インタビュー

水虫の治療-治療薬と日常生活中にすべきこと

水虫の治療-治療薬と日常生活中にすべきこと
佐藤 友隆 先生

帝京大学ちば総合医療センター 皮膚科 教授、慶應義塾大学 非常勤講師

佐藤 友隆 先生

この記事の最終更新は2016年02月26日です。

毎年シーズンになると水虫薬のプロモーションがさかんに行われますが、市販薬ではなかなか治らず、再発を繰り返す方も多いのではないでしょうか。北里大学北里研究所病院皮膚科部長の佐藤友隆先生は、適切な治療のためには正しい診断が重要であるとおっしゃっています。皮膚科専門医の立場からみた水虫の治療、そして感染予防や再発防止のための心がまえについてお話をうかがいました。

白癬は足だけでなく、手や爪、股部、頭部、そのほかの部分にできるものがあり、それぞれ手白癬爪白癬・股部(こぶ)白癬・頭部白癬体部白癬と呼ばれます。これらはすべて基本的に同じ薬(抗真菌薬)で治療できますが、爪白癬だけは組織学的に硬い組織なので、塗るタイプの外用薬では治すことが難しく、内服薬を使う必要がありました。

内服薬には相応の副作用もあるため、患者さんに敬遠されている部分があります。また、小児の場合には基本的に内服薬を使うことができません。しかし、2014年の秋に外用の爪専門薬が発売され、塗り薬でも爪白癬がかなり治せるようになってきました。今後も新しい爪白癬の外用薬がいくつか出る予定があり、治療の選択肢として期待されています。

しかし、本当に爪白癬の完治を目指すのであれば、やはり内服薬を使う必要があります。また、頭にできた白癬(頭部白癬)にも外用薬は使うことができず、内服薬を服用しなければ治すことができません。

頭部白癬や体部白癬の場合、爪白癬が身体の他の場所に移ってきた可能性があるため、必ず爪を確認する必要があります。そのような場合の治療としては、塗り薬ではかえって炎症を悪化させてしまうので、内服薬を使って爪白癬と一緒に治してしまうというという方法があります。

また、皮膚科医が診察をしても最初の検査では白癬菌が出ない場合もあります。そのようなときにはステロイドなどの抗炎症薬でいったん炎症を鎮め、再度検査をして白癬菌を認めたら抗真菌薬での治療に切り替えていくといったことも行います。

生体の反応として感染症では過剰免疫反応が起こります。白癬菌を攻撃して倒しても、その結果生み出される破壊産物に対してかぶれるという反応が起こります。かぶれの反応が起きているときには、他のさまざまな刺激に対してもかぶれやすくなっています。そこで市販薬を使うと、かゆみ止めなどの成分が含まれているため、さらにかぶれてしまうといったことも起こりえます。

そういった場合にはステロイドなどのシンプルな薬で炎症を抑えると、一時的には感染症が悪くなったとしても病気の本質が見えやすくなります。そこで診断に至ってから抗真菌薬での治療を集中的に行ないます。その過程でかゆみが出た場合には薬を少し休みながら治療を行っていきます。

指の間のジュクジュクしたところを必要以上にゴシゴシと強く洗うと、かえって傷つけてしまうのでよくありません。かゆみがあると強く洗ったりこすったりしてしまいがちですが、それでは火に油を注ぐ結果になってしまいます。またそこで市販薬を使って炎症を起こしてしまうと、調べても菌が見つからず、診断に至らないということもあります。適切な治療のためには、正確な診断がなによりも重要です。

  • 長時間同じ靴を履き続けることを避ける

通勤用の靴と仕事中に履く靴を別にすることは重要です。できれば毎日同じ靴を履くことも避けたほうがよいでしょう。また、ブーツは蒸れやすくリスクが非常に高くなります。特に若い女性などでは季節を問わずブーツを履く機会が多いため、受診する患者さんも増えています。

  • 通気性のよい靴下を履くこと。特に5本足趾靴下は足趾同士が触れ合わないのでおすすめです。
  • 畳や床など、裸足で過ごす場所はこまめに拭き掃除をする。
  • 不特定多数の人が使う浴場・脱衣場などを使用した後は、菌が付着していても感染が成立するとされる24〜48時間以内に足を洗ったり拭いたりすることが大切です。
  • 入浴時に角質を削り取る軽石などを使用しないこと。傷んだミカンにカビが生えるのと同じように、角質に傷がつくと感染のリスクが高まります。特に他人との共有、公衆浴場での貸し借りなどは絶対に避けるべきです。

水虫を完治するためには、専門医の正しい診断のもとで適切な治療を続けていくことが一番大切です。抗真菌薬は医師の指示にしたがって一定期間使っていただかなければ十分な効果が得られません。内服薬の場合には定期的な血液検査も必要ですし、問診時にはくわしくお話を聞いて、他にどんなお薬を服用されているかを確認します。

何か問題があった場合には自己判断で治療を中断したり他の病院に行くのではなく、必ずその医師にもう一度相談するようにしてください。私たちのところにも、他の病院で治らなかったという患者さんが来られますが、その先生に相談すれば、次の治療法を考えてくださるはずです。

もしどうしても治らなくて他の病院にかかりたいという場合には、必ず紹介状を書いてもらうようにしましょう。紹介状を書いてくださいといって断られるようなことはありませんので、ぜひ紹介状を持って受診してください。

 

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  • 帝京大学ちば総合医療センター 皮膚科 教授、慶應義塾大学 非常勤講師

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