日本鋼管福山病院の歴史は、日本鋼管(現在のJFEスチール)の従業員の健康管理を預かる医療機関として、1971年に開院したことに端を発します。その後、2002年に医療法人社団化したことを契機に、企業のみでなく同院のある広島県福山市および近隣地域の住民にも開かれた病院としても活躍し始めました。
同院の歩み、現在の診療体制、地域にむけた取り組みなどについて、病院長を務めておられる浜田史洋先生にお話いただきました。
広島県は国内の近代鉄鋼業の発展を支え続けてきた歴史があり、特に福山市はその一大拠点として全国的にその名を知られる存在でした。
当院は、日本鋼管福山製鉄所(現在のJFEスチール)に勤務する従業員と家族の健康を支えるため、敷地内に併設する保健センターとして開設されました。当初は従業員の健康管理と診療が主な業務でしたが、時が経つにつれ増加してきた地域からの医療ニーズに対応するため、診療科や病床、施設機能の充実などを行いました。
2002年には医療法人社団化し、企業系病院から一般向け病院へ転換して、地域とのつながりも大切にした病院として新たなスタートを切りました。
再スタートを切るにあたり、地域の医師会、各病院、診療所など地域の医療に携わる組織や先生たちとの信頼関係の構築を意識したほか、地域の一員として救急車の受け入れや輪番制度参加などを積極的に行いました。
こうした努力が実を結び、今ではこの地域の健康を共に守り支える一員として迎え入れていただいています。
この地域には救急医療に注力している医療機関が多く、また医療機関同士の連携もしっかりしています。そのため、この地域は救急医療体制の充実が進んでいるといわれています。
そのなかで、当院は県より救急告示病院の指定を受けており、市内と近隣地域における一般・小児二次救急医療の一角を担っています。
整形外科は体を支える骨・筋肉・腱などの組織の診療を扱う診療科です。当院の整形外科では、手足の外傷、関節への外科的治療、スポーツなどで痛めやすい部位の診療を主とするスポーツ整形外科を主体に診療しています。
整形外科で診る病気は多岐にわたり、治療目標や方法は患者さんによって異なります。そのため患者さんそれぞれに適した治療方法をご提案できるよう、検査や診断だけでなく患者さんとご家族との会話などコミュニケーションも大切にしています。
生活環境の変化などの影響を受けて、乳腺炎や乳がんなどに代表される乳腺のトラブルを抱える方は、増加傾向にあるといわれています。
当院では日本乳癌学会の認定を受けた乳腺専門医の資格を持つ医師や女性スタッフが中心となり、マンモグラフィや超音波による乳房の検査や精査、診断、治療を一貫して行っています。特に乳がん治療の一環で乳房を失ってしまった患者さんには、形成外科や近隣の大学病院と連携して乳房再建術をご案内しています。
今後さらに加速する高齢化への対応や医療資源の有効活用が大きな課題といわれています。諸問題を解消するため、医療圏と呼ばれる一定のエリア内でのスムーズな医療提供を目的とした「地域医療構想」や、高齢者が住み慣れた環境で自分らしく過ごせるよう地域全体で医療・介護・福祉を提供する「地域包括ケアシステム」など、いわゆる地域医療を行うための仕組みづくりが、全国各地で進められてきました。
当院も地域医療の担い手として、従来から続けてきた診療体制を大切にしつつ、かかりつけ医からの入院依頼を受け入れたり、地域包括ケアに特化した病床の整備を進めたりなど、より地域に向けて開かれた病院づくりを進めている最中です。
当院では、開業医の先生や近隣病院の連携担当者を招いて「地域医療連携の会」を定期的に開催しています。
患者さんと医療従事者の間で信頼関係が大切なように、医療従事者同士の信頼関係の構築も重視されています。特に地域医療では、大切な患者さんの診療をお願いしたりお預かりしたりするため、その傾向が強いように感じています。
この会は当院の取り組みを知っていただくためというより、参加していただいた医療機関をそれぞれ紹介しあうことで、顔の見える関係づくりの場として活用していただいています。
この地域では、それぞれの医療機関が尊重しあって個性をいかしながら医療を提供しあっていると感じています。
今後は、医療のみでなく福祉や介護などの事業も充実させて、すでに構築されている地域医療の輪にのせて提供することで、地域に暮らす皆さんにより多角的な支援をお届けできるような機能の導入なども考えています。
当院の再スタートにあわせて病院理念もリニューアルしたのですが、これが「幸せな医療」について改めて考える機会になりました。
患者さんの多くは、心身に何らかの不調を来しているから医療機関を受診して治療を受けていることを考えると、「医療機関に来ること」と「幸せ」は相容れない存在といえるかもしれません。
しかし、診察により患者さんの病気を探し、会話をつうじて目の前の患者さんの考えを知り、治療目標を一緒に設定して見合った治療方法をご提案し、医療の力で患者さんが持つ願いを叶えられれば、「医療機関に来ること」と「幸せ」を近しい存在にすることができるのではないかと思います。そして、患者さんに「ここに来てよかった。治療を受けてよかった」と思っていただけたのであれば、それは患者さんにとって幸せな医療だったといえるのではないでしょうか。
同時に、医療従事者にとって医療機関は、目の前の患者さんからいただいた「あなたがいてよかった。ありがとう」という感謝の言葉や、仕事による自己実現をつうじて喜びを感じられる場であると考えています。
当院は今後も、福山市および地域の過去・現在・未来を支える全ての方に向けて医療を提供し続けられるよう、皆さんや時代の声を聞き続けます。健康に対する不安、医療へのニーズがあればいつでもご相談ください。
医療法人社団 日本鋼管福山病院 理事長・病院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。