院長インタビュー

長年に渡り地域の医療ニーズに応えてきた福山市民病院の強みと今後目指す

長年に渡り地域の医療ニーズに応えてきた福山市民病院の強みと今後目指す
坂口 孝作 先生

福山市民病院  病院長

坂口 孝作 先生

この記事の最終更新は2017年09月29日です。

福山市民病院は、1977年に現在の蔵王の地に開院し、2017年で開院40年という節目を迎えます。開院当時は、福山市の人口は約32万人でしたが、現在は周辺市町村との合併を繰り返しおよそ47万人へと増加しました。この人口増加にともない同院は規模拡大をはかってきました。これからやってくる高齢化の波とともに、医療需要も変化することが見込まれます。そのなかで、福山市および備後地域の高度急性期・急性期医療を提供する中核病院としての役割を果たしながら地域のニーズに応えるために努力を惜しまない同院の院長である、坂口孝作先生に病院の強みやこれから目指す姿についてお話を伺いました。

 

高度急性期・急性期医療に特化している当院は、28診療科、506病床数を有する自治体立病院です。職員数は1,000名を超え、医師は160名以上が在籍しています。発展的に継続するという使命を掲げ、長年に渡り備後地域において高度急性期・急性期医療を提供する中核総合病院としての役割を担ってきました。

当院では、特に救急医療、高度急性期医療を強みとしています。救命救急センターを併設し、救急救命医を9名配置しているほか、高度医療機器やヘリポートを設置しています。毎日多数の救急患者さん、急性期疾患を患う患者さんの治療にあたっています。

当院は、地域の医療ニーズに的確に応えることが第一だと考えています。市民病院として地域の医療ニーズに応えるべく、一般的な疾患を確実に診察できるようにすべての診療科を設置しているほか、あらゆる疾患に対応できる人員と最新医療機器を保有しています。充実した設備・環境があることで、特定の診療科のみならず、さまざまな診療科との併診により患者さんを包括的に診察できるように体制を整えています。そのため、高度急性期医療から慢性期疾患などに対する一般診療まで網羅的に対応できます。また、複数疾患であってもさまざまな診療科、あるいは関連する医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、作業療法士などの職種が協力してチーム医療で治療にあたり、常に良質な医療を提供します。

近年、がん診療には目覚ましい進歩があります。当院での院内がん登録件数は2016年度には2,069件で、増加傾向にあります。がん医療をさらに充実するために、当院では外来化学療法室や高精度放射線機器を設置しており、2016年の年間外来化学療法件数は7,015件、放射線治療の実患者455人、照射治療11,534回であり、当圏域で高度で充実したがん医療を提供できていると自負しています。

当院は2006年に、福山・府中第二次保健医療圏の地域がん診療連携拠点病院に指定されました。認定以来、当医療圏およびその近隣住民のみなさまに対して良質ながん治療を提供してきました。一方で、高度医療が拡充したことで、医療機関によって診療内容や治療方針が異なるため、どこで治療を受けていいのかわからないというような問題もでてきました。そこで当院では、がん患者さんが、一連のがん診療を継続的、統一的に受けられるように、院内での調整的役割を持つがん診療統括部を設置しました。がん診療統括部では、それぞれの診療科・部門でのがん診療に関わる共通の業務を整理統一して、各診療科のがん診療・治療に還元し、病院全体でがん患者さんへのケアを円滑に行えるようにしています。今後は、がんに関連する情報を院外・地域へ発信し、当院でのノウハウを地域医療機関での診療にも取り入れられるような連携システムの構築を視野に入れています。

放射線治療の主な流れは、まず照射野設定用のCTを撮影し、治療計画専用コンピュータにて放射線治療の範囲、形、線量、回数を決定します。その後の放射線照射実施では、症例に合わせてあらゆる方向から照射します。照射線量は、1日に1回で2、3グレイ、照射時間は2、3分、所要時間は10分ほどです。平日対応も可能であり、1回のみの照射もありますが通常は10〜38回の照射を行うといった治療内容です。放射線治療には、2015年に導入した最新の放射線治療装置を用いています。当院での放射線治療の特徴は、放射線治療の際に放射線治療装置に装着されたCTにて体軸横断像を撮像し、わずかな位置誤差を補正した放射線の照射が可能になっている点です。がんの放射線治療についての相談は、がん相談支援センターもしくは地域医療連携室までお気軽にご連絡ください。

