尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされる性器周りに生じるイボの一種です。実はHPVは身体中にできるほとんどのイボの原因でもあります。 今回はHPVが引き起こす尖圭コンジローマ以外の疾患についてのお話です。
尖圭コンジローマと同様にHPVが原因で外陰部にイボが発症する性感染症にボーエン様丘疹症があります。ボーエン様丘疹症とは、比較的若い方に多く見られ、「HPV16型」などが原因となることがわかっています。
症状としては、外陰部に褐色ないし黒褐色の5mmくらいのイボができます。一般的に悪性化することは少なく、自然治癒がみられることもあります。しかし若年者以外にもエイズ患者や白血病患者、臓器移植後などの免疫抑制状態の方に発症しやすく、その場合はなかなか治らず悪性化しやすいと報告されています。
ボーエン様丘疹症の原因ウイルスであるHPV16型はハイリスク型であり、子宮頸癌の原因ウイルスでもあります。ボーエン様丘疹症にかかった女性の方、感染してしまった男性のパートナーである女性の方は子宮頸癌の検査をうけることをおすすめします。
ボーエン様丘疹症の治療は、基本的に尖圭コンジローマと同じ治療を行います。液体窒素による「凍結療法」や電気メスでイボを切除する「電気焼灼法」、イミキモドの外用などを行います。
性器ボーエン病は、外陰部や臀部付近の皮膚の表面内部に生じる癌のことをいいます。主に高齢者にあらわれ、ボーエン様丘疹症と同様にハイリスク型であるHPV16型が原因となります。紅色ないしは褐色で直径数cmの円形から楕円形の班のため「紅色肥厚症」とも呼ばれています。
性器ボーエン病は、湿疹や乾癬などとの区別が難しいことがあります。その場合は、皮膚組織生検を行います。
性器ボーエン病の治療の第一選択は、「手術的切除」です。大きさや部位によって異なりますが、数mm離して拡大切除を行います。また、切除が困難な際は、液体窒素による凍結療法、イミキモドの外用などを行います。
子宮頸癌は多くの場合、ハイリスク型であるHPV16型や18型などと関連があると言われており、子宮頸癌の90%以上にみつけることができます。子宮頸癌は子宮の入り口である子宮頸部から発生します。早期に見つけ治療を行うことができれば、比較的治癒しやすいと言われています。他の癌と同様進行すると治療が難しいので、早期の発見・治療が大事になってきます。
2011年から日本で使われるようになった4価HPVワクチンは、子宮頸癌の約70%の原因とされているHPV16型、18型に加えて、HPV6型、11型が原因で引き起こされる尖圭コンジローマなどの疾患の予防にもなることがわかっています。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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