インタビュー

スポーツ整形外科からみた膝関節損傷

スポーツ整形外科からみた膝関節損傷
望月 義人 先生

浅草病院 整形外科 人工関節センター長

望月 義人 先生

この記事の最終更新は2015年10月31日です。

膝の関節はスポーツによる故障が非常に多い部分です。スポーツに詳しい方なら前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)断裂や半月板損傷という言葉を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。股関節・膝関節外科を専門とされ、スポーツ外傷の治療経験も豊富な武蔵野赤十字病院整形外科の望月義人先生に、膝関節のさまざまな損傷についてお話をうかがいました。

前十字靭帯は大腿骨と脛骨(すねの骨)をつないでいる靭帯です。急な方向転換や停止動作、ジャンプの着地や踏み切りの際に、外反位(つま先が外向きで膝が内側へ入る状態)で強い力が加わることによって靭帯が損傷します。

受傷直後は大量の出血や腫れ、強い痛みがあります。時間の経過とともに症状が落ち着いても、その後は膝関節の安定性が失われ、急に膝がガクッとなる「膝崩れ」という症状を繰り返すことで、二次的に半月板や関節軟骨の損傷を引き起こす原因にもなります。後々の影響が大きいため、受傷後に痛みが治まり運動に復帰できたとしても見逃すことができませんし、若年であれば手術を考えていかなければなりません。

前十字靭帯の受傷時には、同時に外側の半月板を損傷することが多く、その後、時間の経過とともに内側の半月板と靭帯も傷めることが多いようです。日本人の多くは、内側の膝関節変形症を起こしやすい膝の形態をしているので、それを助長することにもつながります。

診断は外傷性膝関節血腫の有無や徒手的検査(ラックマンテスト・前方引き出しテスト)、MRI(Magnetic Resonance Image:磁気共鳴画像)検査などによって行われます。

膝関節には前十字靭帯のほかにも後十字靭帯(こうじゅうじじんたい・PCL)、膝内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい・MCL)などがあり、これらを単独あるいは合わせて受傷する場合(複合靭帯損傷)があります。

  • 後十字靭帯(PCL)

すねを後ろに持っていかれたときや強打したとき、あるいは膝が伸びた状態で上から人が乗るなどして、膝を伸ばしすぎることによって受傷します。

  • 膝内側側副靱帯(MCL)

膝をひねる動作や、横から人がぶつかってくることによって受傷します。

複合靭帯損傷を起こすケースでもっとも多いのは交通事故ですが、スポーツ中の事故としてはスノーボードも少なくありません。骨折にせよ靭帯損傷にせよ、バイクやスノーボードでスピードが出ている状態での受傷は重症度が高く、治療が難しいという傾向があります。

半月板は膝内部の内側と外側にそれぞれ1枚ずつあり、大腿骨と脛骨をつなぐ関節面での動きをスムーズにし、衝撃を吸収するクッションの役割を果たします。膝をひねったときにこの半月板がこすれて損傷・断裂し、痛みや可動範囲の制限が生じます。

前十字靭帯損傷と同時に受傷することも多く、関節軟骨損傷を伴うこともあります。また、前十字靭帯損傷の結果、膝崩れを何度も繰り返すことによって半月板損傷に至ることも少なくありません。

ほとんどの場合、MRI検査でほぼ診断がつきますが、それでも分からない場合には関節鏡による検査を行なうこともあります。

関節軟骨は半月板と同様に、関節面での動きをスムーズにし、衝撃を吸収するクッションの役割を果たします。半月板損傷と関節軟骨の損傷は密接な関係があり、どちらが障害を受けているのか診断が難しい場合もあります。

加齢によって関節軟骨が老化することにより多く発症しますが、スポーツ障害の場合には半月板損傷の後遺症として、断裂した半月板が大腿骨や脛骨の関節の軟骨を傷つけ、骨を変形させる変形性膝関節症を起こすことがあります。診断にはX線撮影を用い、必要に応じてMRI検査も行ないます。

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