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漢方薬のよくある疑問・誤解

  • #漢方
  • インタビュー
  • 公開日:2016/04/28
  • 更新日:2016/04/28
漢方薬のよくある疑問・誤解

漢方薬は西洋の薬と違って体に優しく副作用がない―そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。漢方薬にまつわる俗説には、必ずしも正しいとはいえない部分や誤解もあるようです。漢方の基本的な考え方や漢方薬に関するよくある疑問について、千葉大学医学部附属病院診療教授・和漢診療科長の並木隆雄先生にお話をうかがいました。

漢方の処方における「証(しょう)」とは

漢方の考え方では、その方の本来の健康状態が崩れてしまったり、ずれてしまったりしている状態を補正し、理想的な健康状態にする薬は何かということを考えて処方します。

したがって特定の病気に対する薬ではなく、今、体全体で出ているさまざまな症状を統合したものに対して、何が必要かということに基づき薬を出しているのです。漢方の言葉ではこれを証(しょう)といいます。この「証」に合わせて処方を出すというのが漢方のやり方です。

漢方薬のエビデンス

西洋医学の考え方と同じように、ある病気に対して効果があるかどうかという面で、その有効性を証明できる漢方薬もいくつかあります。このようなものはエビデンス(科学的根拠)があるといえます。ただしそれだけでは先ほど述べたような漢方の特徴を証明するということが難しいので、本来の漢方的な使い方での有効性については、現在の科学的な処方における限界もあるということになります。

漢方薬は副作用がない?

漢方薬にも副作用はあります。

古代中国でどういう人が漢方薬を飲んでいたかを考えると、おそらくお金持ちや皇帝などであったと想像されます。つまりごく限られた人だけが使い、それもあまり長期間服用することはなかったと考えられるのです。

それに対して現在は漢方薬が保険適用になっていることもあり、多くの方に、それも長期間にわたって服用していただくことになります。そうするとやはりある一定の確率で、いわゆる副作用的な問題が起こります。

もっともよく知られているものでは甘草(かんぞう)で生じる偽アルドステロン症という副作用があります。具体的には血圧が上昇して手足がむくみ、血液検査の値でカリウムが下がるといったことが起こる可能性があります。すべてが揃って起こるわけではありませんが、このうち2つが当てはまるような方はある確率で出てきます。

したがって、漫然と長期間服用した場合には、やはり漢方薬でも副作用はあるのだということだけはぜひ認識していただきたいと考えます。

漢方薬は効き方が穏やかというのは本当?

よく漢方薬は穏やかに効くといわれますが、これには少し誤解があります。

漢方薬にはわかりやすく言うと「風邪薬」というものがあります。鼻水・せき・喉の痛みなど、いわゆる風邪様の症状があるときに飲む薬です。そういった薬は体質ときちんと合っていれば一服(粉薬1回分)ないし二服(粉薬2回分)で風邪の症状が治ります。つまり即効性があるということです。

発症してからの期間が長くないとき、たとえばこの場合には風邪の初期症状ということになりますが、そういったときには漢方薬も西洋医学の薬と同じように即効性があります。それに対して、漢方薬を服用する状況としてもうひとつ考えられるのは慢性疾患に使われる場合です。

慢性疾患は長年かかってできた病気ですから、治すのも当然、一服や二服、あるいは一週間といった短期間の服用では難しくなります。それは西洋薬でも同じことで、慢性疾患を薬で治すにはやはり時間がかかります。漢方薬についてはこれらの2点において、少し誤解が生じているように感じます。

よく知られている風邪薬のひとつに葛根湯(かっこんとう)という薬があります。これは体質に合っている方であれば風邪のひきはじめに服用することで即効性が期待できます。葛根湯は肩の僧帽筋(そうぼうきん)周囲の血流を増やす作用があり、それによって風邪の症状を緩和するのですが、風邪だけでなく肩こりにも効果があります。一時的なものかもしれませんが、服用するとすぐに肩こりが改善するという方もいらっしゃいますので、風邪以外でも即効性のある薬のひとつです。

並木 隆雄

並木 隆雄先生

千葉大学医学部附属病院 和漢診療科 科長(診療教授)

現代医学と漢方医学を組み合わせることにより、それぞれの長所を伸ばし短所を補うことで、新しい時代の「個の医療」を目指している。診断は漢方的な診断と西洋医学の診断を併せて行い、治療は漢方薬を中心に、必要に応じて西洋医学の治療法を併用するというアプローチで診療にあたっている。2012年より、院内レストラン「ヴァンセーヌ」において岡部栄シェフとの共同開発にて医食同源メニューを提供している。

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