが、いずれも強い痛みを引き起こし、悪化すると偽膜が破れて出血を引き起こすこともあります。
歯茎にも発症することがあり、歯茎の痛みが前歯に放散して前歯の痛みと感知されることがあります。
前歯の痛みは口の中以外の部位に生じる病気によって引き起こされることがあります。原因となる主な病気は以下の通りです。
痛みを伴う水疱を形成するウイルス感染症である口唇ヘルペスや口の周りに発症した帯状疱疹の痛みが前歯の歯茎などに放散して、前歯の痛みを感じることがあります。ピリピリとした痛みが特徴であり、いずれも再発を繰り返すのが特徴です。
ヒトの顔面には、複雑な形状の頭蓋骨によって形成される空間である副鼻腔が存在します。その副鼻腔に細菌やウイルス感染が生じて炎症を引き起こすのが副鼻腔炎です。鼻詰まりやドロドロとした鼻水などの症状が現れ、悪化すると顔面の痛みや頭痛を生じることがあります。特に、両側の頬の部位にある上顎洞に発症すると、その近くに存在する前歯の歯茎や前歯に痛みが放散することがあります。
前歯の痛みは、軽度な場合であれば病院を受診せずにやり過ごしている人も多いでしょう。しかし、中には恐ろしい病気が潜んでいることや、適切な治療が遅れることで症状が悪化してしまうこともあります。痛みを感じた場合は放置せずに病院を受診するようにしましょう。
特に、歯の割れや脆弱化などの変化が見られる場合、歯茎の一部が腫れている場合、口の中以外の部位の症状がある場合はなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
受診に適した診療科は口腔外科や一般歯科ですが、口の中以外にも症状がある場合は、皮膚科や耳鼻科などそれぞれの症状に合わせた診療科の受診が必要です。どこを受診すればよいか迷った場合は、かかりつけの内科などで相談するのも一つの方法です。
受診の際には、いつから前歯が痛くなったのか、外傷の有無、随伴する症状、現在罹患している病気などを詳しく医師に説明するようにしましょう。
前歯の痛みは日常生活上の好ましくない習慣が原因で引き起こされることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下の通りです。
前歯で硬いものを噛む機会が多いと、歯に過剰なダメージが加わって破折を引き起こすことがあります。
健康のためにも適度な硬さの食べ物を噛むことは非常に重要です。しかし、歯に痛みが走るほど硬いものは控えるようにしましょう。
口の中は細菌が繁殖しやすく、不衛生になりやすい部位です。口の中が不衛生な状態が続くと、歯周病や虫歯を発症しやすくなります。
毎食ごとの丁寧なブラッシングはもちろんのこと、ブラッシングでは取り切れない歯間の汚れはデンタルフロスなどを使用して除去するようにしましょう。また、溜まった歯垢は半年に一度ほどのペースで歯科医院でのクリーニングを行うことも大切です。
力を込めてブラッシングしたり、研磨剤入りの歯磨き粉を大量に使用することで、歯茎が後退したりエナメル質の菲薄化を引き起こすことがあります。その結果、些細な刺激で神経が痛むことがあります。
歯ブラシは、歯茎に負荷がかからないような硬さのものを選び、丁寧に軽く擦る程度の力を加えるようにしましょう。また、研磨剤入りの歯磨き粉は表示されている適量を守ることも大切です。
日常生活上の習慣を改善しても前歯の痛みが改善しない場合には、思わぬ病気が潜んでいる可能性もあります。軽く考えずに、それぞれの症状に合わせた診療科を早めに受診するようにしましょう。