院長インタビュー

地域に急性期医療を提供し職員が成長できる病院を目指して─進化し続ける市立福知山市民病院

地域に急性期医療を提供し職員が成長できる病院を目指して─進化し続ける市立福知山市民病院
香川 惠造 先生

市立福知山市民病院 院長、福知山市 病院事業管理者

香川 惠造 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年01月29日です。

市立福知山市民病院は開設から100年以上にわたり地域医療に貢献しています。その時代に合わせてさまざまな診療に取り組み、患者さん一人ひとりに適したよりよい医療を地域に届けようと職員全員が力を注いでいます。また、日々の診療にくわえ、医師の育成にも尽力する同院について、院長の香川惠造先生にお話を伺いました。

 

市立福知山市民病院 外観

当院の歴史は古く、前身は1898年に陸軍衛戍(えいじゅ)病院として福知山市岡ノに創設されました。その後、1945年に厚生省(現在の厚生労働省)に移管されて国立福知山病院として外来診療に従事しながら、結核病床を有して結核患者さんの治療に尽力してきました。さらに、1993年には福知山市が国立福知山病院の経営移譲を受け、市立福知山市民病院として新たなスタートを切りました。

そして、市立病院として地域医療に貢献するために診療科の拡充や増床、救急医療体制の整備などを積極的に進めてきました。

また、地域の急性期医療を担うと共に、今後の地域医療を支えていく若手医師への教育に力を入れています。さらに、地域の医療機関とも顔の見える関係をつくることで、患者さんが当院での急性期医療を受けたあとも、住み慣れた土地に戻れるようスムーズな病診連携を可能にしています。

2011年には第13回日本医療マネジメント学会学術総会を主催し、質の高い医療を地域に提供するという当院の使命を職員全員で共有することができました。同時にこの学会を契機に多くの医療チームが立ち上がり、それぞれがその内容を進化させています。2018年には日本医療機能評価機構の認定更新を受けましたが、その際の講評においてはチーム医療の充実とその自律性が高く評価されました。

 

ピアノも設置されているふれあいギャラリー

 

市立福知山市民病院に導入されたリニアック装置

当院は日々の外来診療はもとより、救急医療や災害医療にも力を注いでいます。消化器内科、循環器内科や外科など多くの診療科が、患者さんに最も適した医療を提供するために常に努力しています。

2007年には地域がん診療連携拠点病院に指定されました。地域がん診療連携拠点病院は、全国どの地域にお住まいのがん患者さんにも等しくがん診療を提供するための連携協力体制をとっています。消化器内科や外科などでの手術にくわえ、外来化学療法や放射線治療も併せて提供しています。放射線治療センターでは、患者さんの体に負担の少ない治療が提供できるよう、機器と建物を2019年1月にリニューアルしました。

 

救命救急センター内の初療室

当院は2012年3月に京都府北部でいち早く地域救命救急センターの指定を受けました。この指定にともない、2014年に救命救急棟を新設し、救命救急棟をメインに活用することで、地域の救急医療を支えています。また、当院は屋上ヘリポートを整備しており、徒歩や救急車での搬送以外にドクターヘリによる近隣府県からの救急患者受け入れも行っています。

救急医療は、軽症の一次救急から一般病棟での入院治療が必要な二次救急、集中治療室での入院治療が必要な三次救急の三段階に大別されます。当院では、一次救急から三次救急まで受け入れる体制を整えています。特に三次救急の中でも急性心筋梗塞脳卒中などと思われる搬送例の場合は、緊急の処置を要します。それぞれの治療や検査を実施できる体制を整備し、救命救急センターとして地域医療に貢献していく予定です。

災害医療の面では、1997年3月に地域災害医療センターの指定を受けました。地域災害医療センターとは、広範囲のやけど多発外傷などの災害時に考えられる重篤救急患者さんの救命医療を行うための診療機能を有している病院のことです。

当院の位置する福知山市では2013年8月に発生した福知山花火大会事故により、多くの方が重軽傷を負いました。このとき、花火大会の消防警備計画では10人ほどの傷病者を想定し、会場付近の空き地をトリアージ(注)場所に指定していました。しかし、事故が発生すると、想定をはるかに上回る傷病者が次々と運ばれたため、消防の現場責任者が災害発生現場でのトリアージをやめ、当院を含む3医療機関に救急車やバスで患者さんを搬送しました。当院は53名と最も多くの傷病者を受け入れ、迅速なトリアージを行いました。院内においては、救命救急センターのスタッフはもちろん、事務スタッフ、理学療法士や薬剤師など、多くの職種のスタッフがチームとして対応することができました。

この爆発事故を教訓に、大規模事故を想定した訓練を翌年に行うなど、災害医療の体制整備・充実にも取り組んでいます。

トリアージ…医療従事者や医薬品などの制約がある被災地で、患者さんの重症度に応じて搬送や治療の優先度を決める

 

2014年に実施した大規模事故を想定した訓練に参加したスタッフの方々

医療従事者が自己研鑽を重ね、より技術を身につけることで、充実した医療を地域に提供できるのではないでしょうか。地域の皆さんに信頼され、愛される病院となるために、まずは医療従事者が成長できる教育環境を整えることが重要と考えています。

たとえば、医師が成長できる環境づくりとして、当院ではさまざまな学会の施設認定を受けており、研修に来た医師が自分の専門分野の資格を容易に取得することが可能です。職員にとって魅力のある病院は、働き方にも現れ、患者さんや地域の皆さんに心のこもった、よりよい医療として還元できると思います。

地域の高齢化が進み、複数の病気を持ち、慢性化する患者さんが増えています。したがって、それぞれの専門性を発揮する専門医にくわえ、患者さんを総合的に診療することができる医師の存在が必要不可欠です。

院内では、幅広い臨床領域を診ることのできるホスピタリストの育成を、地域ではさまざまな角度から診療できる総合診療医(家庭医)の育成を行っています。

 

香川先生

地域の皆さんに「福知山市民病院があってよかった」と思っていただけるような病院となるために、医療や、職員の接遇の面から努力を重ねてまいります。日々の診療だけでなく災害医療や救急医療など、いざという時に対応できるよう環境を整えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

何事にも「なぜ?」と疑問を持ち、その一つひとつを解決していくことができる医師になってください。そういう意味では、キャリアの一時期にアカデミックな環境で鍛えられることも必要です。リサーチ・マインドを持った臨床医が理想です。AIなどが普及してくる時代においては、自ら解決に向け考えることのできる医師が求められます。

現在は、自分自身の専門性を極めていくことを重要視している方が、多くみられます。もちろん、専門的な治療を提供することができる医師の活躍はとても重要なことです。しかし、高齢化が進む現在では、専門的な診療とは別に患者さんを総合的に診療することのできるジェネラリストの存在も重要になってくると思います。

ジェネラリストとして活躍する先生方にも大いに期待したいと思います。

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  • 市立福知山市民病院 院長、福知山市 病院事業管理者

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