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インタビュー

高齢出産のリスクとは

高齢出産のリスクとは
三井 真理 先生

国立成育医療研究センター 周産期・母子診療センター 不育診療科 医長

三井 真理 先生

妊娠するために一番重要なことは、まずは妊娠のしやすさです。それから、選ばれた卵子が「無事に妊娠できるまでがんばれる卵」なのかということです。高齢かどうかに限らず、妊娠を望む女性ならば誰もが自分は妊娠しやすい体なのか気になるところでしょう。引き続き、国立成育医療研究センターの三井真理先生にお話をうかがいました。

年齢が上がるほど、妊娠の可能性はどうしても下がってしまいます。そこで、今さまざまな病院でひとつの指標にされているのが、AMH(anti-Mullerian hormone、抗ミューラー管ホルモン)の値です。これは卵巣の予備能の指標の1つであり、個人差がありますが、年齢に比して下がっていく傾向にあることがわかっています。

この数値は幅があるもので、絶対という値ではないのですが、年齢とともに低下し、妊娠のしやすさに大きく関係しているのではないかと考えられています。AMHの検査はここ数年で認知度も上がり、誰でも受けることができるので検査を希望される方も増えています。

実際に妊娠反応が出ると、どの患者さんも10ヶ月後無事に出産を迎えられることを想像します。多くの女性が、恋愛をして結婚して妊娠をして出産する、という流れをごく自然に想像されると思いますが、実はそれは当たり前のことではないのです。恋愛、結婚までは順調にできても、なかなか妊娠できなかったり、妊娠まで思いのほか時間がかかってしまったり、妊娠はしたのだけれども残念ながら流産してしまったり…という方もいらっしゃいます。

女性の卵巣年齢は、年齢とイコール、つまり年齢が上がれば卵巣の年齢も上がるといわれています。これを知らない女性は意外と多いという印象があります。選ばれた卵が受精したときに、それが「頑張って成長できる卵」なのかどうかということは私たちには知る由もありません。しかし年齢が上がるほど、どうしてもがんばれない卵を授かっていた、という比率は高くなる傾向といえます。

女性の年齢と染色体異常のグラフ

上のグラフは、なんらかの染色体異常がある割合と女性の年齢を比較したものです。染色体異常にはいろいろな種類がありますが、年齢が上がれば染色体異常を発症する確率が上がっていくのがわかります。

女性の卵子の数は一生のうちで決まっています。そのうち、たとえば、ベビーになることができる、選ばれる卵が10個あるとしたら、高齢出産と定義される年齢になると、そのうちの1個はどうしてもがんばれない卵を授かる可能性があるということです。

来院される方の中にも、この事実を初めて知ったという患者さんは少なくありません。自分が健康に生きていれば、当然妊娠も出産もできるものと思ってしまいがちなものです。また、生理も順調だったのにどうして自分は妊娠できないのか、とがっかりされる方も多いです。ですから、この自分の年齢と卵巣年齢の関係を、少しでも多くの方に知っていただくことが大切だと考えています。

あまり知られていないかもしれませんが、もともと流産率はすべての妊娠の10~15パーセントといわれています。年齢が上がると流産率が上がるといわれているのは、繰り返し述べているように、年齢とともに染色体の病気も増えるからです。

根本的な流産の原因は、約8割のケースでは胎児側にあると考えられており、残りの2割のうち、流産を繰り返す場合は母体側に要因があると考えられています。もともと染色体の病気を持っていた胎児の流産の割合も高いことがわかっています。

これを単純化して流産の確率を説明すると、高齢妊娠に限らず(すべての妊婦の年齢を含める)全体として見た場合、10回妊娠すれば1回もしくは2回はどの妊婦さんにも流産する可能性があるということがいえます。

どの年齢で妊娠しても、染色体異常や病気を持った胎児を授かることはありますし、流産を経験することもあります。かならずしも高齢=難しい妊娠ということにはなりません。

ただ、ダウン症の場合などは卵子の年齢との明らかな相関があるとわかっています。やはり年齢が高くなれば、こうした染色体異常や病気の胎児を授かるリスクは高くなると考えられます。いずれにせよ、妊娠や出産において100パーセントの予防策はなく、年齢による程度の差こそあれ、誰もがリスクを持っているのです。

妊娠糖尿病妊娠高血圧症候群の2つは、病態は少し異なりますが、高齢妊娠したことによってかかるリスクが上がる病気として知られています。これは、今までになんの問題もなく健康な生活を送ってきた方にも当てはまります。

妊娠をするとき、どんなに健康な方でも「(妊娠したら)実はどうなるのか」ということがまったく予想できません。「妊娠は健康の負荷試験」といわれているほど、体にとっての一大イベントなのです。妊娠という負荷がかかったところ、それまでまったく健康だったのに様々なところからひずみが生じ、急に血糖値が上がった、尿糖が出はじめたという方もいらっしゃいます。

これらは、年齢とともに極端に上がりやすくなるとはいえませんが、関係はあるだとうと考えられています。現在のところ何倍か、どう関係しているかというはっきりした統計や研究結果はありません。しかし、20歳での妊娠と40歳の妊娠では身体にかかる負担は大きく変わりますので十分に気をつける必要があります。

成育医療研究センターでは高齢の妊婦さんも多いですが、実は妊娠高血圧症候群の妊婦さんは少ないです。これは、「体重管理に気をつけてくださいね」「高血圧症を意識して食事管理をしてくださいね」という医師の指導のもと、妊婦さんが十分に気をつけて生活している効果もあると思います。妊婦さん自身もリスクをしっかり認識して、自分で妊娠中の体を管理していただくことが病気の予防に役立っていると考えています。もちろん十分に管理していても病気を発症することはありますが、発症しないように対策をするということが重要です。

「高齢出産は、産道が開かなかったり体力的に問題があるため、帝王切開になりやすい」という話を耳にしたことのある方も多いかもしれません。

しかし、帝王切開となる割合は必ずしも高いとはいえません。かつては高いとされていた時期もありましたが、現在では、妊娠時でも活動的に仕事をしている高齢の妊婦さんも大勢いらっしゃいます。20年前と比較しても現代の40代は体力が十分に充実しているケースも多く、若い年代の方と比較しても帝王切開率は大きく変わりません。

帝王切開は、医学的理由がなければ、年齢だけを理由として行われることはありません。たとえば「突然胎児の心拍が弱まってしまったからすぐに外に出してあげる必要がある」「子宮口が途中から開かなくなってしまった」など、医学的な理由がある場合に行われるのです。

この産道が開かないなどの現象は、20歳の出産でも起こることがあります。ですから高齢出産だけでは、帝王切開の直接的な要因にはあまりなりえないと考えてもいいかもしれません。

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