院長インタビュー

さまざまな脳の疾患に対応!北海道・札幌市 中村記念病院の地域への貢献

さまざまな脳の疾患に対応!北海道・札幌市 中村記念病院の地域への貢献
中村  博彦 先生

中村 博彦 先生

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病気は曜日や時間を選んではくれません。特に、脳の疾患は緊急の治療を必要とする場合が多く、迅速な対応が求められます。北海道札幌市の中村記念病院は、日曜・休日を問わず24時間365日の救急診療体制を実現しています。

同病院は、日本初の脳神経外科専門医療機関として誕生しました。主に脳卒中の治療において高い実績を誇ってきましたが、近年では、幅広い脳疾患の治療に対応し、多彩な強みを持つ病院として日々進化を続けています。

リハビリテーション(以下、リハビリ)にも力を入れる北海道・札幌市の中村記念病院の理事長である中村 博彦(なかむら ひろひこ)先生に進化を続ける同病院についてお話を伺いました。

私たち中村記念病院は、1967年に日本初の脳神経外科専門医療機関として誕生しました。当時、脳神経外科を専門とする開業医がいない中、初代院長が脳神経外科を創設したことが始まりです。その後、優秀な人材の育成と最新の技術の導入により、脳神経外科の専門病院として全国にその名を知られる存在へ発展し、今日があります。

中村記念病院 外観
中村記念病院より提供

私たちが専門とする脳疾患には、緊急の治療を要するケースが少なくありません。そのため、当院では日曜や休日を問わず24時間365日いつでも脳疾患の救急患者さんを受け入れています。札幌市における“けが(災害)救急病院”であるとともに、主に入院が必要な患者さんを受け入れる脳神経外科系2次救急指定病院にも指定されています。また、大学病院など周辺の病院から紹介された治療が必要な患者さんも、積極的に受け入れるようにしています。

中村記念病院 
中村記念病院より提供

お話ししたような救急診療体制は特徴ですが、当院が受け入れている患者さんは、必ずしも緊急の治療が必要な急性期の患者さんばかりではありません。それは、脳神経内科やリハビリにも力を入れているため、幅広い症状の患者さんを治療する体制が整っているからです。また、患者さんによっては、病院の移動に大きな精神的・身体的・経済的な負担を伴うことがあります。手術からその後のリハビリまで一貫して私たちの病院で診ることができれば、患者さんの負担を軽減することにもつながるのではないでしょうか。

中村記念病院
中村記念病院より提供

先に述べたように、中村記念病院は脳神経外科を専門とし、主に脳卒中において高い治療実績を誇ってきました。しかし、もう1つの柱である脳神経内科との連携により、近年はてんかんパーキンソン病、また整形外科と協働で脊椎(せきつい)脊髄(せきずい)の疾患など、脳卒中以外の疾患にも幅広く対応しています。私は、基本的に脳腫瘍から顔面神経麻痺などの末梢神経障害まで、当院で診ることができる患者さんはできる限り受け入れたいと考えています。

中村記念病院では、脳神経外科と脳神経内科の連携も進んでいます。それにより、提供できる治療の幅が広がる点は大きな強みであると思います。たとえば、てんかんは患者数が多い脳の疾患の1つですが、その一方で専門的に診療できる病院は限られています。それは、治療には手術などの外科的治療と、内科的治療が必要となるからです。

私たちの病院ではてんかんセンターを設け、連携による治療を実現しています。具体的には、EMU(てんかん脳波検査の専用室)によるてんかん外科手術により、多くの患者さんを治療してきました。また、投薬には主に抗てんかん薬を使いますが、それぞれの患者さんに合った薬を検討するようにしています。

中村記念病院
中村記念病院より提供

てんかんセンターとともに、透析センターを設けています。腎臓の機能を人工的に代替する透析(とうせき)を受ける患者さんは、脳卒中になりやすいと言われています。その一方で、透析患者さんの脳卒中を治療することができる医療機関が周辺にはありませんでした。そのため、中村記念病院では透析患者さんの脳卒中に対応する専門の透析センター(12床)を開設しています。

