進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは、全身の筋肉や、筋肉を包む膜、腱や靭帯などが徐々に硬くなり、骨に変わる病気を指します。
この病気は、患者さんによって重症度が異なる点が特徴の一つです。軽症の方もいますが、重症化してしまう患者さんもいます。少しでも重症化を防ぐために患者さんはどのようなことに注意したほうがよいのでしょうか。
今回は、東京大学医学部附属病院の芳賀 信彦先生に、進行性骨化性線維異形成症の診断や治療、患者さんの注意点についてお話しいただきました。
進行性骨化性線維異形成症(FOP)の原因や症状については記事1『筋肉や靭帯に骨化が起こる進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは?』をご覧ください。
進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、足の親指の変形や異所性骨化などの症状から診断を行います。さらに、これらの症状の補助的な検査としてレントゲン撮影を行い、骨化などの症状を確認します。
また、確定診断(何の病気なのかを確定させる診断)のためには、遺伝子検査によって原因遺伝子であるACVR1の変異を確認することも有効です。
近年では、進行性骨化性線維異形成症が認知されるようになったため、足の親指が短く曲がっている時点で病気を疑い、遺伝子検査を受け診断を受ける患者さんも増えてきています。
異所性骨化が始まる前に、早期に病気の診断を受ける方が増えてきているといえるでしょう。
2018年2月現在、進行性骨化性線維異形成症(FOP)を根本的に改善する治療法は確立されていません。
進行性骨化性線維異形成症(FOP)の国際的な治療ガイドライン(その病気の診断方法や治療方法を定めた指針)では、症状を和らげる治療として、患者さんの症状にあわせて非ステロイド抗炎症薬やステロイド(炎症を抑えたり、免疫の働きを弱めたりする薬)を使用した治療法が推奨されています[注1]。
また、世界中で複数の臨床治験(新しい薬や治療法を開発するために、人で効果や安全性を調べる試験)が行われており、新たな治療法の開発が続けられています。
注1:IFOPA(2011).THE MEDICAL MANAGEMENT OF FIBRODYSPLASIA OSSIFICANS PROGRESSIVA: CURRENT TREATMENT CONSIDERATION.
進行性骨化性線維異形成症(FOP)は、患者さんによって重症度が異なります。
発症しても軽症な患者さんのなかには、健常者とほぼ同じような生活を送ることができる方もいます。一方、重症化する患者さんのなかには、骨化により歩行が困難になり車椅子で生活しなければならない方や寝たきりになる方もいます。
どのような要因によって重症度が決定するかはわかっておらず、研究が続けられています。
軽症の場合、30〜40歳代になると、病院を受診する必要もないほど症状が落ち着くケースもあります。症状が落ち着くとは、新たに骨化が起こる頻度が下がるということです。
しかし、なかには若くして亡くなる方もいます。この病気の患者さんは、骨化により動きが悪くなることが原因となり寿命が短くなる傾向にあります。たとえば、歩行障害や呼吸障害が現れた患者さんが最終的には亡くなってしまうケースがあるのです。
しかし、40〜60歳代で生存している患者さんもいます[注2]。中高年や高齢の方であると、施設と自宅の間を行き来しながら必要なサポートを受けるケースが多いです。
注2:Frederick S. Kaplan, Michael A. Zasloff, Joseph A. Kitterman, Eileen M. Shore, Charles C. Hong and David M. Rocke: Early Mortality and Cardiorespiratory Failure in Patients with Fibrodysplasia Ossificans Progressiva. J Bone Joint Surg Am: 686-691, 2010
最後に、少しでも重症化を防ぐために進行性骨化性線維異形成症(FOP)の患者さんが注意したほうがよいと思う点についてお話しします。
記事1『筋肉や靭帯に骨化が起こる進行性骨化性線維異形成症(FOP)とは?』でお話ししたように、怪我をするとフレア・アップ(異所性骨化の前に起きる症状であり、皮膚の下が腫れこぶのようなものができる)につながりやすく異所性骨化を起こしやすくなります。
患者さんが幼稚園や小学校に通っている場合には、どこまで活動に参加するのか相談する必要があるでしょう。たとえば、体育の授業にどこまで参加するのか、遠足には参加するのかなど、学校側とよく相談することが大切になるでしょう。
また、歩行が難しくなってきたときには、車椅子や杖、歩行をサポートする装具など、道具を用いて日常生活をいかに送れるようにするかが大切になります。
たとえば、できるだけ転ばないようにするために杖を使うことも有効でしょう。私たち医師も、どちらの手に杖を持ち、どのように使用していくのがよいかなど道具の使用についての指導を行っています。
進行性骨化性線維異形成症(FOP)の患者さんは、口を動かす筋肉の骨化によって、徐々に口が開きにくくなる開口障害が現れるケースが多くあります。口が開きにくい状態で、虫歯や歯周病ができてしまうと、治療はとても困難になり重症化につながってしまいます。
このため、虫歯や歯周病にならないようケアをすることが重要です。患者さんには歯科を受診してもらい歯の磨き方などの指導を受けてもらうことも多くあります。
口が開きにくくなってしまった場合には、特殊な歯ブラシなどの道具を用いてケアをすることも推奨しています [注3]。
注3:厚生労働省難治性疾患克服研究事業・進行性骨化性線維異
形成症研究班「FOP口腔ケアハンドブック」
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) 自立支援局長
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