ていほすふぁたーぜしょう

低ホスファターゼ症

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概要

低ホスファターゼ症とは、骨や歯の正常な形成を促す“アルカリホスファターゼ”と呼ばれる酵素に生まれつき異常があるため、骨や歯が弱くなる病気のことです。発症頻度としては、重症例は15万人に1人程度と非常に珍しい病気です。症状の現れ方は生まれて間もない頃から非常に重い症状が現れるケースがある一方、成人になって初めて症状が出現する軽症例は海外では6,000人に1人程度といわれています。     

低ホスファターゼ症は遺伝性の病気であり、骨の形成がうまくできなくなることから、骨の変形や骨折、低身長などの症状を引き起こします。また、重症例ではビタミンBの代謝異常によるけいれんが見られることもあります。そのほか、乳歯が3歳ごろまでに早期に抜け落ちる、順調に体重が増えないといった症状が見られることもあります。

これまでこの病気には根本的な治療法がありませんでしたが、2015年には不足したアルカリホスファターゼを補うことができる薬が日本でも承認され、高い効果が示されています。

原因

低ホスファターゼ症は、骨の形成に関与するアルカリホスファターゼと呼ばれる酵素の産生に生まれつき異常があることによって引き起こされます。

多くは、両親双方からアルカリホスファターゼの産生に関わる遺伝子の変異を受け継ぐことによって発症する遺伝性のものと考えられています。両親の片方からのみ遺伝子の変異を受け継いだ場合にも発症することが分かっていますが、このような場合には発症したとしてもほとんど症状が現れない、もしくは軽い症状しか現れないことが特徴です。

症状

低ホスファターゼ症を発症すると、骨や歯の形成がうまくできなくなるためO脚など骨の変形が起こりやすく、些細な刺激で骨折する、骨が痛む、身長が伸びないといった症状が引き起こされます。

症状の現れ方は年齢や重症度によって大きく異なります。重症なケースでは新生児期から骨格の変形が著しく、特に肋骨や胸骨などの骨の形成が悪い場合は呼吸に支障をきたしやすいため、出生直後から人工呼吸器を必要とすることなどもあります。

また、骨の形成に必要なカルシウムが利用されなくなる結果、血液中のカルシウム濃度が異常に上昇し、哺乳不足、腎結石などを生じることがあります。そのほか、乳歯が3歳までの早い段階で抜けることや、頭蓋骨の縫合(乳児期に見られる頭蓋骨を形成する骨と骨の隙間)が早期に閉じてしまうなど全身にさまざまな症状が現れます。また重症例ではビタミンBの代謝異常によると考えられるけいれんが見られることもあります。

一方で両親の片方からのみ遺伝子の変異を受け継いだ軽症例ではほとんど症状が現れないことも少なくありません。成人になってから足の甲や大腿、下腿にひびのような骨折(偽骨折)を特に誘因なく起こしてしまい、改善しにくいことや骨粗しょう症の治療薬である骨吸収を抑制する薬で逆に骨折を起こすなどで見つかることがあります。また健康診断などの血液検査でアルカリホスファターゼの値が低いことから偶然発見されることもあります。

検査・診断

低ホスファターゼ症が疑われるときは次のような検査が行われます。

画像検査

低ホスファターゼ症を発症すると骨の石灰化が低下して脆くなり、腕や足などの長い骨の先端部分がへこむ、骨端線(骨の中央部と端の間にある軟骨組織で骨の成長を担う部位)の毛羽立ちや拡大などの特徴的な症状が見られるようになります。

そのため、この病気が疑われるときは骨の状態を評価するため、脚の骨のX線検査が行われます。

血液検査

低ホスファターゼ症は、血液中のアルカリホスファターゼ濃度が低下することが特徴であり、この病気の診断にはアルカリホスファターゼ濃度を測定することが必須となります。ただし亜鉛欠乏症やマグネシウム欠乏症、甲状腺機能低下症やステロイドで治療中の人などでも血液中のアルカリホスファターゼが低下することがあるので注意が必要です。また、血液検査ではそのほかにもこの病気で起こりやすいカルシウムやリンなどの電解質の異常の有無を調べることも可能です。

尿検査

低ホスファターゼ症を発症すると、尿の中にアミノ酸の一種であるホスホエタノールアミンと呼ばれる物質が多く排出されるようになります。特殊な検査ですが、この病気を発見・診断するための優れた検査のひとつです。

遺伝子検査

最終的な低ホスファターゼ症の診断は、アルカリホスファターゼをコードするALPL遺伝子の検査で行われます。実際に低ホスファターゼ症の症状があり、上記にある血液検査や尿検査で低ホスファターゼ症が疑われる場合には、保険検査としてALPL遺伝子の検査が行えます。

治療

低ホスファターゼ症の中等症から重症の場合の根本的な治療は、体内で十分に産生されないアルカリホスファターゼを薬によって補う薬物療法で、週3~6回の自己注射を行います。2015年に日本で承認された低ホスファターゼ症治療薬はすでに多くの低ホスファターゼ症にかかっている人に効果を示しています。    

一方、低ホスファターゼ症治療薬がなかった時代には根本的な治療はなく、骨の痛みに対する鎮痛剤、呼吸困難に対する適正な呼吸管理など、それぞれの症状を改善するための対症療法しか行うことはできませんでした。現在は薬の普及により、これまで長く生きることができなかった重症なケースにも十分な治療効果が現れることが示されています。

 

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