尖圭コンジローマの特徴は長い潜伏期間のほかに、イボができても痛みやかゆみが現れないことが多く気づかれないことがあげられます。自覚症状がないため、尖圭コンジローマに感染していることに気づかず、また誰から移されたかも特定できないまま別の方に感染させてしまうこともあります。
今回は尖圭コンジローマの長い潜伏期間を示す、実際の症例をご紹介していただきました。
年齢:20代
性別:女性
主訴:腟にイボが出現、痛みやかゆみはない
実際に診察をしてみると、小陰唇と腟前庭に形が乳頭状で鶏のトサカ状のイボがたくさんできていました。色は灰白色から褐色、1~5mmの大きさのイボでした。症状から尖圭コンジローマであると診断しました。 ほかの性感染症と同様に、尖圭コンジローマも主に性行為で感染するので受診時にパートナーがいるかどうかを尋ねたところ、受診する約2ヶ月前から今のパートナーと付き合い始めたということでした。そのためこの患者さんは尖圭コンジローマをその方に移されたのだと思ったそうです。
しかし、尖圭コンジローマの潜伏期間は平均3ヶ月と比較的長い性感染症です。念のため前のパートナーといつ別れたかを尋ねてみました。これは現在のパートナーより以前に他の方と性交渉がなかったかを知るためです。すると、前のパートナーとは半年前に別れているが、この性感染症とは関係ないはずだと思い込んでいました。
尖圭コンジローマの感染経路を特定するときには、以前のパートナーの状態も把握しておく必要があります。もし以前のパートナーが尖圭コンジローマに罹っていることが判明すれば、前のパートナーが感染源として最も疑わしいと言うことができるでしょう。 このケース場合、患者さんに前のパートナーに確認してもらったところ、やはり尖圭コンジローマと診断され治療を行っていたことがわかりました。
この患者さんのように、自分が現在のパートナーに移してしまうかもしれない「加害者側」であるのに、逆に自分が「被害者」であると思い込んでしまう場合もあります。 その後この患者さんの現在のパートナーを検査したところ、幸い発症していないことがわかりました。
パートナーを本当に大事に思っているのなら感染してしまったことをパートナーに正直に話すことが大事です。性感染症を相手に知らせないで放置していると、最悪の場合不妊症につながることもあります。性感染症は「過去」ではなく「未来」が大事なのです。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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