がん化学療法を専門とする医師(がん薬物療法専門医)・看護師(がん化学療法看護認定看護師)・薬剤師(がん薬物療法認定薬剤師)を含めたスタッフを配置し、各診療科と連携して治療を行っています。外来化学療法センターでは、治療と連続して、丁寧なインフォームド・コンセント(説明と同意)を行い、患者さんとの信頼関係を築くようにしています。その後に、無菌調剤と薬剤指導、相談やカウンセリングを取り入れています。治療だけではなく副作用の予防、対処のほか生活指導にもあたり、患者さんに寄り添った治療をし、患者さんをチーム医療でサポートしています。がん化学療法では、抗がん剤のほか、細胞に選択的にはたらく分子標的薬、骨転移などに対する薬、ホルモン療法薬などによる治療も実施しています。近年では、こうした外来化学療法を受けられる患者さんが増加しています。外来化学療法を受けている患者さんは、内科、腫瘍内科、外科、乳腺甲状腺外科、泌尿器科、産婦人科、耳鼻咽喉科などさまざまな診療科からお越しです。化学療法の選択肢は広く、点滴内容や時間なども患者さんに応じて柔軟な対応をしています。そのため、日常生活や仕事を続けながらの治療が可能なこともあります。以前はほとんど入院で行われていた化学療法ですが、現在では半数以上が外来での治療となっています。

最近は、化学療法の継続のためにも早期から緩和ケアを導入します。そのため、必要に応じて緩和ケア科医師、精神腫瘍科医師、臨床心理士、地域医療連携室、がん相談支援センターなどの協力を得ながら、患者さんを中心としてチームを編成し、本当の意味でのチーム医療を実践しています。地域との連携も年々強化しており、かかりつけ医の先生を含めて地域の医療機関にも、外来化学療法を利用している患者さんの診療に協力してもらうケースが増えています。

当院には毎年10名前後の初期研修医が来てくれています。岡山大学をはじめ、近隣地域の大学のほかに関東にある大学など、多彩な大学出身者が集まっています。最近では福山市出身の初期研修医も増加しています。多くの研修医は、初期研修終了後も後期研修医として、当院で研修を継続し、多くの症例を学んでいます。研修医のキャリアパスとしては、当院で数年間勤務したのち大学の医局に入局する場合もありますし、ほかの教育病院に移ることもあります。当院では積極的に若手医師の育成に取り組んでいます。

また、若い世代に医療に興味を持ってもらうことを目的として、高校生向けに病院体験を実施しています。将来的に福山市の医療人員確保に貢献したいという願いのもと、この取り組みを10年以上続けています。

福山市および備後地域には、大学病院がありません。そのため、地域の中核病院である当院が地域の高度医療を牽引していく必要があります。当院では、診療科によっては定期的に周辺の病院へ医師を派遣しています。これからも、備後地域の医師の確保や、各医師の視野を広げられるように取り組みます。若手医師や医学生、医療者を目指す人に伝えたいことは、医療の高みを目指して欲しいということです。現状に満足せずに、世界のトップを見据えて研鑽を続けて欲しいと考えます。患者さんのニーズに応え、その経験をもとに臨床や研究の経験を積み重ね自分の業績とし、自分の医療に自信や自負を持ってもらいたい。当院は、今後も医療を目指す人々によりよい環境を提供できるように努めまいります。

坂口孝作先生

将来的に福山市民病院が目指す理想的なあり方は大きく2つあります。

ひとつは、備後圏域の高度急性期・急性期医療を担う中核的存在となること、もうひとつはそれによって備後地域コミュニティの創生の中心となることです。

いまの時代は、広い意味でコミュニティの希薄化が進んでいます。地域包括ケアシステムにもいえることですが、地域内での支え合うコミュニティの存在は非常に重要です。将来的には医療機関がコミュニティの中心となって地域をまとめる存在になっていかなければならないと思っています。2060年には、高齢者が総人口の3分の1から4分の1程度になるといわれています。そのような超高齢化社会となった場合に地域が求める医療ニーズのみならず、社会のニーズにも応えられる柔軟な体制作りへの備えをしっかりと行っていきます。そのためにも地域医療機関との密な連携をはかっていきます。地域医療構想によって求められている、病床機能分化を推進し、備後圏域内での病床機能に応じた施設の維持に努め、救命医療、がん医療、高度専門医療を中心とする高度急性期・急性期医療を担う中核総合病院としての任務を果たすことが重要だと考えます。今後も患者さんの医療ニーズを第一としながら、良質な医療を提供できるよう努力します。

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