記事1『いかにして看護師のキャリアをサポートするか-東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部の取り組み』では、東京ベイ・浦安市川医療センターの看護部の特徴や取り組みをお話しいただきました。垣根が低く意見しやすい環境の中で、エネルギーとチャレンジ精神にあふれた看護師が揃う同医療センターの看護部。
鈴木 たまえ看護部長は、「忙しさを楽しめる方と一緒に働きたい」とおっしゃいます。また、都会のみならず地方の医療にも興味を持てる方が望ましいとお話くださいました。それはなぜなのでしょうか。
引き続き、東京ベイ・浦安市川医療センターの鈴木 たまえ看護部長に同医療センターの看護部の取り組みや求める人材についてお話いただきました。
記事1『いかにして看護師のキャリアをサポートするか-東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部の取り組み』でお話しましたが、私たちは公益社団法人地域医療振興協会の病院の1つです。同協会は、医師不足を始め医療に困っている地域を支援することを目指し設立されました。
現在では病院・診療所・老人保健施設など全国72のネットワークをもち、相互にスタッフの支援をしています。これは、回復期の病院で学びたいという者やパートナーの転勤に伴った異動にも対応することができ、非常にメリットの大きな制度であると思います。
私たちの病院からも本人の希望に基づき地方の病院へ看護師を派遣してきました。たとえば、現在、私たちの病院からは沖縄県の公立久米島病院へ2名看護師を派遣しています。
突然希望していない地域に派遣されることを危惧される方もいるかもしれませんが、本人の希望はほぼ100%通します。
たとえば、その地方で働きたくない看護師を無理やり行かせるようなことはありません。これは、あくまで本人の希望に基づき、希望する場所へ看護師を派遣する制度です。
このような制度があることで、私たちの病院は、都会でも地方でも働ける看護師を育成することができます。技術的な部分にのみ注目すると、設備が整ったこの病院を出たら学ぶものはないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
たとえば、医療が不足している僻地では、設備が整っていない場所で医療を提供する工夫を学ぶことができます。また、地元に溶け込む力も必要ですし、都会でのみ働いていたら得ることができなかった貴重な体験をすることができると思います。
また、公益社団法人地域医療振興協会は海外研修も主催しています。アメリカのペンシルベニア州・フィラデルフィアにあるトーマスジェファーソン大学と教育の提携をしており、看護師に対しては、年に2回ほど一週間のコースを実施しています。
現地では、医療安全や感染管理・看護管理など様々なコースが用意されています。レベルの高い講師陣が集まっていますし、貴重な機会になるのではないでしょうか。
参加は英語力をはかるTOEICを1つの基準にしていますが、だいたい看護師として10年前後のキャリアがある者を中心に参加させてもいます。皆、アメリカのナースたちに刺激を受け、大変満足して研修から戻ってきますので、、ある程度キャリアを積んだときに、志の高い方にぜひ参加してほしいと思っています。
私たちは、病院内の交流にも力を入れています。たとえば、看護部において主任以上に昇格する場合は必ず他の部署を体験することを必須としています。
これまでに様々な病院でキャリアを積んできたスタッフであっても、隣の病棟が何をやっているのか意外と知らない事が多いのが現状です。
そのため、昇格の前には、病院内の相互理解のために1か月ほど他の病棟で働いてもらうようにしています。
また、スタッフに対しても、院内留学という取り組みを始めました。これは、2週間、自分が希望する部署で働くことができるものです。一か所に長く勤務することで、新しい世界に対して臆病になってしまうことがあります。
自分が知る範囲でしか活動できなくなってしまうことは、非常にもったいないことであると思います。まだ始めたばかりの取り組みではありますが、今後は多くのスタッフに体験してもらいたいと願っています。
私たち東京ベイ・浦安市川医療センターは、地域密着の急性期病院ということもあり、非常に忙しい病院だと思います。記事3『東京ベイ・浦安市川医療センター病院の看護師として-救急外来ではチームプレーを実現』と4『東京ベイ・浦安市川医療センター病院の看護師として-CCUでは患者さんの苦痛を軽減する工夫を』では、実際に私たちの病院の看護師が業務についてお話させていただいていますが、緊急の対応を求められる場面も多いでしょう。
その忙しさを楽しむことができ、さらに、強い好奇心とともに学び続けられる方と一緒に働きたいと思っています。
また、お話したように、私たちは公益社団法人地域医療振興協会の病院の1つです。そのため、全国での医師不足の問題を抱えた地域の医療活動に興味を持っていただけることも望んでいます。これは一見地味な活動であるかもしれません。ですが、日本の僻地で医療に困っている方々はまだまだたくさんいらっしゃることを知ってほしいですし、そのために協力してほしいと願っています。
私たち東京ベイ・浦安市川医療センターは、外から見ると敷居が高い病院と思われることがあります。オープンしたての急性期病院と言うこともあり、毎日のように救急車のサイレンが鳴っていますし、すごいことをやっていると思われがちです。
ですが、入職の時点で特別な技術は求めておらず、やる気のある方に広く門戸を開いています。お話してきたような私たちの病院や看護部の取り組みに興味を持っていただけるようであれば、ぜひ一緒に働きたいと考えています。
もしも「こんな看護師になりたい」という強い気持ちがあるなら、できる限り叶えてあげたいと思っていますし、看護部全体で積極的に支援します。
鈴木 たまえ さんの所属医療機関