インタビュー

老人性難聴とは―加齢のみが原因ではない

老人性難聴とは―加齢のみが原因ではない
岩崎 聡 先生

国際医療福祉大学 教授

岩崎 聡 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

この記事の最終更新は2015年09月16日です。

難聴は命にかかわる病気ではないため、軽視されている一面があります。しかし、「聞こえ」の問題が日常生活の質を大きく左右するものであることは間違いありません。今回は老人性難聴のお話を中心に、国際医療福祉大学三田病院 耳鼻咽喉科の岩崎聡先生にお話をうかがいました。

年齢を重ねるにつれて聴力が衰えるのは誰もが経験することですが、この加齢による聴覚障害は複合的な要因によって起こります。感音難聴のところで述べた有毛細胞の減少など内耳の機能の低下だけではなく、脳の中枢機能の低下、そしてことばを認識する認知機能の低下が合わさって起こっているのです。

このため、単に音の聞こえが悪くなっているだけではなく、音源の定位:つまり音がどの方向から聞こえているのかがわかりにくく、大勢で同時に話しているときに会話を聞き逃してしまうということがあります。また、ゆっくりと話してもらわないと理解しづらい(時間分解能の低下)というのも老人性難聴の特徴です。

老人性難聴は年齢が上がるにつれて発生の頻度が高くなります。65歳以上では25〜40%、75歳以上では40〜66%、そして85歳以上では80%に達するとされ、65歳以上で老人性難聴のある方は1,655万人にのぼると推測されています。

老人性難聴は加齢だけではなく、酸化ストレスによって進行が早まることが分かっています。動脈硬化・高脂血症・糖尿病高血圧などは酸化ストレスと大きく関わっており、老人性難聴のリスク要因となります。そして強大音(過剰に大きな音)にさらされることも酸化ストレスのひとつです。難聴が軽度のうちから補聴器を使って不必要な強大音を避けるとともに、規則正しい生活を心がけることは、老人性難聴の進行を遅らせるために有効です。

  • 強大音を避ける
  • バランスのよい食生活:カロリー・塩分をとりすぎない
  • 適度な有酸素運動
  • 禁煙

また、補聴器を効果的に使用するためには、難聴が発症したらできるだけ早期に補聴器の装用を始め、認知訓練(トレーニング)を行うことが重要です。音源定位の認知低下を改善するためには、音の方向感が分かるように補聴器を両耳に装用して顔を見せるように正面から話しかけます。時間分解能の低下を補うため、まわりの人がゆっくりと話しかけることも大切です。

補聴器には耳あな型や耳かけ型などさまざまな種類がありますが、現在日本で主流になっているのは外耳道レシーバータイプというものです。従来は補聴器本体から出た音をチューブでイヤーピースまで誘導して外耳道に送っていましたが、外耳道レシーバータイプではイヤーピース自体がスピーカーになっており、補聴器本体が分離していることで小型化が可能になりました。また、本体とイヤーピースをつなぐケーブルもごく細く目立たないものになっています。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

関連の医療相談が10件あります

※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

「加齢性難聴」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。