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インタビュー

筋強直性ジストロフィーの検査、合併症に対する治療(対症療法)

筋強直性ジストロフィーの検査、合併症に対する治療(対症療法)
中森 雅之 先生

大阪大学大学院医学系研究科神経内科学 医学部講師

中森 雅之 先生

筋強直性ジストロフィーは10万人に7名が発症する遺伝性の筋疾患で、国の指定難病に設定されています。現状、筋強直性ジストロフィーに対する根治療法はありませんが、あらゆるアプローチで治療法の研究が進められています。筋強直性ジストロフィーの検査や治療について、大阪大学大学院医学系研究科 神経内科学の中森雅之先生にお話を伺いました。

筋強直性ジストロフィーには、記事1『筋強直性ジストロフィーとは? 4つの分類と原因、特徴的な症状について』でご説明したようにあらゆる症状があります。斧様顔貌(おのようがんぼう)と呼ばれる外見的特徴や、筋力低下、若年の白内障などの症状があれば、専門の医師が筋強直性ジストロフィーと予測することはできます。しかしながら診断を明白にするためには、筋電図検査(筋肉・神経の電気的活動を記録する検査)などを行い、さらに確定診断では血液を採取し、遺伝子検査を行います。

筋強直性ジストロフィーの患者さんが子どもを授かった場合、その遺伝を受け継ぐ可能性は50%です。遺伝子検査の実施については、主治医と十分に相談して行うことが大切です。筋強直性ジストロフィーは、記事1『筋強直性ジストロフィーとは? 4つの分類と原因、特徴的な症状について』でご説明したように、先天型は特に重症化しやすい疾患であり、筋強直性ジストロフィーと診断されたお母さんからその遺伝を受け継いだお子様は先天型となりやすいとされています。両親のどちらかが筋強直性ジストロフィーと診断された場合、子どもの出生前診断を希望される場合もありますが、もし出生前診断で生まれてくる子どもが筋強直性ジストロフィーと診断されたときには、ご両親はさらに重い決断を迫られます。

筋強直性ジストロフィーの患者さんで出産予定のある方は、「妊娠をしたら出生前診断をするのか」など、子どもに関する大切な決定事項について、家族や主治医、場合によっては遺伝カウンセリングで十分に話し合っておくことが重要です。

女性と赤ちゃん

筋強直性ジストロフィーには現状、確立された根治療法はありません。記事1『筋強直性ジストロフィーとは? 4つの分類と原因、特徴的な症状について』でお話ししたように、筋強直性ジストロフィーは全身にさまざまな合併症があらわれるため、それぞれの症状に応じた対症療法を行います。

心臓の合併症は、放置すると急激な症状悪化を期に致死性不整脈に陥り、患者さんが死亡するケースも起こりえるため、重点的に治療する必要があります。心臓の合併症があり、ある一定以上の進行がみられる場合には、ペースメーカーや埋め込み型除細動器(致死性不整脈を防ぎ心臓の機能を回復する器具)によって事前に対処します。

筋強直性ジストロフィーは、年単位で徐々に筋力が低下していきます。足首を上げる筋肉が衰えるとつまずきやすくなるため、筋力低下の症状が進行した場合には、病状に合わせた装具を用いて歩行機能を補助します。また患者さんが寝たきりになった場合には、関節の拘縮(固くなり動かなくなる)を予防するために、他動的に関節をゆっくりと動かす訓練を行います。ほかにも呼吸筋の筋力低下による呼吸障害や夜間の無呼吸に対して、マスクを介して人工的に補助換気をおこなうNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の導入も重要です。

装具

先述のように、現状では筋強直性ジストロフィーには根治療法がありません。しかし症状の悪化を調べ、できる限りの対症療法を行うために、定期的な通院をしましょう。なかでも、急激に悪化して致死性不整脈を引き起こす心臓の合併症や、死亡リスクのある誤嚥性肺炎などには特に注意が必要です。他にもNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の時宜にかなった導入や糖尿病の管理も重要となってきます。

また記事1『筋強直性ジストロフィーとは? 4つの分類と原因、特徴的な症状について』でお話ししたように、筋強直性ジストロフィーの患者さんは過眠症を発症することがありますが、患者さん本人は睡眠時無呼吸症候群に気付けないため、家族など周りの方々が異変に気付ける環境が大切です。

筋強直性ジストロフィーには今はまだ根治療法がありませんが、近年の研究でその原因は解明されつつあります。そのなかで、筋強直性ジストロフィーの原因となる異常RNAをターゲットとした治療研究も進められています。

  1. 人工核酸医薬によるアプローチ

DNAとRNAを構成する核酸を人工的につくりだし、その核酸医薬によって異常RNAを分解する方法です。この方法は2017年現在アメリカで開発が進められており、今後の展開が期待されています。

  1. 低分子化合物によるアプローチ

低分子化合物(いわゆる薬剤)で、重要なスプライシングを制御するタンパク質の吸着を制限する方法です。こちらは大阪大学医学部でも有効性のあるものが発見されており、2017年現在、治験の準備を進めている段階です。

中森雅之先生

大阪大学では、筋強直性ジストロフィーの研究を進めています。まだ解明されていない筋肉や心臓、脳の合併症に直接かかわるスプライシング異常について研究し、そのメカニズムを明らかにしたいと考えています。

我々は筋強直性ジストロフィーに根治療法がない現状を打破することを目標に、海外の研究者と協力し、今後も治療薬の研究を積極的に進めていきます。そのなかで、新薬の研究はもちろんですが、他疾患の治療に用いられている既存薬を活用する研究(ドラッグ・リポジショニング:既存薬再開発)を進めており、有効なアプローチも発見されつつあります。既存薬再開発の場合には、薬事承認も早くおりる可能性があります。我々は今後も積極的に研究・開発を進め、1日でも早く筋強直性ジストロフィーの患者さんを治療できる薬剤を開発したいと考えています。

 

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