院長インタビュー

がん診療を充実させることで地域の活性化を目指す長岡中央綜合病院

がん診療を充実させることで地域の活性化を目指す長岡中央綜合病院
富所 隆 先生

新潟厚生連長岡中央綜合病院 名誉院長

富所 隆 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年02月05日です。

新潟県長岡市に位置する長岡中央綜合病院は、開院から80年以上の歴史を誇ります。患者さんにとって心あたたまる医療を提供することを目指す同院では、診療面の充実だけでなく職員の仕事に対するやりがいや楽しさも追求しています。

長岡市の急性期病院の1つとして地域医療に貢献する同院の取り組みについて、病院長の富所隆先生にお話を伺いました。

長岡中央総合病院 外観

当院は1935年に組合病院として、農家の方々から出資金を募って開院しました。当院の開院した昭和初期は、貧富の差が激しく、貧しい方々は病気になっても経済面から医療を受けることが難しかった時代でした。特に、当時の新潟県には零細農家が多く、この傾向が顕著でした。開院の理念は、どんなに貧しい人でも、等しく医療を受けられる医療機関になることを目的として、発足いたしました。

その後、経営危機のために一時閉院したり、戦災にあったりしながらも、診療科の拡充や増床を行い、長岡市における急性期病院のひとつとなりました。現在は救急医療やがん診療、また若手医師の教育機関として地域医療に貢献しています。

研修医の縫合研修風景

長岡市には、当院を含め3医療機関で急性期医療を提供していて、それぞれが自分たちの強みや専門性を発揮することで、地域医療に貢献しています。なかでも救急医療は3病院の輪番制という形で担っています。3病院が、3日に一回の当番制を布いて、この地区の救急医療を担当しています。救急当番日は原則すべての救急要請に対応することになっており、救急車での搬送も病院を探すことはなく受け入れられますし、病院側も当番日には当直体制を厚くしておくようになり、負担の軽減につながっています。

内視鏡の研修風景

各種の急性期医療のなかでも、当院はがん診療に特に力を注いでいます。2006年にはがん診療連携拠点病院の指定を受け、長岡市内に充実したがん診療を提供することを目標に掲げています。がん診療連携拠点病院の制度は、患者さんが全国のどの地域でも充実したがん診療を受けることができるように制定されたものです。専門的ながん診療の提供だけでなく、地域の医療機関とのがん診療の連携協力体制の構築や、がんの患者さんへの相談支援やサポートなども行っています。

当院では、がんの診断から治療、さらに人生の最終段階における医療(終末期医療)(注)の医療まですべてを担っています。行政からの委託を受け、住民への各種のがん検診を行い、さらに精密検査による診断、そして手術を中心とした治療まで一連の流れで行っています。外科的な治療としては、可能な限り患者さんに負担の少ない鏡視下手術を行っています。術前・術後の化学療法は、病気になる前の生活・仕事を続けていただくことを目的に、30床からなる外来化学療法室を整備いたしました。また、より安全で効果的な放射線治療を提供する目的に、新たに2台の放射線治療装置の導入のための増築工事を2018年に始めました。

外科的治療のみならず放射線治療や抗がん剤治療、これらを組み合わせた治療が可能になり、患者さんの立場に立った、治療法を提案できるように力を入れています。

注:平成27年3月に厚生労働省 検討会において終末期医療から名称変更

形成外科は1981年に開設し、当院の診療を支えてくれている診療科のひとつです。

形成外科は、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献する、外科系の専門領域です。

当院では、乳がんの治療で乳房を切除した患者さんへの乳房再建に力を入れています。ただがんを治すだけでなく、その後の生活にも配慮し、いつまでも患者さんを支える医療を心がけています。

胃がんの発症にはピロリ菌感染が大きく関係していると知られています。当院ではピロリ菌外来を開設し、各種の相談に応じています。また、長岡市医師会・行政との協同のもと、胃がんの早期発見や予防に力を入れています。“長岡市から胃がんで亡くなる方を無くす”という思いのもと、講演会などで積極的な情報発信を行っています。

入院されている患者さんに直接メッセージをお渡しできる、お見舞いメールサービスを行っています。WEB上で入力されたお見舞いのメッセージを印刷して、メッセージが届いたその日のうちに封書として患者さんにお渡しするサービスです。受け取った患者さんからも好評で、入院生活の中で遠方のご友人やご家族などから励ましの言葉をいただくことで、治療も前向きな姿勢で受けられるようになったなどと聞いています。

当院で治療を受けられる患者さんには、みんな笑顔でいてほしいと思っています。そのためには、患者さんと接する職員が仕事にやりがいを持ち、生き生きと働いていることがとても大切です。私は病院長という立場になり、患者さんと直接お会いする機会が減ってしまいました。しかし、私の代わりに患者さんと直接接してくれている職員が、私の気持ちを実践してくれていると信じています。職員が働きやすい環境づくり、仕事にやりがいを感じる職場環境を整備することが、患者さんの笑顔に通じることになると思います。

私が院長に就任してから、職員にお願いして、いくつかの取り組みを始めました。一番気に入っているのは、各職場からなるチーム(19チーム)に分かれて行う仮装綱引き大会です。同じ敷地内にある中央看護専門学校の体育館を借りて行います。ハロウィンから時季がずれていますが、日勤の終了後に全員が思い思いの仮装をして参加します。綱引きに、そして応援に、体育館が割れんばかりの声援に参加者は皆充実した時間を過ごしてくれていると思います。他部署との交流にもなり、交流をつうじて職務での連携をスムーズにするきっかけになって欲しいと考えています。

新潟県全体もそうですが、ここ長岡での人口減少は深刻な問題で、町自体の活気が減ってきているように感じます。活気のある病院づくりを通して、地域の元気を支えていきたいと願っています。病院として患者さんの病気を治すことはもちろんですが、体だけでなく心も癒せることができる病院となれるように職員一同努力を惜しみません。現在ある病院の機能に、患者さんや地域のニーズに応えることができるように尽力していきます。

研修医の集合写真

当院は2003年4月に臨床研修病院の指定を受けました。今年度までに92名(うち1年生10名、2年生10名が研修中)の研修医全員が2年間の初期研修を終了し、新潟大学を中心とした各診療科に所属し、各地で活躍しています。また、現在の定員は10名で、2年生10名、1年生10名が研修中です。

当院の研修は、きわめて実践的で、経験する症例数や身に着けるべきスキルが多いのが特徴です。外来患者数・救急患者数・手術件数・多彩な診療科目など、どの視点から見ても臨床研修に最適な環境と自負しています。

熱い心の指導医、心暖かい看護チーム、しっかりとわきを固めてくれるコ・メディカルそしてそれらが垣根のないチームワークを作って日々の診療にあたっています。

当院のビジョンは『すべての職員が誇りと働き甲斐を感じられる病院づくり』です。これから医師を目指す方々に、ぜひ初期研修の2年間をここで過ごしてほしいと願っています。

研修を終えた医師の中には、就職や大学からのローテーションという形で当院へ戻ってくる医師が何人かいます。大きく成長した様子を見るのが、とても嬉しく、また、今度は指導医として若手を指導している姿は、とても頼もしく思います。

研修医として学ぶ、そして指導医として若手を育てる。そうした歴史を紡ぐことで、しっかりと地域に根を下ろした病院づくりをすることが当院の使命だと思っています。

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  • 新潟厚生連長岡中央綜合病院 名誉院長

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