インタビュー

胆道閉鎖症とはどんな病気?

胆道閉鎖症とはどんな病気?
田口 智章 先生

学校法人福岡学園 福岡医療短期大学 学長、九州大学 名誉教授

田口 智章 先生

この記事の最終更新は2016年01月10日です。

生後1か月のときに行われる1か月健診は、新生児のからだの異常を発見する絶好のチャンスです。便の色が薄かったり、黄疸が出ていたりすると胆道閉鎖症が疑われます。しかし、生まれて間もない時期だったり、母乳を飲んでいたりすると黄疸が起きやすいため、正常なものか病的なものかの判断が難しい場合も少なくはありません。見逃されることも多いという胆道閉鎖症について、九州大学病院小児医療センター長の田口智章先生にお話を伺いました。

胆道閉鎖症は、肝臓と十二指腸をつなぐ胆管や肝管といった管が先天的に塞がっている難治性の病気です。新生児期から乳児期早期に好発し、発症頻度は出生およそ1万人に対してひとり程度とされています。男児よりも女児に多い原因不明の疾患で、2015年7月に、それまでの小児慢性特定疾患に加えて難病へ指定されました。

肝臓は、からだにとって非常に重要な役割を担っています。消化酵素である胆汁を作ることもその一つです。胆道閉鎖症の場合、胆管が詰まっているため、肝臓で作られた胆汁が分泌されずにからだの中に溜まってしまう「胆汁うっ帯」状態となり、その結果として黄疸が現れるのです。胆汁の主成分で黄色い色をしたビリルビンは脾臓と肝臓でヘモグロビンが分解されて作られます。胆汁がからだの外に排出されないため、肝臓の組織は次第に壊され肝硬変へと進行してゆくのです。

胆道閉鎖症の症状には、生まれてから14日以降も続く黄疸や淡黄色の便、濃い黄色尿など特徴的なものがあります。黄疸に関していえば、新生児(出生後28日未満の乳児)は、もともと生理的黄疸というのがあって、黄疸があっても正常ということもあります。また、母乳性黄疸といって、母乳を飲んでいると黄疸が現れやすいということもあり、正常と異常の区別がなかなかつきにくいのです。

胆道閉鎖症などの肝臓疾患を早い段階で発見するひとつの契機が新生児の1か月健診です。健診は、黄疸の有無や便の色が薄くないかなど、スクリーニング的な役割を果たしているのですが、多少の黄疸があっても「母乳性黄疸だろう」といったように病的な黄疸が見逃されることが多々あるのです。黄疸の鑑別は難しいため、専門家でなければわからないことも少なくありません。1か月健診は一般開業の産科の先生方にしていただいている場合が多く、数多くの生理的黄疸をみる中で病的な黄疸を見逃されてしまうこともあるようです。

生理的黄疸は、新生児の約90%にみられますが、通常であれば生後およそ14日までに消失します。しかし、胆道閉鎖症の場合は14日を過ぎても黄疸が消えず、または一時的に消えたとしても再び現れてくるのです。1か月健診の時に見逃されると、次に発見されるまでの間に病状は進行してしまいます。早期であれば葛西手術で治る可能性もありますが、肝硬変に進んでしまうと葛西手術では治療が難しくなってしまうのです。

そこで、これら病的な黄疸を見逃さないようにと考え出されたのが、「便色カード」です。これは赤ちゃんの便の色をお母さんに観察してもらうためのツールで、1番から7番までに色分けされた便の色が掲載されています。赤ちゃんを一番よく観察しているお母さんに、異常を早く発見してほしいと考案されたものです。

この便色カードは、胆道閉鎖症等の早期発見を目的に、母子保健法の一部改正よって平成23年から母子健康手帳に掲載されることが義務づけられました。便色カードと子どもさんの便の色を比較して、異常があれば早めに小児外科または小児科の専門医を受診してほしいと思います。

便色カード
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    日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本外科学会 外科専門医・指導医

    田口 智章 先生

    九州大学大学院教授、九州大学病院小児医療センター長。日本外科学会理事。2013年、日本初となる小児外科の手術書「スタンダード小児外科手術」の執筆・監修を行った。2016年5月に福岡で開催予定の日本小児外科学会会長・アジア小児外科学会会長を務める。

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