院長インタビュー

長野県佐久市の地域再活性化を目指すくろさわ病院の取り組み

長野県佐久市の地域再活性化を目指すくろさわ病院の取り組み
黒澤 一也 先生

くろさわ病院 院長

黒澤 一也 先生

この記事の最終更新は2017年05月17日です。

くろさわ病院(長野県佐久市)は、長野県佐久市の地域医療を引き受ける「佐久平地地域病院連絡会」に所属する地域医療機関のひとつです。2017年4月1日より新病院が開設され、リハビリテーションや整形外科を中心にして、地域の商業施設や文化会館と連携した高度な医療を提供することが期待されています。くろさわ病院病院長であり、社会医療法人恵仁会の理事長も務められている黒澤一也先生に、くろさわ病院の取り組みについて、法人の概要も含めてお話しいただきました。

社会医療法人恵仁会は、元々は産婦人科として開設された小さな病院「黒澤医院」から始まりました。1972年に医療法人恵仁会として認可を受け、医療以外の保健・福祉領域へ拡大を開始します。1988年には県下の民間で初の福祉事業施設である「介護老人保健施設安寿苑(老健安苑)」を開設し、高齢化社会における保健・福祉領域の支援の先導者として市民の皆様を支えてきました。

また、2003年には障がい者事業への展開を開始し、2017年現在までに健診センターの運営や訪問介護員養成講座など、幅広い分野でこの地域の支援を続けています。

今回はそのなかでも我々の原点となる病院、くろさわ病院についてお話しします。

くろさわ病院は病床数83床の中小規模病院ですが、急性期以降、すなわち亜急性期から在宅医療に至るまで、地域に根差した質の高い医療・介護を提供しています。くろさわ病院で行う医療を核としつつ、保健・医療・福祉の複合体として、あらゆる角度から患者さんや地域の皆様を支えていくことが最大の目標です。

当院最大の強みは整形外科の診療・検査・手術です。院長の私自身が整形外科医であり、また北里大学からも先生を呼び寄せて、質の高い医療を確保しています。

整形外科手術は骨折への手術を中心に年間300例におよび、年々増加傾向にあります。なかでも人工関節置換術は2006年から2015年の10年間で約8倍(10件から80件)に増加しました。MRIやCT、内視鏡、透視撮影、超音波検査、DEXA(骨密度検査)などの検査にも対応しており、緊急時や土日祝日の検査も行うことができます。この結果、当院での画像検査実施数も急激に増加しています。

画像提供:黒澤一也先生

・形成外科

整形外科以外の診療科には内科、形成外科、皮膚科、婦人科、リハビリ科、リウマチ科、外科があります。特に形成外科は3名の専門医が在籍しており、皮膚科と連携しながら、褥瘡からレーザー治療までを幅広く診療しています。

・救急車の受け入れ

また、救急車の受け入れも近年特に力を入れており、2016年度は内科系・外科系疾患合計で300件以上の救急搬送を受け入れました。2009年の約60台と比べ、5倍前後増加していることになります。

画像提供:黒澤一也先生

・リハビリテーション医療

画像提供:黒澤一也先生

当院では長年、リハビリテーションに力を入れてきました。リハビリテーションが重視されていなかった頃から多くの人員を採用しており、2017年現在のリハビリテーションスタッフは法人全体で、事務、鍼灸マッサージ師、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、健康運動実践指導者、健康運動指導士を合わせて約70名にのぼります。これまえ医療・保健・福祉の3つを大軸に、脳血管疾患やロコモティブシンドローム(運動器症候群)対策、介護予防事業などの様々なリハビリテーションに取り組んできました。患者さんにしっかりとリハビリテーションが行き届くよう、当法人のもつ全施設にセラピストを配置したり、訪問リハビリテーションを3名体制で実施したりすることで、シームレスで広範囲のリハビリテーションを実現しています。

さらに当院はスポーツ選手を支援するKSST(後述)を結成し、スポーツリハビリテーションにも注力しており、これも特徴のひとつといえます。

・在宅療養支援病院としての訪問診療・在宅医療

当院は病院にくることが難しい患者さんのために訪問診療を実施しています。他のクリニックと連携して、佐久医師会主導の土日祝日夜間の在宅見取り当番制に参加しており、休日や深夜を問わず地域の患者さんの診療に迎える体制を整えました。私自らも訪問診療に伺っており、なかには訪問診療の開始時から10年以上診療を続けているお宅もあります。

KSST(KEIJIN Sports Support Team)とは、リハビリテーション医学という観点からアスリート支援を行うチームのことを指します。

当院を含め、当法人には3名のスポーツドクターが在籍しており、医師を中心に各リハビリテーションのスタッフが様々なスポーツに関与し、アスリートを身体的にサポートしています。

【実際にリハビリテーションで支援を行っているスポーツの種類】

  • カーリング
  • ボクシング
  • ボールウォーキング
  • サッカー
  • ハンドボール
  • レスリング
  • ラグビー
  • バスケットボール
  • バレーボール
  • スケート

など

2017年に冬期アジア札幌大会準優勝を遂げたSC軽井沢クラブの男子カーリングチームも、当院が医学的にサポートしているスポーツチームのひとつです。この男子カーリングチームは2017年までに日本選手権5連覇を果たし、世界選手権4位(2016)年、パシフィックアジア選手権優勝(2016)、銀嶺国体優勝(2017)など素晴らしい成績を残しています。彼らが無事に平昌オリンピックに出場できるよう、私たちも全力で医学的な支援をしていきます。

2017年4月1日、くろさわ病院は中込駅前に新病院を開設しました。

新病院は、元商業施設の跡地を建て替える形で設置し、院内に地域の住民の希望であった商業施設と文化会館を取り入れた、複合的な施設になります。院内の食堂や売店は地元の商店と契約し、病院を中心にした街の再活性化を図っています。さらに新病院では、病床数はそのままに、リハビリテーション室は約1.5倍に拡大し、手術室は2部屋に増室しました。

佐久市は高齢者のイメージが大きい地域ですが、このように行政・地域・商店街がコラボレーションした新病院で再雇用や自立支援、リハビリテーション医療といった取り組みを行っていけば、この地域は新しく生まれ変わるはずです。地域の皆様が何の不便もなく、安心してこの街で生活できる世界を作るために、今後はさらに「健康」と「仕事」をつなげられるような取り組みを進めていきたいと考えます。

当院の将来的なコンセプトは、「施設の集約と地域包括ケアシステムを考慮した街づくり」です。

旧病院跡地を含めた周辺施設の老朽化や少子高齢化・人口減少、医師の高齢化などから、今後は周辺施設を集約して訪問診療医を確保し、人口減少社会ならではの地域医療体制づくりを進める必要があると考えます。

このような背景の中で、今後も83床すべてのベッドを存続させるためには、当法人の地域包括ケアシステムの構築から街づくりへの参画、地域とのコラボレーションの進行などはもちろん、将来の担い手となる人材育成・確保を進めていくことが大事です。

佐久市よりも南側(長野県南部)の地域はスキー場が多いものの、比較的医療過疎地であるという特徴があります。このため、長野県南部のスキー場で起こったけがや事故は、当院でかなり多くの台数を受け入れています。

つまり若手医師の方々にとっては、当院は骨折やけがに対する手術を多く経験する病院といえます。地域医療に興味・関心を持ち、手術が上手くなりたいと願う若手医師の方々にとっても、当院は魅力的な病院となるのではないでしょうか。

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