インタビュー

出生前診断とは

出生前診断とは
三井 真理 先生

国立成育医療研究センター 周産期・母子診療センター 不育診療科 医長

三井 真理 先生

この記事の最終更新は2015年12月08日です。

高齢妊娠の増加に伴い、胎児の染色体異常などの病気を心配する妊婦さんも増加しています。臨床研究も含め、出産前に胎児の病気を調べることができる検査は進歩しています。検査結果は100パーセントではありませんが、お母さんの不安を軽くしたり、十分に準備して出産を迎えるために大いに役立っています。検査をすることによって生じる危険を含め、出生前診断について成育医療研究センターの三井真理先生にうかがいました。

現在、臨床研究の段階ではありますが、血液検査によって胎児に染色体の病気の可能性がないか調べることができます。アメリカなどではこの検査がすでに普及しているのですが、その検査によって胎児に染色体の異常が見つかった場合、生まれてから入る施設を調べるなど福祉の準備をします。多くの方が、検査をしてから出産までの時間を、お子さんを受け入れる準備に費やすのです。

アメリカやヨーロッパは、こういった検査に対する考え方が非常に成熟しています。その国の文化や国民性、個人哲学、習慣などにとても大きな影響を及ぼします。ボランティア精神や病気を持つ方への意識も成熟しますし、お子さんが生まれてからも充実した十分な社会のサポートが見込めます。こういった社会背景も、出生前診断を受けるお母さんの考え方や選択に大きく影響しています。

出生前診断の多くは、妊娠してから早い段階で行うことが多いため、診断後に妊娠を継続するかどうか検討するご夫婦もいらっしゃいます。診断によってわかったことをご夫婦がどう受け止めるかは、医師には介入できない部分です。そのため、自分が望まない結果になった場合のことも、十分に考える必要があります。

上記の出生前診断にはいくつかの種類があります。以下にそれぞれについてご説明します。

母体血中の「cell-free DNA」を用いた非侵襲的(体への負担が少ない)出生前遺伝的検査の臨床研究です。妊娠10~21週までの間に、妊婦さんから20mlの血液を採取し、血液中を浮遊しているDNA断片を分析することで、赤ちゃんが3つの染色体疾患(13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー)かどうかを検査します。検査結果が出るまでに2~3週間かかります。

※検査は臨床研究の一環として行われており、研究参加には一定の条件があります。

妊娠15~16週で行います。妊婦さんから採血した血液中の成分の濃度より、胎児における一部の病気の確率を計算する検査(非確定的検査)です。ただし子宮内の胎児、または胎盤から放出されているこの値は妊婦ごとに異なるので、一部の病気ではこの成分値が増減します。出産時年齢に相当したリスクにこの成分値の増減を加味して、病気の確率が算出されます。

妊娠11~13週に行います。母体血清マーカーと超音波検査でのNT(Nuchal Translucency)計測を妊娠初期に組み合わせて行うものです。検査の精度を上げて胎児の一部の病気の確率を計算する検査(非確定的検査)です。出産時年齢に相当したリスクに、NT検査の結果と血液中の2種類の成分の濃度を加味して、18トリソミーと21トリソミーの確率が算出されます。採血から結果が出るまでの期間は1週間~10日です。

NIPTの検査で陽性が出た場合、妊娠16週以降に確定診断のために行われることがあります。胎児や胎盤を避け、子宮に直接針を穿刺し羊水中の細胞を調べるものです。検査結果が出るまで2~3週間かかります。

このほかにも、超音波検査(胎児超音波スクリーニング)や妊娠初期コンバインド検査など、目的や妊娠周期によってさまざまな検査があります。希望する際には、医師とよく相談するようにしましょう。

出産前診断の費用

<リスクを判定する検査(非確定的検査)>

NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)※臨床研究・・・約200,000円

妊娠中期母体血清マーカー(クアトロテスト)・・・約15,000円

妊娠初期コンバインド検査※臨床研究・・・約30,000円

<診断を確定する検査(確定的検査)>

羊水検査・・・約160,000円

検査を行うことによって、わずかですが破水や感染、出血、流産などの可能性もあります。また、検査によって陰性が出たとしても、どんなお子さんにも100パーセントの安全性はありませんし、検査に100パーセントの信用性があるわけでもありません。検査の特性をよく理解し、受けるかどうかについて十分に考えていただくことが重要です。

高齢出産におけるメリットについては、身体的な観点からはあると答えるのが難しいと私は思います。しかし、「子どもを持つ親になる」という観点で述べれば、たとえば仕事を続けてきたことによる経済的なゆとりがあること、多少のことでは動じない精神的なゆとりがあるということなど、若い世代に比べて大いに勝っている部分を挙げることもできるでしょう。

ただし、年齢が高くなると、お母さん自身にも、がんや甲状腺など別の病気のリスクが増加します。「出産にはタイムリミットがあること」「欲しいと思ったときに授からない可能性があること」「必ずしも自分が思い描いている妊娠と出産となるわけではないこと」を忘れないでいただきたいと考えています。

高齢出産のリスクは理解し、将来の妊娠も考えているが、まだすぐに準備が整えられないという場合もあるでしょう。このような方は、1年に1回の検診を受けるだけでも、自分の体を理解するうえで非常に効果があります。

現在では、「ブライダルチェック」や「プレママ検診」などの名称で、妊娠に必要な値を調べることのできる病院も増えてきました。さまざまな検査があり、病院によって実施している検診も違いますので、その病院が何を調べているか、自分がどこまで知りたいかなどをよく考慮しながら選択してください。

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