院長インタビュー

市立長浜病院が体現する「人中心の医療」と「病院の品格」に基づく医療

市立長浜病院が体現する「人中心の医療」と「病院の品格」に基づく医療
市立長浜病院 院長 神田 雄史 先生

市立長浜病院 院長

神田 雄史 先生

目次
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滋賀県長浜市にある市立長浜病院は、急性期病院として重症度の高い患者さんを受け入れ診療する役割と、地域に向けて開かれた公立病院としての使命を担う存在として、地域の医療体制を支え続けてきました。

同院の根底には、「人中心の医療」と「病院の品格」があると、病院長である神田雄史先生はおっしゃいます。この2つの考え方と、同院の取り組みについて、神田先生にお話を伺いました。

人中心の医療が持つ3つの視点

病院外観
病院外観

当院は病院理念に『地域住民の健康を守るため、「人中心の医療」を発展させ、地域完結型の医療を進めます。』と掲げました。

「人中心の医療」でいう人とは、当院を受診してくださった患者さんとご家族、当院の職員、そして地域の医療機関で働く医療従事者の皆さんを指します。

患者さんの権利や尊厳を重視したペイシェント・ファーストの医療を実現するには、医師をはじめ職員の一人ひとりが持つ能力を発揮し、目の前の患者さんを治療して、同時に院内での密な連携や地域の医療機関と共に患者さんを支えていく必要があると考えています。滋賀に昔から伝わる「三方良し」とは少し異なりますが、医療を求める人と医療を行う人それぞれのためになる医療を行うことで、心のかよった病院にしたい、という願いを病院理念に込めました。

品格ある病院であれ

検査や治療が長引くと、患者さんに身体的・精神的・金銭的負担をかけてしまうことがあります。そのため、最低限のことしかしていないように思われる検査や治療は、これらによるストレスを抑えることにつながります。

また金銭的負担について、日本では本来患者さんが負担する医療費の何割かを国が社会保障というかたちで支払っています。社会保障費が増加傾向にあることを考えると、患者さんにとって本当に必要な医療をしっかりと提供して、不必要な診療を控えることは、これからの財政や医療経済を考えるうえでも、非常に重要な意味を持つでしょう。

超急性期から慢性期までに対応することで地域完結型医療を実現

超急性期

院内のICU
院内のICU

当院は二次救急医療機関として、脳血管疾患や急性心筋梗塞などのように一刻を争う病気を発症したりした患者さんを受け入れています。

当院の救急センターでは、心臓カテーテル検査室や脳アンギオ室など特殊な処置室をはじめ、手術室やICUへ直結する専用エレベーターを設置することで、特に迅速な対応が必要な脳血管疾患や心疾患にもスムーズな対応ができる体制を強化しました。

早期退院と社会復帰を果たせるよう、患者さんの状態を見極めながら、退院やその後を見据えたリハビリテーションや機能回復訓練を開始しているのも特徴です。

急性期

厚生労働省は、どの地域に住んでいても等しくがん治療を受けられるよう、全国にがん診療拠点病院を設置しました。当院は、2005年1月に地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、手術、放射線治療、化学療法による集学的治療を行っています。特に、肺がんや乳がん診療に注力しています。がんの状態などによっては患者さんの体にかかる負担を低減する目的で、内視鏡を用いた低侵襲治療も行っています。

患者さんとご家族を対象に、がんと診断されたことや治療によって得た心身の苦痛を和らげるための緩和ケアを行っています。また、がん相談支援センターでは看護師が相談員として、がんに関する悩みについて相談などをお受けしています。

回復期・慢性期

回復期では容態が落ちついて患者さんに対して退院や日常生活への復帰を目標にしています。また慢性期では、病気の再発や予防と体力維持を目的としたリハビリを行います。

リハビリは、老化や病気によって生じた障害を可能な限り改善することで身体的、精神的、社会的に自立して過ごせるようにするための取り組みです。医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの各種スタッフとの協働で行います。

当院は、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟をそれぞれ有しています。

回復期リハビリテーション病棟は、主に脳血管疾患、脊髄損傷、骨折やこれらの治療が原因で身体機能が低下した患者さんを対象にして集中的にリハビリを行います。

地域包括ケア病棟では、原因となる病気にかかわらず急性期を脱したものの、すぐ退院するには不安のある患者さんに身体機能回復を目的としたリハビリを行いつつ、地域の医療機関やケアマネージャーとも連携して、在宅復帰を支援します。

地域完結型医療の実現と今後の課題

長浜市および周辺地域の医療機関とは、ときに切磋琢磨する競争相手となりつつも、病院同士の連携による病病連携や、診療所と協力する病診連携など、お互いをカバーし合う協力体制が作れています。このように、地域完結型医療を実施可能な体制と信頼関係ができており、また、特に在宅医療では嚥下をはじめとする機能面のケアにも熱心に取り組まれている先生も多いことなどをふまえると、この地域の医療水準は比較的高いと考えています。

しかし、この地域も高齢化のピークを迎えつつあります。在宅医療に携わる先生も高齢化が進んでいることから、在宅医療そのものだけでなく、在宅医療を行う医師も、限界に近づきつつあることも事実です。

当院の周辺地域は、特に民間の病院がなく、介護施設などの受け入れ先も不足していることもあり、当院を退院された患者さんはそのままご自宅へと戻られ、ご家庭での療養が難しくなってきた場合には、地域の医療圏外に目を向けられる方もいらっしゃいます。

この地域が抱える回復期・慢性期医療の課題を少しでも解消するため、すでにお伝えしたように当院でも回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟を導入して積極的に活用してきました。

患者さんが持つ医療ニーズに対して選択肢と多様性を有し続け、そして地域の皆さんの健康を守り続けていくためにも、積極的に解決策を模索していく必要があると感じています。

神田雄史先生から地域の皆さんへのお願い

神田先生

当院では、救急医療やがん医療といった急性期医療を行う一方で、地域の医療機関との密な連携に基づいて回復期医療や慢性期医療も実施しています。

これからも、人中心の医療により、患者さんの価値観や治療に対する要望を引き出して、共に治療のゴールを考え歩んでいきます。同時に、有限である地域の医療資源を守るためにも、患者さんの心身の状態を把握して本当に必要な診療を見極め実施する、適正な医療の提供に努めてまいります。

風邪などの日常的な不調は、まずはお住まいの近くにあるかかりつけ医を受診してください。医療の機能分化に対する皆さんのご理解とご協力が、この地域の医療資源の有効活用につながります。