「性感染症」というテーマは、日常生活の中ではなかなか話題にしにくいものかもしれません。しかし、性感染症の知識は、私たちがきちんと身につけておかなければならないものです。
さまざまな性感染症について、性感染症学会の代議員としてわが国における性感染症予防・治療を牽引し、ご自身の診療所でも長きに渡り性感染症の患者さんと向き合われてきた尾上泰彦先生に伺います。今回は「尖圭コンジローマとはどんな病気?―癌になる恐れもある性感染症」でご紹介した「尖圭コンジローマ」の再発についてのお話です。
尖圭コンジローマの治療は現在確立されていますが、どの治療法を行ってもある程度は再発してしまいます。そのため、尖圭コンジローマはまさに再発との戦いといえるでしょう。尖圭コンジローマが発症してしまった場合は再発をいかにコントロールできるかが治療の鍵となります。
現在の治療法としては外科的療法と薬物療法が挙げられます。
外科的療法には外科的切除、電気焼灼術、凍結療法、レーザー蒸散術といった種類があります。薬物療法で用いられる薬はイミキモド5%クリームの外用、80~90%の三塩化(二塩化)酢酸の外用、インターフェロンの局所注射、10~25%のポドフィリンアルコール溶液、0.5%ポドフィロックス溶液またはゲルの外用などが挙げられます。
アメリカでは2008年1月に緑茶抽出物軟膏(Sinecatechins軟膏)が発売されました。この薬は肛門や腟内にも使用可能で、日本でも新しく追加される予定です。それ以外に、かつてはフルオロウラシルという抗癌剤も治療薬といて挙げられていましたが、エビデンスがなく(医学的な根拠に基づいて効果が証明されず)、2008年にガイドラインから削除されてしまいました。このフルオロウラシルという薬はイミキモド5%クリームが発売される前はよく用いられていました。私の経験では使用方法を間違えなければイミキモドとほぼ同等の臨床成績を得ることができ、現在でもイミキモドの使用で効果がない症例に用いるとそれなりの成績を得ています。
実際の臨床現場では外科的療法や薬物療法をそれぞれ単体で行うのではなく、外科的治療の後に薬物療法を行ったり、薬物療法の後に外科的治療を行うなど、選択枝は様々です。
尖圭コンジローマは、やはり治癒判定が非常に難しく、再発率が高い点が問題になっています。目安としては疣贅(イボ)が消失した後最低3ヶ月は再発がないことを確認して治癒と判断されます。
尖圭コンジローマの治療は再発との戦いであり、絶対的な治療法はありません。そのため尖圭コンジローマに対しては、この原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しないことが一番です。これに対し最も力を発揮するのがワクチンです。実際に日本でも女性に対して4価ワクチン(HPV6型、HPV11型、HPV16型、HPV18型)が承認されています。この4価ワクチンは子宮頚癌、尖圭コンジローマなどのHPV関連疾患の予防効果があります。
この4価ワクチンは世界的に推奨されており、現在女性に対しては127ヶ国で承認されています(2012年8月20日現在)。しかし男性に対しては世界的に73ヶ国しか承認されておらず、日本でも男性対しては未承認です(2012年8月20日現在)。アメリカでは試験的に9価HPVワクチン(6、11、16、18、31、33、45、52、58型HPV)の臨床試験が開始されています。この9価ワクチンは子宮頚癌や尖圭コンジローマの原因となるHPVの約90%をカバーしています。この9価ワクチンの使用で尖圭コンジローマや子宮頚癌の予防がより強くなることが期待されています。
HPVワクチンの効能が期待されている中で平成25年の4月に公的に定期接種の対象になりましたが、その2ヶ月後に「ワクチン接種の中止はしないが推奨はやめる」ということになりました。歩行障害、けいれん、体の複数部分での痛みなど、様々な重い副作用が次々と報告されたからです。この副反応の原因はいまだ解明されておらず、専門家が解明に力を注いでいます。現在は接種中止ではなく差し控えという状況であり、有効性とリスクについて十分に理解した上で接種するようにしましょう。
プライベートケアクリニック東京 院長
尾上 泰彦 先生の所属医療機関
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