水虫は手足に小さな水ぶくれやカサカサ、ふやけが生じる状態を言います。患者の数も多く、強いかゆみを伴うこともありますのでよく知られた状態です。その原因の多くは、白癬菌というカビ(真菌)が皮膚に感染して発症する伝染性の病気です。水虫と白癬は同じものと誤解されていることがあるのですが、全ての水虫が白癬菌によって引き起こされるわけではありません。そのほかの病気が原因で水虫の症状が現れることもあるため、注意が必要です。
この記事では、水虫の多くを占める白癬について、病院や医院での検査方法や治療方法をご紹介します。
白癬菌は数ある真菌(カビ)の一種で、体の表面にある角質に寄生して、角質の主成分ケラチン(たんぱく質の一種)を分解して栄養として取り込みます。足に出ると足白癬(水虫)、爪ならば爪白癬(爪水虫)、体では体部白癬(たむし)、頭では頭部白癬(しらくも)と呼ばれます。
白癬菌の検出は病巣から角質、フケ、垢を取り、顕微鏡を用いて行います(KOH直接鏡検法)。白癬菌の存在が疑われる部位の皮膚や爪を、メスやはさみ、ピンセットを使用して少量採取し、角質溶解液(水酸化カリウム KOH)に浸します。これを顕微鏡で観察して白癬菌が認められれば、水虫(白癬)と診断されます。検査時間は速ければ10分内外で終了します。この方法で菌が検出できない場合は白癬でない場合もあり、必要に応じて真菌培養が用いられます。
まず、皮膚科専門医を受診し真菌の有無を検査します。そして白癬と診断されると抗真菌薬が処方されます。
皮膚の角層にできた白癬には塗るタイプの抗真菌薬を使用します。爪白癬は治りにくいですが、内服の抗真菌薬や濃度と浸透性を高めた外用抗真菌薬が使用されます。
外用薬はクリームや軟膏、液剤などの形状があり、症状に合わせて使い分けます。
軟膏は刺激が少ないためほとんどの病巣に使用でき、びらん(ただれ)化した皮膚など、刺激に弱い状態や乾燥したかかとに好んで用いられています。クリームは軟膏に比べてべたつきが少ないため、夏場などに使用することが好まれます。体にも塗りやすく、また、乾燥などの症状も改善するので、もっともよく使用される剤形です。液剤は使用感がよいですが、刺激が強いためびらんなどがある場合や広範囲に確実に塗らなくてはならない場合、病巣が乾燥している場合には処方されません。
近年、爪白癬用の外用抗真菌薬が登場しました。これは、皮膚用と比べて高濃度で爪への浸透がよくなる工夫がされています。内服薬が使用できない患者にも使用しやすいと考えられます。
真菌に感染した角層が厚くなっていたり、爪や頭の毛、あるいは体の広範囲に感染が見られたりする場合には、外用薬を塗っても薬の作用が行き渡りにくいことから、内服薬を使用することがあります。白癬の治療に使われる内服薬は、イトラコナゾールとテルビナフィンです。これらはほかの薬との飲み合わせに注意が必要な場合もあるため、服用している薬があるときは医師や薬剤師に相談しましょう。また、ごく最近爪白癬に対してホスラブコナゾールが開発され、治療法の選択の幅が広くなってきました。
手や足の水虫では、かゆみや乾燥などの症状が改善しても、完全に治癒するまでに2~3か月は毎日外用薬を使用することがすすめられています。特に爪水虫(爪白癬)は半年から1年以上掛かることもあるので、根気よく治療しましょう。
再発を防ぐためには、医師から指導された期間、治療を続けることが大切です。症状が改善されたからといって、途中で使用をやめないようにしましょう。
白癬の中でも足に生じる足白癬の予防には、足を蒸らさないこと、そして裸足で歩いた後は足の裏を洗ったり、乾いたタオルで拭ったりすることが大切です。
日本の習慣では、室内、公衆浴場、プールなど、生活の中で裸足になることが多く、特に不特定多数の人が裸足で過ごす場所は白癬患者からこぼれ落ちた菌で汚染されています。裸足でそのような場所に立ち入ると白癬菌が付着することが知られています。しかし、足に白癬菌が付着しても、直ちに感染するわけではありません。足を洗う、乾いたタオルで拭うだけでも付着した菌は落とすことができます。公衆の場にて裸足で過ごした後は、帰宅後に乾いたタオルで拭うようにしましょう。また、家庭内に足白癬の患者がいる場合は、その治療を行うことで家族への感染を予防できます。外用の抗真菌薬を塗り始めると、床に落ちる生きた菌は激減することが知られています。
それ以外の対策として、床やカーペットの掃除で菌量が減ることが知られていますが、スリッパや足拭きマットを別にすることの予防効果は不明です。家族にうつさないためにも、病院を受診し治療を継続しましょう。
金沢医科大学 名誉教授
望月 隆 先生の所属医療機関
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