インタビュー

筋肉や靭帯に骨化が起こる進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは?

筋肉や靭帯に骨化が起こる進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは?
芳賀 信彦 先生

国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) 自立支援局長

芳賀 信彦 先生

進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは、全身の筋肉や、筋肉を包む膜、腱や靭帯などが徐々に硬くなり、骨に変わる病気を指します。

主な症状である異所性骨化(本来骨ができない場所に骨ができること)によって筋肉や靭帯が硬くなると、手足の関節が動かしにくくなり、歩行障害などが現れます。

今回は、東京大学医学部附属病院の芳賀 信彦先生に、進行性骨化性線維異形成症の原因や症状についてお話しいただきました。

進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、全身の筋肉や、筋肉を包む膜、筋肉と骨を結びつける腱(けん)、関節を支える靭帯などが徐々に硬くなり、骨に変わる病気です。

骨に変わることによって筋肉や靭帯が硬くなると、手足の関節を動かしにくくなったり、背中が曲がったりするなどの症状が現れます。

進行性骨化性線維異形成症の患者さんは、足の親指が短く曲がっていることが多いです。

このような足の親指の変形は生まれつきですが、主な症状である異所性骨化(本来骨ができない場所に骨ができること)が始まるのは突然です。特に、乳児期から学童期(6〜12歳)にかけて異所性骨化が始まることが多いといわれています。

進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、患者さんによって重症度が異なります。

発症しても軽症な患者さんのなかには、健常者とほぼ同じような生活を送ることができる方もいます。一方、重症化する患者さんのなかには、骨化により歩行が困難になり車椅子で生活しなければならない方や寝たきりになる方もいます。

どのような要因によって重症度が決定するかはわかっておらず、研究が続けられています。

進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、ACVR1と呼ばれる遺伝子の一部に異常があることが原因となり発症することがわかっています。

提供:PIXTA

この遺伝子変異は、ACVR1遺伝子のなかで異常が発生する箇所(場所)によって、いくつかの種類にわけられます。しかし、多くの患者さんは、異常が発生する箇所が同じ遺伝子変異をもつことがわかっています。
なぜACVR1遺伝子に変異があると進行性骨化性線維異形成症を発症するかは完全には明らかになっておらず、研究が続けられています。

進行性骨化性線維異形成症は、常染色体劣勢遺伝(常染色体上の遺伝子によって子孫に伝えられる遺伝が決定される遺伝形式)と呼ばれる遺伝形式で遺伝することがわかっています。

しかし、実際に日本人の患者さんの多くは、遺伝とは関係なく突然変異で発症していると考えられます。つまり、両親には病気の原因となる遺伝子の異常がなく、生まれてきた患者さんのみに遺伝子の異常があり病気を発症するケースが多いといわれています。

進行性骨化性線維異形成症(FOP)の主な症状は異所性骨化です。異所性骨化とは、本来骨ができない場所に骨ができることを指します。進行性骨化性線維異形成症では、全身の筋肉や筋肉の周囲の膜、腱、靭帯など本来骨がない場所に骨がつくられる点が特徴です。

異所性骨化によって筋肉や靭帯が硬くなると、手足の関節が動かしにくくなる、背中が曲がるなどの症状が現れ、歩行障害などにつながることがあります。

進行性骨化性線維異形成症で骨化が起こるのは、主に背中や首、肩、手足の筋肉や腱、靭帯であり、心臓を含む内臓の筋肉が骨化することはありません。このため、骨化によって腸や心臓など、内臓が動かなくなることはありません。

しかし、主に呼吸をするときに使う胸部の肋間筋(ろっかんきん)が硬くなり動きが悪くなると、肺を膨らませることが難しくなり、肺活量の低下や呼吸の障害が起こることがあります。

また、骨化によって口を動かす筋肉の働きが悪くなると、食事をすることが困難になるケースもあります。

異所性骨化のほかには、髪の毛が薄くなる、耳が聞こえにくくなるなどの症状が現れる方もいます。また、足の親指だけではなく手の親指が短く曲がっている方もいます。

これらの症状はすべての患者さんに現れるわけではありませんが、一定の割合で現れる方がいることがわかっています。

主な症状である異所性骨化が起きる前には、フレア・アップと呼ばれる症状が現れます。フレア・アップは、皮膚の下が腫れ、こぶのようなものができる症状を指します。フレア・アップによって腫れた部分は、最初は柔らかいことが多く、徐々に硬くなり骨化していきます。さらに、触ると軽く熱をもち、痛みを伴うことが多いという特徴があります。

また、フレア・アップが起こる場所は、移動することがあります。最初は頭や首、背中が腫れたとしても、徐々に移動し、別の場所にフレア・アップが起こることがあります。

提供:PIXTA

フレア・アップは、怪我や手術がきっかけで起こることがあります。さらに、インフルエンザなどのウイルスの感染がフレア・アップを引き起こすこともあるといわれています。

このため、フレア・アップが起こる前に、親指の変形や遺伝子検査によって病気の診断を受けた患者さんは、できる限り手術や怪我を避ける必要があるでしょう。また、インフルエンザの予防接種を受けるなど、ウイルスに感染しない工夫も大切になります。

しかし、お話ししたようなきっかけがなく、突然フレア・アップが現れる患者さんもいます。何もきっかけがなく、気づいたら背中や腕が腫れているというケースも少なくありません。

フレア・アップになったからといって必ずしも骨化が生じるわけではありません。フレア・アップが起きたとしても骨化しないケースもあります。

2018年2月現在、どのようなときに骨化が起こり、どのようなときに骨化が起こらないかは、わかっていません。

記事2『進行性骨化性線維異形成症(FOP)の患者さんが注意すべきこととは?』では、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の診断と治療についてご解説いただきます。

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  • 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) 自立支援局長

    日本リハビリテーション医学会 リハビリテーション科専門医・リハビリテーション科指導医日本整形外科学会 整形外科専門医

    芳賀 信彦 先生

    リハビリテーション科の医師として、日常生活指導による障害の軽減や社会復帰の援助など、総合的な診療を行っている。2006年には東京大学リハビリテーション医学の教授に就任。主に運動器リハビリテーションや小児リハビリテーションを専門としている。

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