
指定難病のひとつである低ホスファターゼ症は、アルカリホスファターゼという酵素が少ないために骨にカルシウムが定着しにくく、骨が弱くなる病気です。
今回は、低ホスファターゼ症の分類と症状について大阪大学大学院医学系研究科小児科学講座教授の大薗恵一先生に詳しくお話を伺いました。
低ホスファターゼ症は、アルカリホスファターゼという骨の形成に必要な酵素が遺伝により少ないため、骨にカルシウムが定着せず骨が弱くなったり乳歯が早く抜けたりする病気です。
日本において重症型は、15万人に1人ほどで、乳児型や小児型など軽いタイプも含めると、全体的には、5万人に1人ほどだと考えられます。(Ozono K J Hum Genet 2011)
男女差や地域差はなく、日本各地から報告されています。
症状は、患者さんによって軽度から重度まで幅が大きく、発症した年齢により、
以下の6つの病型に分けられます。
周産期型の重症のタイプは、妊婦への超音波検査でわかります。生後自分で呼吸ができないなど特に最重症の場合、妊娠20週頃からわかる場合がありますし、出生後、レントゲン検査を行っても骨が殆ど見えない場合があります。妊娠中後期での、羊水過多や胎児成長不全、出生後の骨石灰化不良で見つかる場合もあります。けいれんがみられることもあります。
周産期型の軽症タイプでは、骨の石灰化不良はほとんどなく、骨の変形のみがみられます。呼吸障害もありません。従って、周産期発症例がすべて重症であると判定しないことは重要です。
周産期重症型の主な症状には、以下があります。
アルカリホスファターゼは、ビタミンB6の代謝にも関わっています。そのため、ビタミンB6の代謝障害によってけいれんが起こった場合にビタミンB6を補います。
乳児型では、1か月検診や3か月検診で、体重増加不良などで見つかる場合があります。哺乳不良や機嫌不良を、母親が訴えることもあります。また、風邪などで、呼吸状態が悪くなる場合もあります。大泉門は大きく開いていることが多いですが、頭囲が大きくなりにくいこともあります。
乳児型の主な症状には、以下があります。
低ホスファターゼ症の症状は、全身のどの骨にでも出ますが、頭蓋骨に異常が生じた場合、頭蓋骨縫合早期癒合症という合併症が起こります。
赤ちゃんの頭蓋骨は複数の骨に分かれており、その骨と骨のつなぎ目を縫合と呼びます。通常は、脳の成長につれ頭蓋骨の縫合部分も広がり、骨が大きく成長し、大人になるにつれ縫合部分がくっつくことで頭蓋骨の全体ができます。
しかし、頭蓋骨縫合早期癒合症の場合、縫合部分が早期につながってしまうため、頭が大きくなりません。そのため頭蓋骨の中に入っている脳が圧迫され、発達が遅れたり、脳圧亢進症状が出たりすることがあるのです。
カルシウムは骨に使われることでバランスを取るため、低ホスファターゼ症の場合、骨にならない分のカルシウムが血中に溢れてしまい、高カルシウム血症になります。
正常だと血中カルシウム濃度は、9〜10mg/dlの狭い範囲に厳密にコントロールされています。しかし、高カルシウム血症の場合、カルシウムの値が11〜12 mg/dlになります。高カルシウム血症が持続するときには、母乳にはカルシウムが多く含有しているため、栄養を取る際はカルシウム含量の少ない「低カルシウムミルク」を使用して血中カルシウムのバランスをとります。
1〜2歳になると、骨が曲がっている、歩き方がおかしいという症状などで見つかることが多いです。通常1〜2歳はよちよち歩きですが、足と足の開いている幅が大きい、右左の体重移動が激しい(アヒル歩行)、膝と膝の開きが大きいなど違和感のある歩き方になります。
運動を多くするようになると、骨・関節の痛みや、筋肉痛を訴えることもあります。筋力が強くないことも認められます。
また、身長の伸びが悪い場合もあります。
「くる病」というビタミンDの不足で起こる病気に似たレントゲン像になりますが、低ホスファターゼ症の場合、血液検査をするとアルカリホスファターゼの量が明らかに少ない点が特徴です。
また、乳歯が5歳まで(4歳以下)にぬけてしまうという、乳歯早期脱落がみられることもあります。
小児型の主な症状には、以下があります。
通常は小学校に上がる頃に乳歯が抜けますが、小児型の場合、4歳以下で乳歯が抜けてしまいます。低ホスファターゼ症では、歯の根っこと顎の骨の間が弱いために、上図のように歯根ごと歯が抜け落ちてしまう特徴があります。
そのため4歳以下で乳歯が抜けた場合、抜けた歯をもって歯医者に行く必要があります。乳歯が早期に抜けて、残った歯で咀嚼(そしゃく)し続けるとさらに歯が抜けてしまうため、義歯を作ります。義歯を入れることで、噛むときに歯に力が均等に分散するようになります。
このように歯に異常がある場合は、小児科だけでなく歯科の先生にも継続してみてもらう必要があります。
永久歯への影響は、通常はないのですが、噛むときの力のかけ具合や、歯周病など他の要素があると、永久歯に全く影響がないとはいえません。歯と顎をつなぎとめる部分にもアルカリホスファターゼが必要であるため、まれに永久歯が抜けることがあります。
成人型の場合は、骨が痛み、運動がうまくできません。また、軽微な力で骨折しやすいです。症状が出る年齢は、患者さんによってさまざまです。骨粗鬆症という診断を受けておられる方もおられます。
成人型の主な症状には、以下があります。
骨には症状がなく、歯にのみ異常が出るタイプです。5歳までに乳歯が抜けてしまいます。
遺伝子の変異が低ホスファターゼ症の原因で、通常は常染色体劣性遺伝(両親とも原因遺伝子を持っているが発病しておらず、子どもは25%の確率で発病)です。しかし、重症度を決めるのは遺伝子変異だけなのか、その他の要因があるのか完全には確定していません。兄弟で重症度が異なることもあります。
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