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インタビュー

整形内科とボトックス®注射の深い関係

整形内科とボトックス®注射の深い関係
白石 吉彦 先生

隠岐島前病院 院長

白石 吉彦 先生

白石吉彦先生は、平成10年から島根県・隠岐島にある隠岐島前病院で離島医療を守り続けています。地域に寄り添い、あらゆる患者さんを診るうちに、次第に「腰がいたい」「肩がいたい」といった整形疾患の症状を訴える人が多いことが分かってきました。

しかし整形疾患とは言っても、そのような患者さんの大半は手術を必要としません。手術の必要がない整形疾患の患者さんと向き合うなかで白石先生が必要だと考えるようになったのが「整形内科」という診療科でした。

ボトックス®治療は美容医療の世界でよく話題にのぼる言葉です。しかし白石先生は、ボトックス®治療は美容のためだけではなく、整形内科においても大切だと言います。整形内科でボトックス®治療が果たす役割について、うかがいました。

私の患者さんの中に、パーキンソン病で、「眼瞼攣縮」(がんけんけいれん)という、瞼(まぶた)がピクピク震えてしまう症状を持つ高齢の女性で、3ヶ月に一度、本土の神経内科に通院してボトックス®注射をしていた方がいました。しかし、彼女はそのうちに本土まで通えなくなってしまいます。薄々私は「ボトックス®注射を習得しないといけない」と感じていた時期でした。

ちょうどそのように思っていた頃、たまたま参加した日本在宅医学会のセミナーで、「ボトックス®こそ地域医療で使うべきである」と、伊藤守先生(いとうまもる診療所院長)が熱く語られていたのを聞き、びっくりしました。

そこで聞いたのは、ボトックス®が筋肉が痙縮(けいしゅく)している状態に使えるという話です。「筋肉の痙縮」とは、筋肉が縮まってしまったままで、うまく伸びなくなることを言います。(「痙縮」は「関節の拘縮(こうしゅく:関節がかたまってしまった状態)」とは異なることに注意が必要です。)

痙縮は、筋肉を伸ばす際に、筋肉のセンサーが強く働きすぎて、その動きをとめてしまうことで起こります。筋肉の痙縮にボトックス®が効果的という話を聞いて、自分でもやってみようと思い立ちました。

脳梗塞後に約3ヶ月くらい経過すると、筋肉の痙縮が見られるようになる患者さんがいます。その時点で痙縮を改善していかないと、筋肉がうまく伸びず、リハビリの効果が横ばいになってしまうことがあります。

筋肉の痙縮が改善できれば、さらにリハビリの効果が上がり、運動性を獲得できる場合があります。そして、脳梗塞後約3ヶ月というのは、患者さんがひと通りの治療を終えて退院する時期でもあります。そこでの活動性が低くなってしまうのは好ましいことではありません。

実際に、脳梗塞後2年の患者さんの筋肉の痙縮に対して、エコーで注射する筋肉を確認しながらボトックス®注射を行った経験があります。果たして、注射後にリハビリをおこなうと腕の筋肉の痙縮が見られなくなり、運動性が改善しました。

こうした経験があり、私はボトックス®治療を整形内科にとって必要なもので、広めていかねばと考えるようになりました。私がボトックス®治療を教えていただいた伊藤先生には手紙を書き、2015年5月発売の整形内科のテキストの執筆に協力してもらうことになりました。ボトックス®治療は今後、筋肉系の治療に幅広く応用していける可能性があるものです。

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白石先生が編集されている書籍です