お話ししてきたように、さまざまな疾患の治療にあたっていますが、高い治療実績を支えるのは高度な技術です。ここでは、ガンマナイフと病理診断についてご紹介します。

低侵襲な治療が可能なガンマナイフ

ガンマナイフとは、ガンマ線と呼ばれる放射線の一種を用い、病巣をナイフで切り取るように照射する治療法です。主に脳腫瘍脳動静脈奇形に適応され開頭手術を必要としないため負担が少ない点が大きなメリットです。私たちは、1991年に当時まだ先進的な治療であったガンマナイフを北海道内の医療機関で初めて導入しました。現在、年間400~500件程度の手術を行っており、これまでに15,000例以上の実績(1991~2023年度実績)*を積み重ねています。

*年間の手術件数/2016年:527件、2017年:470件、2018年:491件、2019年:404件、2020年:400件、2021年:373件、2022年:370件、2023年:433件

正確さと速さを兼ね備えた病理診断

脳腫瘍の病理診断においても高い実績があります。日々の患者さんの治療はもちろんのこと、臓器の提供施設としても貢献しています。病理診断とは、人体から採取された材料を元に行う診断法です。たとえば、脳腫瘍の手術中に腫瘍部分を採取し、それを元に脳腫瘍の広がりなどを診断することで、より有効な治療計画を立てることができます。当院の病理診断は、正確さと速さが大きな特徴です。

後遺症が残る場合も少なくない脳の疾患にとって、リハビリは非常に重要です。私たちの病院でもリハビリには力を入れており、現在PT、OT、ST合わせて100名以上のスタッフがそろっています。また、常に訓練のための最新の装置を取り入れるようにしています。

ロボットによる最新リハビリ装置

最新のリハビリ装置の1つとして、私たちの病院で導入しているMELTz(メルツ)という脳卒中のリハビリ専門のロボットをご紹介します。MELTzは脳卒中に伴う手指の運動麻痺を、脳科学に基づいた新しいリハビリテーションの手法でサポートしてくれます。

脳卒中に伴う麻痺や運動機能の低下は、脳の中でも運動に関わる部位が損傷を受けることで起こります。そのため、運動機能を回復するには損傷した脳の機能を再構築し、脳神経系が運動のやり方を再学習することが必要です。このMELTzは、前腕の筋肉の電気信号をAIが分析し、患者さんの運動意図に併せて動作補助を行ってくれるので、運動を司る脳神経系の再学習を促すことにつながるという特徴があります。

当院ではMELTzのほかにも、HAL 自立支援用単関節タイプという装置も使用しており、患者さんに合わせてリハビリを行えるよう努めています。

中村記念病院
中村記念病院より提供

当院が支援している公益財団法人 北海道脳神経疾患研究所では、住民の方の健康維持や、脳神経領域の疾患啓発を主な目的として、モービルMRI移動脳検診車を用いた巡回診療を定期的に実施しています。

モービルMRIによる巡回診療

モービルMRIとは、世界初且つ国内唯一の検診目的 MRI 搭載大型トレーラー型検診車 (巡回検診車モービルMRI=移動診療所)です。私たちは定期的にこのモービルMRIで、北海道各地へ脳の検診に回っています。脳神経領域の疾患の早期発見および予防を目的としており、北海道内でも特に脳神経領域の医師がいない地区を中心に、24の市町村へ年間30回ほど巡回しています。この取り組みは、住民への啓発に有効であるとともに、高齢者の診療率向上にもつながることが期待でき、実際にこの検査で脳腫瘍が発見された方もいらっしゃいます。

中村記念病院
中村記念病院より提供

お話してきたように、中村記念病院は脳神経外科の専門医療機関としてスタートしました。主に脳卒中の治療において高い実績を誇ってきましたが、近年はスタッフ各自の努力により、幅広い疾患の治療にあたることができます。脳卒中はもちろんのこと、各領域の疾患に核となる人材が育ち、また、代々引き継がれてきたためです。私たちは常に最新の治療法を取り入れ、地域の皆さんに貢献したいという想いで進化してきました。今後もその気持ちを忘れず、常に患者さん一人ひとりに適切な治療を届けることができるよう努力していきたいと考えています。

*診療科や職員数、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年4月時点のものです。

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