歯茎が白い:医師が考える原因と対処法|症状辞典
メディカルノート編集部 [医師監修]【監修】
歯茎は顎骨と歯を固定させるため、歯を包み込むように存在する口腔粘膜の一種です。健康的な歯茎は淡紅色であり、適度な弾力があります。口の中は、飲食物のカスや雑菌が溜まりやすいため不潔になることも多く、歯茎は発声や咀嚼などによって物理的な刺激が加わる機会が多いため、さまざまなトラブルを起こしやすい部位といえます。
中でも、色調の変化は歯茎の状態を目で把握できるよい指標となります。
このような症状が見られる場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。
歯茎は日常生活上の習慣が原因で白くなることがあります。主な原因と対処法は以下の通りです。
歯茎は血流が豊富な部位ですが、冷えや喫煙などの影響で血管が収縮すると血行不良を生じて血色が悪くなり、白っぽく見えることがあります。
歯茎の血色を改善するには体の冷えを防いだり、冷たい飲食物を控えたりするなどの対策で効果が期待できます。また、喫煙している人は禁煙を目指すとよいでしょう。
口腔内はさまざまな雑菌が潜んでおり、食べカスなどの汚れが溜まりやすいため、不衛生になりがちです。特に、歯と歯茎の隙間の歯周ポケットには歯垢が溜まりやすく、多くの歯垢が溜まると歯茎の縁に白い塊が見えるようになります。
口腔内の衛生を維持するには、毎食後や就寝前のブラッシングはもちろんのこと、歯間ブラシなどを用いてブラッシングでは取りきれない汚れを除去するようにしましょう。また、定期的に歯科検診を受けて固く溜まった歯垢のクリーニングをすることもよいでしょう。
日常生活上の習慣を改善しても症状がよくならないときや悪化するとき、再発を繰り返すときには思わぬ病気が潜んでいることがあります。見過ごさず早めに、それぞれの症状に適した診療科を受診して治療を受けるようにしましょう。
健康的な歯茎は、淡い赤色~ピンク味を帯びた色をしています。しかし、以下のような病気によって歯茎に白い病変(病気による変化が起きている箇所)ができたり、歯茎が白っぽくなったりすることがあります。
以下のような病気では、歯茎の一部に白い病変ができることがあります。
口腔内の不衛生さ、ストレス、栄養不足、虫歯や入れ歯などの物理的な刺激によって口腔粘膜に炎症が生じる病気です。口内炎のなかでも特にアフタ性口内炎と呼ばれるものは、表面が白い偽膜に覆われ、痛みを伴うことが特徴です。歯茎にもアフタ性口内炎ができることがあり、咀嚼時などに痛みが強くなることがあります。
通常は3~7日ほどで自然とよくなりますが、再発を繰り返すこともあります。
虫歯が進行して歯根部に膿瘍(膿の塊)が形成され、歯茎の孔から膿が流出する病気です。
歯茎の病変部は白い粘膜の膨らみのように見えますが、孔が開いており膿の流出路となっています。患部の強い痛みや熱感などを伴います。
咬合不全や虫歯、サイズの合っていない入れ歯などによる物理的な刺激が慢性的に加わることで、粘膜が肥厚して白い膨らみのある病変を形成する病気です。
喫煙などが原因になるとも考えられており、がんに進行することもあります。
歯茎にできるがんです。慢性的な物理的刺激、喫煙などが発症や進行に関連すると考えられています。発症初期には口内炎や歯周病と区別がつかないこともあります。
口内炎であれば基本的には1週間、遅くとも2週間程度で自然に治癒します。しかし、がんは自然に治るどころか硬いしこりが触れてくる、しこりや潰瘍が大きくなるなど“大きくなりこそすれ、小さくなることがない”のが最大の特徴です。進行すると痛みや出血を伴うようになります。また、リンパ節に転移すると頚部にコリコリとしたしこりを触れることもあります。
真菌の一種であるカンジダが口腔内で増殖し、白いカッテージチーズのような塊を形成する病気です。カンジダはヒトの体内の常在菌であり、通常であれば病変を形成することはありません。しかし、体調不良などによって一時的に免疫力が下がった状態になると発症することがあります。
口腔カンジダは舌や頬粘膜、歯茎に白い塊を形成します。通常はかゆみや痛みを伴いませんが、口腔内の違和感が生じ、無理に剥がそうとすると表皮剥離や出血を引き起こすことがあります。
ヘルペスや手足口病、ヘルパンギーナなどのウイルス感染症は口腔内に白っぽい水疱を形成します。水疱は歯茎にもできることがあり、強い痛みや灼熱感を生じて、発熱や倦怠感などの全身症状を伴うものもあります。
以下のような病気によって、歯茎全体が白っぽい色調に変化することがあります。
血液中のヘモグロビンが減少する病気です。貧血が進行すると、さまざまな部位の粘膜の色が白っぽくなり、歯茎も全体的に血色を失って白みを帯びた色調になります。
ほかにも動悸や息切れ、めまいなどの全身症状を伴う場合が多いですが、慢性的に貧血の状態が続いている場合には自覚症状がほとんどないこともあります。
歯茎の粘膜は、タンパク質や種々のビタミンなどから形成されています。このため、十分な栄養素がない状態が続くと粘膜が荒れて血行が悪くなり、歯茎が白っぽく見えることがあります。
末期がんや炎症性腸疾患、神経性食思不振症、極端なダイエットなど、栄養の摂取や吸収が著しく低くなると低栄養状態に陥ることがあります。
歯茎の色調の変化はよくみられる症状です。特に、歯茎自体の病変や身体的な異常によって歯茎は白くなりやすく、強い痛みや発熱などの症状がなければ見過ごされがちな症状のひとつでもあります。しかし、中には早急な治療が必要な病気が潜んでいる可能性もあるため、注意が必要です。
歯茎に痛みや熱感を伴う白い病変ができて治らない、口内炎を繰り返す、歯茎だけでなく口の中に白い塊が形成されている、発熱などの全身症状がある、歯茎全体が白っぽくなっているなどの症状がみられる場合は何らかの病気の可能性もあるため、なるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
受診する診療科は口腔外科や皮膚科がよいですが、発熱やめまいなどの全身症状がある場合は内科やかかりつけの医師に相談することもよいでしょう。また、子どもの場合は小児科で診てもらうこともできます。
受診の際には、いつから症状があるのか、痛みなどの症状を伴うのか、口腔内以外の症状はあるのかなどを詳しく医師に伝えるようにしましょう。また、既往歴(過去の病歴や健康状態に関する記録)がある場合は病歴や病状の程度を伝えましょう。
翌日〜近日中の受診を検討しましょう。
気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。