栃木県下都賀郡壬生町に位置する獨協医科大学病院は、1974年の開院以来、地域に根ざした医療を提供してきました。病床数は1167床、31の診療科と18のセンターを有しています。患者数は全国でも上位に入り、栃木県全域からはもちろん、全国・海外からも患者さんが訪れます。獨協医科大学病院の特色やこれからの展望について、病院長の平田幸一先生にお伺いしました。
※この記事は、2017年8月の取材に基づいて記載されています。現在とは状況が異なる場合があります。
病院敷地航空写真 提供:獨協医科大学
栃木県には、県立病院が3院しかありません。そのような医療状況のなかで、獨協医科大学病院は大きな役割を担っています。そのため、大学病院の担う特定機能病院としてだけではなく、地域の基幹病院として地域の患者さんに優しい病院作りを徹底しています。31の診療科と、18のセンターを持ち、各分野のスペシャリストが高度な技術を駆使して日々患者さんと向き合っています。
地上型ヘリポートへ着陸するドクターヘリ 提供:獨協医科大学
患者数が全国7位(2015年病院情報調べ)の通り、当院は栃木県の基幹病院として、日々多くの患者さんが来院されます。多いときで1日に約2,400人の患者さんがいらっしゃるため、3,000台以上を駐車できる大きな駐車場を備えています。また、全国では珍しい地上型ヘリポートを兼ね備え、災害時など夜間でも自衛隊ヘリなどの離着陸が可能です。
当院は、手術支援ロボットのダヴィンチなどの最新医療機器の導入は当然のことながら、排泄(排尿・排便)障害に悩む患者さんに対して、専門的な治療を行う排泄機能センターを日本で初めて設置しました。医師、看護師、技師(臨床検査技師、排尿機能検査士、放射線技師など)、理学療法士などが一丸となり、高度で多角的な治療を患者さんへ提供しています。排泄障害は命に関わる病気ではありませんが、超高齢化を迎える今日の暮らしの質を左右する疾患です。症状を恥ずかしく感じたり、誰にも相談できないと悩んだりする前にぜひ一度ご相談ください。
当院は患者さんへのサポートを徹底することはもちろん、医療従事者、特に女性医師に対して画期的な制度を提供しています。そのひとつが、子どもを持つ女性医師への制度です。主に小学校5年生以下の子どもを持つ女性医師を対象に、週20時間の勤務(割り振りも自由)で給与・賞与の半額を支給、保険料は全額負担しています。この制度を活用し、妊娠・出産後も現場を離れることなく家庭と育児の両立をしている女性医師が当院には多数います。
日本初となるホスピタルイン 提供:獨協医科大学
新たな試みとして、当院では病院の敷地内に患者さんや、付き添いやお見舞いに来られたご家族が宿泊できる「ホスピタルイン獨協医科大学」を2018年1月から開業します。「病棟のベッドと家庭の寝室」の中間的な位置づけをコンセプトとした宿泊施設であり、遠方からの通院や付き添い・看護・お見舞い・診察までの時間待機等の問題を解決します。また、ホスピタルインのそばにはレストランや商業施設を備えるなど、患者さんはもちろん、付き添いにいらっしゃったご家族やご友人の皆さんにも快適な時間をご提供できるような環境作りを今後も考案していく予定です。
獨協医科大学病院では、家庭の事情などで現場を離れた医師や看護師に再度活躍してもらうことを検討しています。栃木県においても医師や看護師の不足は叫ばれており、現在は現場を離れているものの、確かな技術や現場経験を持った医師や看護師の活躍が期待されます。現在ある総合診療教育センターを講座化し,地域と連携した再教育を行ってゆくなどのアイディアにより、地域医療の推進に貢献できるよう取り組んでまいります。これは獨協医科大学病院が未来志向を持った教育病院となることを意味しています。
医師は通常、初期研修後に他院へ異動していきます。しかし当院では、85~90%近くの医師が研修後も当院に留まり、患者さんと向き合い続けてくれています。病院経営、医師の確保が難しくなっている今の時代に、多くの医師が当院を選んでくださることに感謝し、職員全員の力を合わせて、患者さんにとって最良の医療を提供できる病院でいることを目標としています。
また、日本で初となるホスピタルインの建設を通して、お見舞いに来られるご家族やご友人の皆さまの負担を少しでも減らすことや、地域医療の連携に力を入れていくことで、診療から離れていた先生たちが再度医療の現場で輝けるお手伝いをするなど、当院が解決できる課題はまだまだあります。時代やニーズに合わせて変革していく獨協医科大学病院は、地域の皆さんにより良い医療を提供できるよう、今後とも邁進してまいります。