インタビュー

無痛分娩を受ける施設はどうやって選べばよい? 

無痛分娩を受ける施設はどうやって選べばよい? 
角倉 弘行 先生

順天堂大学  麻酔科学・ペインクリニック講座 教授(産科麻酔担当)

角倉 弘行 先生

この記事の最終更新は2016年03月24日です。

無痛分娩は海外の国々に比べて日本では十分に普及していないことを記事1『順天堂医院で無痛分娩が増えている理由』でお話ししましたが、日本でもようやく普及の兆しが見えています。特に「24時間いつでも快適で安心できる分娩」を目標に掲げている順天堂大学医学部附属順天堂医院(以下:順天堂医院)では、無痛分娩の件数も割合も急速に増えていることを紹介しました。

(詳細は記事1『順天堂医院で無痛分娩が増えている理由』および2『順天堂医院が24時間体制の無痛分娩を始めたわけとは』を参照してください)

しかし、順天堂医院のように24時間体制で産科病棟に麻酔科医が配置され、無痛分娩や緊急帝王切開に対応している病院は、日本ではまだ少数派です。無痛分娩を受ける施設はどうやって選べばよいでしょうか。現状を改善するためのアドバイスを含めて順天堂大学麻酔科・ペインクリニック教授(産科麻酔担当)の角倉弘行先生にお話しいただきました。

まず日本産科麻酔学会のwebサイトで無痛分娩を行っている施設を調べてみてください。次に、近くの病院のホームページにアクセスしてその病院が公表している情報をしっかりと確認します(※webサイトでの非公式の評判は偏向していたり、操作されていたりすることもあるので公式な情報を参照しましょう)。

実際にそこで出産した方からの生の情報も参考になります。そして最終的には、病院を受診して産科の先生に直接相談するのが良いでしょう。

基本的な質問としては、無痛分娩の件数や割合などがあります。無痛分娩の費用も事前に確認しておくべきでしょう。さらに以下の質問も参考になると考えられます。

・自然の陣痛の後にも対応してもらえるのかどうか

・無痛分娩は誰(麻酔科医なのか産科医なのか)が対応するのか

・緊急帝王切開はいつでも対応してもらえるのか

・そのときの麻酔は誰(麻酔科医なのか産科医なのか)が対応するのか

ご自分が疑問に感じていることを素直に聞いてみてください。それに対して、真摯に答えてくれる先生であれば、安心して無痛分娩を受けられると思います。

上記のような質問に対して、日本で「24時間いつでも、麻酔科医が無痛分娩にも緊急の帝王切開にも対応します」と答えられる施設はまだ少数です。近くの施設がこれに対応できないからといって無痛分娩を諦める必要はありません。

これらの質問に対して、産科の先生が誠実に質問に答えてくださるのであれば、先生を信頼し、無痛分娩を選択してよいと思います。そうではない場合には、その施設での無痛分娩は再検討したほうがよいかもしれません。

今後、日本で無痛分娩を普及させるためには、無痛分娩の安全性を担保していく必要があります。そのためには出産に臨む女性のひとりひとりが、「快適で安心できる分娩」を提供してくれる施設を選ぶ必要があるでしょう。このようなニーズが高まれば、日本でも、24時間体制で無痛分娩・緊急の帝王切開ともに麻酔科医が対応できる病院が増えていくものと期待しています。

 

参考書籍:『順天堂式無痛分娩 Q&A50』竹田省監修 執筆:板倉敦夫(産婦人科)、角倉弘行(麻酔科)、星子英子(助産師)

 

  • 順天堂大学  麻酔科学・ペインクリニック講座 教授(産科麻酔担当)

    日本麻酔科学会 麻酔科指導医日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医

    角倉 弘行 先生

    防衛医科大学校を卒業後、国立成育医療センターを経て、順天堂大学麻酔科学・ペインクリニック講座教授(産科麻酔担当)。24時間体制の無痛分娩という、これまでに実現できなかった新しい分娩体制を築き上げた実績を持つ。「全国各地の妊婦さんが安心してお産に迎えるような仕組みを作りたい」というモットーを持ち、産科医・麻酔科医・助産師はもちろん、国や自治体にも強く働きかけている。

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