院長インタビュー

地域医療の中心としてアクティブに「あたたかい医療」に取組む福岡大学病院

地域医療の中心としてアクティブに「あたたかい医療」に取組む福岡大学病院
井上 亨 先生

福岡大学 医学部 脳神経外科主任教授、福岡大学病院 病院長

井上 亨 先生

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福岡大学病院は1973年8月の開院以来、地域医療の中心として社会に貢献し、現在は特定機能病院として良質かつ高度な医療の提供や医療人の育成、臨床研究の推進に努められています。福岡県福岡市城南区に位置し、「あたたかい医療」という基本理念を掲げ、患者さん目線でさまざまな取組みを行っている福岡大学病院の病院長である井上亨先生にお話を伺いました。

 

福岡大学病院外観(福岡大学病院よりご提供)

福岡大学病院は、福岡市城南区に位置しています。2005年の福岡市営地下鉄七隈線開業により福岡市中心部からの交通アクセスが向上し、福大前駅から雨の日でも濡れずに来院することができます。これにより、アジアの玄関口とも言われる福岡空港からの利便性も高まり、海外から治療に来られる患者さんも増えたことから、2016年6月に国際医療戦略室を設置し、インバウンド(訪日外国人旅行者)や在日外国人の医療需要に対応しています。同時に全18回の院内医療通訳養成講座を開設し、講座を修了した病院スタッフが外国人患者を言語面でサポートする院内認定医療通訳者として活躍しています。

大学病院は高度医療の提供だけでなく、地域の医療機関との連携も役割の一つです。当院での専門的な治療や入院を終え、症状が安定した患者さんを地域の医療機関に紹介するために「連携医療機関登録制度」を設け、患者さんに適切な医療を提供する体制づくりを進めています。登録いただいた医療機関については、当院ホームページや院内掲示にて連携医療機関である旨をご紹介させていただくほか、各医療機関の診療内容を掲載した「かかりつけ医紹介リーフレット」を作成し、院内パンフレットラックに設置しています。また、2017年4月の医療機関訪問活動専用車輌「地域連携Car」導入により、地域の先生方と“顔”の見える関係を築くことができ、さらなる関係強化に繋がっていくものと期待しています。

当院は「断らない医療」のスローガンを掲げ、近隣医療機関や救急隊からの救急症例を積極的に引き受けています。救命救急センターの存在はもちろん、二次救急医療(ER)の強化とトリアージナースの導入が大きな力となっています。現場スタッフには医師、看護師を含むメディカルスタッフに加えて、研修医も含まれており、多職種でのチーム医療の重要さを肌で実感することは、若手医師が成長する過程において貴重な経験となります。彼らが福岡大学病院だけでなく、これからの地域医療を支える存在となってくれるものと信じています。

 

救命救急センタースタッフの皆さんとFMRC(福岡大学病院よりご提供)

2018年1月にはFMRC(Fast Medical Response Car)を導入しました。これまでは救急車および救命救急センターに隣接するヘリポートからの受け入れが主でした。今回導入した欧州型ドクターカーと言われるFMRCは乗用車タイプのドクターカーです。重症救急事案が発生した際に消防からの要請を受けて、医師や看護師がFMRCで現場まで駆けつけ、早期診断・早期治療を行うことで救命率の向上を目指します。患者さんを待つのではなく、救急現場へ駆け付ける「攻めの救急」を実践しています。

当院は腎移植や角膜移植を実施しています。また、全国に10施設ある肺移植認定施設(2017年5月現在)の一つで、2005年に脳死肺移植と生体肺移植の実施施設に指定され、翌2006年には脳死肺移植と生体肺移植をそれぞれ実施しました。院内に移植コーディネーターを配置し、臓器提供啓発セミナーなども開催しています。

また、2015年には手術支援ロボット「ダビンチ」を導入しました。手術支援ロボットを使用した手術は、傷口も小さく、痛みも少ないため、患者さんの早期社会復帰が可能となりました。手術支援ロボットなどの医療機器の導入は、患者さんの体への負担の少ない治療を提供するとともに、若手医師が今後の自身のキャリアを考えた時に外科医師が選択肢の一つになることを望みます。

 

ダビンチでの手術の様子(福岡大学病院よりご提供)

リハビリの分野においても、2011年から脳卒中脳腫瘍の手術後における歩行訓練などの早期リハビリテーション開始を目的としてロボットスーツHAL(運動支援ロボット)を導入しています。脳神経外科医師だけでなく、リハビリテーション科、神経内科、循環器内科の医師や理学療法士などの多職種が連携して、リハビリ治療にあたっています。

急性期医療を提供する医療機関では、患者さんが社会復帰できるようにリハビリテーションを実施するまでが一つの治療だと考えています。そのため、当院ではがんリハビリテーションや心臓リハビリテーションも開始するなど、リハビリテーションの充実も図っています。

当院の基本理念である「あたたかい医療」を実現するために、さまざまなことに取り組んできました。今や全国区の福岡県糸島エリアで育った新鮮な野菜や魚介類などを使用し、有田焼の食器に盛り付けた病院食「糸島あじわいメニュー」も患者さんからは大変好評です。食された患者さんからのあたたかい言葉に栄養部も大きなやりがいを感じ、より美味しい食事を提供できるよう工夫しています。

 

糸島あじわいメニュー(福岡大学病院よりご提供)

福岡産業保健総合支援センターと協定を締結して院内に開設した「治療と仕事の両立支援窓口」では、福岡産業保健総合支援センターの両立支援促進員と当院の医師や看護師、社会福祉士が連携を図りながら、治療と仕事の両立を希望する患者さんを支援しています。

他にも、スタッフ教育の面では全スタッフに笑顔で患者さんに対応するよう伝えています。病気に対する不安を抱えて来院する患者さんが、最初に接する受付スタッフの笑顔で不安が少し解消され、リラックスして診療に臨めると考えるからです。また、特別な理由がない限りスタッフのマスク着用を推奨していません。もちろん、インフルエンザなどが流行している時期にはマスクを着用しますが、可能な限りスタッフの笑顔がよく見えるようにしています。

 

 

治療は医師、看護師などの全てのスタッフと患者さんとの信頼関係があってはじめて提供できるものと考えています。当院では救急医療から急性期医療の提供、リハビリテーションやその後の社会復帰に向けた支援などさまざまなことに取り組んでいます。患者さんは安心して何でもスタッフに相談してください。大学病院には、あらゆる分野の専門家がいますので、その時のよりよい選択ができるものと思います。

当院は急性期医療を提供する病院であるとともに、若手医師を育成する教育機関でもあります。医師になったばかりの時は知識や技術の面で悔しい思いをする機会も多くあることでしょう。医師になってからの初めの10年は必死に勉強し、多くの知識を身に付け、先輩医師の持つ技術を吸収してください。その後の10年はそれまで自身を育ててくれた患者さんに尽くしてください。医師に多くの経験を積ませてくれるのは、一人一人の患者さんです。さらに、その後の10年は若手医師の育成に尽力してください。今まで培ってきた知識や技術をこれからの医療を担う若手医師に伝えていってほしいからです。先輩医師は厳しいことを言う場面もあります。しかし、それは若手医師に多くのことを伝えたい、指導したいと思っているからです。自己研鑽を重ね、あたたかい医療を提供することができる医師になってください。