インタビュー

いかにして看護師のキャリアをサポートするか-東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部の取り組み

いかにして看護師のキャリアをサポートするか-東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部の取り組み
鈴木 たまえ さん

東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部 看護部長

鈴木 たまえ さん

この記事の最終更新は2017年08月20日です。

患者さんにとって、身近な看護師は非常に重要な存在なのではないでしょうか。看護師に優しく親切にケアを受けることができれば、患者さんにとって、それは大きな励みになります。

東京ベイ・浦安市川医療センターの看護師は、日々思いやりのあるあたたかい看護を実践しています。それは、風通しがよく意見しやすい風土とともに、看護師として成長し続けられる環境があるからかもしれません。

今回は、同医療センターの鈴木 たまえ看護部長に、同医療センターの看護部の特徴や取り組みについてお話いただきました。

私たち東京ベイ・浦安市川医療センターは、主に緊急の治療を要する高度急性期病床を有する急性期病院です。患者さんには、周辺の千葉県市川市と浦安市、東京都江戸川区の住民の方が多くいらっしゃいます。

元々は、千葉県浦安市と市川市を経営母体とする公立病院でしたが、2009年に民営化され、公益社団法人地域医療振興協会のグループの仲間入りをしました。

民営化以前から地域医療の中核病院としての役割を果たしていましたが、民営化されたときに病院の取り組みが経営面もふくめ180度変化し、さらに質の高い医療サービスを提供できるようになりました。

写真提供:東京ベイ・浦安市川医療センター

2012年には新病院がオープンし、それに伴い様々なキャリアを持つスタッフが集まり切磋琢磨しながら、よりよい医療を提供するためともに取り組んできました。

今リーダーシップをとって活躍してくれている看護師も、この新病院オープンに伴い入職してくれたスタッフが多くを占めます。

看護師の平均年齢は、32歳です(2017年3月現在)。これは他の病院と比較しても、非常に若いです。平均年齢が若いことに一長一短はありますが、若さとは大きなエネルギーであり、我々病院の大きな財産だと考えています。

実際、私たちの病院の看護部には、「こういう看護がしたい」とか「こんな看護師になりたい」という夢を持つ看護師が揃っている点が大きな特徴でしょう。

また、オープンしたての病院に入るということもあり、未知数のものにかけてみたいというチャレンジ精神が旺盛な看護師が集まっているのではないでしょか。

皆、共通して、新しいことをしてみたいという強い想いがある看護師ばかりです。特に、病院がオープンした当初の採用面接で必ず伝えていたのは、自分が望む仕組みがなければ、自分で作るような気持ちを持って働いて欲しいということでした。

私は、自ら作りあげる喜びを感じることができなければ、そもそも私たちの病院にいる意味がないとさえ思っています。大変なことも多いでしょうが、スタッフは苦労を楽しみに変えていくことに価値を感じてくれているのではないでしょうか。

当院の看護部には、「地域の人々のライフサポーターとしての使命を果たします」という看護理念があります。

ここには、地域住民のために、生まれてから亡くなるまでの長い人生の中で、それぞれのライフステージに寄り添う看護をしたいという想いが込められています。

写真提供:東京ベイ・浦安市川医療センター

私たちの看護部の大きな特徴は、何よりも風通しがよく垣根が低い点であると考えています。先ほどお話したように、私たちの病院は、民営化されてからあまり経っていないまだ新しい病院です。そのため、凝り固まった管理職はおらず、縦社会のようなものがありません。

特に、民営化された当初は、看護師長や主任、スタッフに至るまで、一緒に話し合い問題を解決しなければならない場面が非常にたくさんありました。そのような歴史もあり、現在でも年齢やキャリアに関わらず意見を言いやすい風土ができています。

また、スタッフがやりたいと望むことに関しては、できる範囲で支援します。行動を制限するようなことはありません。看護部全体として、本人の意志や行動を尊重するようにしています。

看護師は、高い技術を必要とする専門職であり、一生涯学び続けなければならない職業です。そのため、学び続けることができる仕組みづくりにも工夫をしています。

写真提供:東京ベイ・浦安市川医療センター

看護の実践能力には個々人により開きがあります。そのため、まずはどれくらいの実力があるかを把握する必要がありますが、私たちの病院では看護師を育成するクリニカルラダーシステムを導入し、看護師のレベルの把握や目指すキャリアの支援をしています。まだ導入して4年ほどですが、中堅の看護師や管理職にも対応できるように、研修の幅を増やしているところです。

看護師のキャリアアップには、まず自分のレベルを認識することが重要になります。そのため、上司と本人が協議をし、自分はどれくらいのレベルからスタートし、どうステップアップしていくか話し合う場を設けています。

もちろん人事考課制度もきちんとあり、人事考課の面接が上半期と下半期にそれぞれ1回ずつあります。また、それ以外であっても師長が個別にスタッフの話を聞くようにしています。

一般的に、看護師の中には、うまくキャリアデザインを描くことができず離職してしまう者も少なくありません。そのような事態を防ぐためにも、コミュニケーションを密にとるようにしています。

私たちは、看護師のキャリアアップを積極的に支援します。たとえば、認定看護師の資格を取得したい者には、奨学金制度もあります。また、大学院に通いたいと希望するスタッフが昼間は学校に通うことができるよう、夜勤専従にすることもあります。

非常勤待遇で時間があるときに働いてもらうことも可能です。病院全体にスタッフのキャリアップを応援する風土がありますので、さらなるスキルアップを希望する方は、諦めずに目指して欲しいと思っています。

キャリアの話と関係しているのでお話したいのですが、私たちの病院には、医療的介入が可能になる診療看護師が7名ほどすでに活躍しております。

また、母体である地域医療振興協会が、看護師の特定行為研修のための研修センターを立ち上げ、特定行為の研修制度が始まり、当院が実習病院になっています。

将来特定行為の研修を受けたいという方には、目指すロールモデルがいるため特によい環境ではないでしょうか。

最近では、看護師の復職支援にも力を入れています。資格は持っているけれど看護師として勤務していない潜在ナースは、全国で70万人ほどいると言われています。その潜在ナースの復職支援を近年始めました。

具体的には、浦安駅前にシミュレーションセンターを設けており、そこでの技術訓練と病棟体験を主催しています。まだ始めたばかりの取り組みではありますが、訓練を終えた方のうち、既に数名が私たちの病院に入職してくれました。

写真提供:東京ベイ・浦安市川医療センター

このように、私たちは復職に迷う潜在ナースにも広く門戸を開いています。看護に携わっていない期間があるため技術面に不安があるかもしれませんが、人間的には成熟しているはずです。

それはいい看護につながる非常に重要な要素であると私たちは考えておりますので、訓練を受け、私たちの病院で活躍してくれることを期待しています。

 

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