水虫は白癬菌という真菌、つまりカビが原因となって起こる皮膚感染症です。温泉や公衆浴場などでうつることが多いと言われている水虫は、どのようにして感染するのでしょうか。白癬菌の性質や感染のメカニズムなどについて、北里大学北里研究所病院皮膚科部長の佐藤友隆先生にお話をうかがいました。
白癬菌はケラチンというタンパク質を栄養分として、皮膚の角質や爪、頭髪などで増えていきます。パラサイト(寄生菌)は永住の地を探して、そこに住むために進化してきています。皮膚についてもすぐに落ちてしまうような環境では安定しませんから、最後に爪を目指すのだと考えられます。爪に入ればひと安心というところでしょう。実際、水虫を再発している方は、爪白癬になっている場合が多くみられます。
実は白癬菌は宿主を選んでいて、宿主の好みによって、ヒト好性菌・動物好性菌・土壌好性菌の3つにわかれています。基本的に人につくのはヒト好性菌なのですが、私が専門として症例を報告しているのは動物由来菌です。一般の方にはほとんど知られていませんが、菌が動物から人につくことはしばしばあり、獣医さんなどはそのことを意識しています。
水虫は人から人へというイメージがあるかもしれませんが、たとえば猫からもらってしまうようなこともありますし、動物由来もあれば、土由来の場合もあります。ヒト好性菌だけであれば顕微鏡で直接見るだけでも診断が下しやすいのですが、動物由来や土由来の可能性があるときには菌を決める、つまり培養して菌を同定するということが重要になります。また、ペットを飼っているかどうかということも問診で必ず訊いておかなければなりません。
水虫の感染経路については、東京医科歯科大学におられた加藤卓朗先生が「フットプレス法」という独自の方法で調査をされています。それによれば、たとえば温泉の脱衣所などの公共の場所で、感染していない人が歩きまわった後に足の裏を寒天培地につけると、そこに白癬菌が増えるということがわかっています。
つまり、感染していない人の足でも、皮膚の角層に白癬菌が付着してしまうということです。ただし、角層についたからといって感染が成立するわけではありません。正常な角層であれば、24〜48時間のうちにきれいに拭きとって乾燥させれば感染しないと考えられています。
皆さんがイメージしている「かゆい水虫」は、初感染の方に多くみられます。宿主に寄生するパラサイトは、いかに気づかれずに同居するかということに長けていますが、間違った相手―たとえば前述の動物好性菌がヒトについてしまった場合、排除機能が働いて炎症が激しくなってしまいます。激しいかゆみは治そうとする生体の反応によって起こっているものですから、逆に言えばかゆい人ほど早く治るとも言えます。
白癬菌はカビですので、夏場など高温多湿な気候が続くときには悪化しやすいと考えられます。その一方で、角質増殖型では冬場など乾燥する時期に角質が割れて痛いといった症状を訴えて受診する方がいますが、これは白癬の症状そのものが悪化しているというわけではありません。
次のような条件に当てはまる方は、水虫(足白癬)にかかりやすく、悪化させやすい傾向があります。
男性と女性で水虫の感染しやすさに差はありませんが、同じ教室にいても風邪をひく人とひかない人がいるように、たとえば夫の水虫が妻には感染せず子どもには感染するということがあります。これは夫婦間で遺伝子のタイプが異なるためです。同居している家族でも必ず全員が水虫になるとは限りませんし、夫婦間で逆になるパターンもあります。
同様に、合宿生活であっても全員が水虫になるというわけではありません。ただし、ある全寮制の中・高一貫校での調査研究では、やはり24時間生活を共にしているため通常よりも水虫に感染しやすかったという報告があります。この場合には、初感染で免疫が激しく発動するタイプである小水疱型が多くみられました。
年齢的な要因としては、爪白癬は高齢になるほど明らかに多くみられます。ただし、小児でも爪白癬になりやすい爪質のお子さんがいます。これはおそらくケラチンの質に遺伝子的な違いがあるからではないかと考えられています。
帝京大学ちば総合医療センター 皮膚科 教授、慶應義塾大学 非常勤講師
関連の医療相談が10件あります
手湿疹ですが、痒みと痛みがともなっています。
体が温かくなると痒くなり、身体が冷えたり乾燥していると痛み出します。寝ている時にかきむしっているみたいで(無意識です)一向に良くなりません。皮膚科に通って飲み薬と塗り薬ももらいましたが、使ってはいますが完全には治りません。かきむしっている所はかき餅の表面みたいにひび割れて、つゆが出てきたりしてます。
手のひらのただれ
家内の件ですが、2年くらい前から、右手の手のひらが、ただれており、皮膚科のクリニックに伺い、塗り薬で治療しているが、一向に良くならない。水仕事がある場合は、手袋をしています。ただれた箇所は、痒くて、表面の皮がぼろぼろを剥けてきています。水虫ではないとの 診断を受けています。専門医にどのようにかかり方をしたらよいかお教え願います。
左脚の甲の腫れ、左脚の指の水疱
水虫の持病は25年位続いています。 1週間前から水虫が酷くなり、指の間の2箇所に水疱ができました。水疱は夏場に何回か経験したことはあります。それと同時に脚全体に発疹ができました。 特に痒みはありません。 それから2日程してから左脚の甲が腫れ出しました。 指で押すと少し痛みがあります。 右脚は症状が出ていません。 どういった病気が考えられますか? お返事よろしくお願いいたします。
足の親指の爪が黒っぽくて濁っている
去年からです。今、気がついたら足の親指の爪が半分黒っぽくて濁っている。何のサインなんでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「水虫」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。