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多発肝嚢胞症とは?原因や症状・病型ごとの治療法
多発性肝嚢胞(多発肝嚢胞症)は、肝臓に嚢胞(のうほう)という袋が発生し、嚢胞が大きくなることで腹部が膨れていく病気です。中年女性に比較的多く発症し、20年から30年という長い時間をかけて嚢胞が増...
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多発肝嚢胞症とは?原因や症状・病型ごとの治療法

公開日 2017 年 09 月 19 日 | 更新日 2017 年 12 月 04 日

多発肝嚢胞症とは?原因や症状・病型ごとの治療法
大河内 信弘 先生

筑波大学 消化器外科・臓器移植外科 教授

大河内 信弘 先生

多発性肝嚢胞(多発肝嚢胞症)は、肝臓に嚢胞(のうほう)という袋が発生し、嚢胞が大きくなることで腹部が膨れていく病気です。中年女性に比較的多く発症し、20年から30年という長い時間をかけて嚢胞が増殖増大していきます。今回は多発性肝嚢胞の症状や原因について筑波大学の大河内信弘先生にお話を伺いました。

この記事で書かれていること

  • 多発性肝嚢胞とは、肝臓の中に嚢胞という袋が発生・増加していく良性の疾患
  • 初期症状は腹部の張りや膨張、進行すると胃食道逆流や息切れ、栄養障害などの症状があらわれる
  • 進行状態によって3つの病型に分類され、それぞれに適した治療法を行う必要がある

多発性肝嚢胞とは?

肝臓

肝臓内に袋が発生・増加する良性疾患

多発性肝嚢胞とは、肝臓の中に嚢胞という袋が発生・増加していく良性の疾患です。嚢胞の増加に伴い肝臓が肥大し、腹部がどんどん大きくなります。肝機能障害や黄疸(おうだん)など目立った初期症状がないため、腹部の膨らみが顕著にならない限り、なかなか見つかりにくいのが特徴です。良性の疾患ではありますが、お腹が通常より数倍大きくなるため、仰向けで寝ることができない、普段着ている洋服が着られなくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

多発性肝嚢胞の原因

原因は不明。遺伝子異常などの可能性も

通常、人間の体に数個の嚢胞がみられることはよくあります。しかし、多発性肝嚢胞を患う患者さんの肝臓になぜこんなにも嚢胞が大量に発生するのか、そのメカニズムは現在もわかっていません。一般的には遺伝子の変化や、胆汁を出す胆管が発育過程で異常をきたしたことが原因と示唆されていますが、日本国内の患者さんの症例を見る限り、それだけでは説明がつかないことが多く、明確な原因は不明のままです。

多発性肝嚢胞になりやすい人とは?

患者さんは男女ともにいるものの出産を経験した40代以上の女性に多くみられる点が特徴です。小児や若い人には症状がみられないことが多いようです。

多発性肝嚢胞 男女別
大河内 信弘先生 ご提供

多発性肝嚢胞の症状

 

お腹を押さえた中年女性

腹部の張りや膨張が初期症状、進行すると胃食道逆流や息切れ、栄養障害が起きることも

患者さんが感じる初期症状は「少しお腹が張っている」という程度です。しかし嚢胞の増加に伴い、腹部がどんどん大きくなっていきます。20年から30年という長い時間をかけて嚢胞が増殖増大するため、若い人にはほとんど症状がみられません。肝機能自体も急激に悪くなるわけではないので、症状がかなり進んでから気づかれ、来院される患者さんがほとんどです。また、嚢胞が増大した場合、隣接する他の臓器を圧迫し腹部不快感や腹部膨満、胃食道逆流、息切れ、呼吸困難、腰痛・背部痛、栄養障害などの症状が出ることもあります。

多発性肝嚢胞の病型と治療法

多発性肝嚢胞 病型
大河内 信弘先生 ご提供

多発性肝嚢胞の進行状態は一般的にⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型と3つの病型に分類されます。 

嚢胞が増えることで正常な動きをする肝臓が小さくなり、肝機能に障害が出ます。嚢胞の数や大きさ、残っている正常な肝臓の割合からⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型に分類されます。

多発性肝嚢胞Ⅰ型の治療法―穿刺吸引(せんしきゅういん)

Ⅰ型のように、肝臓に発生した袋が少ない場合、嚢胞に針を刺して中の水を吸い出す「穿刺吸引」という治療法を用います。しかしこの治療法では再び水が溜まってしまうため、あまり効果が期待できません。また、無水アルコールやオルダミンを用いた「硬化療法」があり、効果的なこともあります。

多発性肝嚢胞Ⅱ型の治療法―開窓術と肝動脈塞栓療法(TAE)

症状が進行し、Ⅰ型よりも肝臓に嚢胞が増えてしまうⅡ型の状態では、腹腔鏡によって袋の一部を切除し、溜まった水を腹腔内に出し、腹腔から吸収させる「開窓術」を行います。また、嚢胞栄養していると思われる動脈を詰める「肝動脈塞栓療法(TAE)」という治療法も効果が認められることがあります。

多発性肝嚢胞Ⅱ型の治療法

筑波大学附属病院では、症状がⅢ型に進行し、お腹が大きく膨らんでしまった患者さんを対象に、肝臓を切除する手術を行っています。正常な血管を傷つけないよう慎重に行うため、手術は長時間を要します。

Ⅲ型の治療法 肝移植

さらに嚢胞が増えたⅢ型では、上記の治療を行うことができないために肝臓そのものと取り換える肝移植を行います。腎不全を合併していることもあるため、時には肝腎同時移植を行います。

多発性肝嚢胞に対する肝切除術

筑波大学附属病院のほかに多発性嚢胞の治療を多く実施している医療機関が複数あります。

近畿大学医学部附属病院消化器内科 工藤 正俊教授は、主に嚢胞が多い患者さんを対象に、オレイン酸エタノールアミン(*タンパク質を固めるもの)を用いた治療を行っています。

また、虎ノ門の腎臓内科に勤務されている乳原善文先生は肝動脈塞栓療法を実施しています。

笑顔の中年女性

術後の生活の質の向上を期待できる

術後は変化が大きい方だと、体重が4〜5キロ程度減る患者さんもいらっしゃいます。1か月程度の入院が必要です。

肝機能を守るため、手術で切除できる肝臓には限界があります。そのため、術後も肝臓が通常の大きさに戻ることはありませんが、切除後は肝臓に発生した袋がそれ以上巨大化しない、言いかえると進行がゆるやかになる患者さんがほとんどです。何よりも食後すぐにお腹が張る症状がなくなったり、好きな服を着られるようになったりと、生活の質が向上します。

まずは専門医がいる医療機関の受診を

大河内先生

治療がうまくいく患者さんは皆さんが早期治療に取り組んでいます。多発性肝嚢胞を疑ったら、早めに専門医のいる病院に行きましょう。治療の選択方法は嚢胞の状態により治療表が異なります。症状が進行する前に受診することが大切です。

 

日本の消化器外科の第一人者。特に肝胆膵外科、生体肝移植を専門としており、多数の手術を手掛けている。研究業績も多数あり、IFは2017年現在600を超える。後進の育成にも定評があり、毎年多数の研修医が集まる。