膝前十字靭帯は、一度切れてしまうと自然に治ることはほぼありません。基本的に手術による治療を行います。スポーツ復帰をする場合は特に、手術後のリハビリをしっかり行うことが重要です。
今回は、膝前十字靭帯損傷の治療について神戸大学医学部整形外科の黒田良祐先生に詳しくお話を伺いました。
基本的に、手術が第一選択です。膝前十字靭帯が切れて膝が腫れて、痛みが徐々にひくと、治った感覚になります。しかし、1度切れた靭帯が自然につながることは、ほぼありません。そのため、放置しておくとスポーツに復帰できなくなります。
スポーツに復帰したい方です。しかし、スポーツをしないのであれば手術をしなくてよいという訳ではありません。
日常生活でも多少の急ブレーキや方向転換をすることがあります。靭帯が切れたまま何十年も過ごすと、膝が徐々にずれてしまうことや、摩耗してくることがあります。長い目で見ると、手術をして治したほうがよいといわれています。
「前十字靭帯再建術」という手術を内視鏡*で行います。
切れた靭帯を、縫いつなげることは困難です。そのため、患者さん自身の「ハムストリング」という太ももの内側にある腱をとり、切れたところに移植して、もともとあった前十字靭帯のように再建していきます。
前十字靭帯は、1本の靭帯ですが、細かく構造を見ると主に2つの繊維が絡み合うようにできています。それを再現するために、神戸大学医学部附属病院では2本の腱を使って靭帯を再建する「二重束再建術」という手術を行い、より解剖学的な構造の再現を目指しています。
手術時間は、病院や患者さんの状態によりばらつきはありますが、神戸大学医学部附属病院では、1時間〜1時間半程度で手術が終わります。(2018年2月現在)
内視鏡…体の内部を観察・治療する医療器具
膝前十字靭帯損傷をした方のうち約4割の方が、前十字靭帯の損傷と同時に半月板*1の損傷も合併しています(注)。半月板も損傷している場合、この前十字靭帯と共に半月板も手術で治しておかなければのちの膝の不安定感につながります。そのため、事前にMRI*2で半月板の損傷を合併していないか検査します。
1 半月板…大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある膝のクッションのような板。膝の曲げ伸ばしをスムーズする。
(注)「合併する関節内病変からみた膝前十字靭帯損傷のメカニズム」臨床スポーツ医学 第19巻 第9号:1021-1025,2002.
2 MRI…磁気を使い、体の断面を写す検査
入院期間は病院や患者さんの状態によって異なります。神戸大学医学部附属病院における平均入院日数は、18日です。(2018年2月現在)
怪我やその手術によって筋肉が衰えるため、筋力トレーニングをします。また、可動域訓練という膝を曲げ伸ばしする訓練で膝を曲げやすくします。
リハビリは、手術の翌日から行い、退院後も半年ほど行います。
膝前十字靭帯損傷の手術後は、階段の上り下りがしにくい、正座ができない等ありますが、日常生活で気をつけるべきことは、特にありません。
膝前十字靭帯損傷と診断された場合、スポーツ復帰しない予定であっても、長期的には、膝の機能がだんだん悪くなっていく可能性があります。自然に靭帯が治ることはほぼないため、基本的には手術で治すことをおすすめしています。
手術も大事ですが、本人の術後のリハビリも大事ということを認識していてほしいです。
きちんとリハビリをすれば、だいたい6か月ほどで練習に復帰できます。
その方次第のところもあり、しっかりリハビリをしなければ復帰はもっと長くなります。
また、早く復帰するためにリハビリを過度に頑張ると半年より早く復帰できるということはありません。怪我をして手術をして筋力が戻ってくるまでには、最低でも半年ほどはかかります。
医師、理学療法士、本人、場合によっては所属しているスポーツチームのトレーナーや監督など、互いにコミュニケーションをしっかりとって、みんなでチームとなって治していく体制があるのが理想です。
中学、高校、大学の活動だと監督はいるがトレーナーはいないなど、選手の怪我への体制環境が整っていないこともあります。その場合、復帰が早すぎた、膝以外の部分に負担がかかり怪我をしたなどの問題が起きることがあります。
本人と周囲の方がしっかりとコミュニケーションをとりながら、最終的に復帰していくことが大事です。
神戸大学 大学院医学研究科外科系講座整形外科学 教授
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