私たちが日頃何気なく利用している病院には、いくつかの機能があることをご存知でしょうか。今後、さらなる少子高齢化が進み、医療のニーズが大きく変化すると予想される日本では、各病院の医療機能の役割分担と連携が必要だといわれています。
今回は、変わりゆく医療ニーズに合わせるために策定された「地域医療構想」と、4つの医療機能について横浜柏堤会 理事長である横川秀男先生にご解説いただきます。
近年、日本では高齢化が急速に進み、2025年には団塊の世代*と呼ばれる方々が75歳を超え、さらなる高齢化社会を迎えようとしています。
将来的に高齢者が増加していくにつれ、必要とされる医療も大きく変化していきます。地域の人々が医療に困らない暮らしを送るためには、医療ニーズの変化に合わせて、それぞれの病院が持つ医療機能を見直し、それぞれの病院が連携を図る必要があります。
団塊の世代…1947〜1949年頃の第一次ベビーブームに生まれた世代
高齢化が進む中で、一人ひとりの患者さんのニーズに合った医療を、効果的かつ効率的に提供するためには、それぞれの病院がどのような医療機能を持つかを決定し、それぞれの病院が連携を図る必要があります。また、退院したあとの患者さんの生活を支えるための体制を強化するために、在宅医療や介護サービスを充実させる必要もあります。
このようなことから、日本では「地域医療構想」が策定されました。地域医療構想とは、各都道府県内の一定の地域ごとに、2025年に必要とされる医療機能やその病床数を予測し、定めることです(後述で詳しく解説しますが、ここでいう医療機能は「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」の4つです)。
地域医療構想の策定にあたっては、各病院が担っている医療機能の現状を把握して、分析する必要があります。その分析に必要なデータを集めるために、「病床機能報告制度」という仕組みが導入されました。病床機能報告制度は、各病院の病床が担っている役割を、4つの医療機能の中から自ら選択し、病棟単位で都道府県へ報告する仕組みのことです。加えて、その病棟の設備、配置されている医療スタッフ、行われている医療行為についても報告する必要があります。
「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」の4つの医療機能が担う具体的な役割は、以下の通りです。
急性期(病気が始まり、病状が不安定かつ緊急性を要する期間)の患者さんに対し、状態の早期安定に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能。たとえば、救命救急病棟や集中治療室などで提供している医療のこと。
急性期の患者さんに対し、状態の早期安定に向けて医療を提供する機能。
急性期の医療が終了した患者さんに対して、在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能。
急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折などの患者さんに対して、ADL(食事やトイレ、入浴や移動などの日常生活上での動作)の向上や在宅復帰を目指したり、リハビリテーションを集中的に提供したりする「回復期リハビリテーション機能」もこれに該当する。
長期にわたって、療養が必要な患者さんを入院させる機能。
そのほか、長期にわたり療養が必要な重度の障害(重度の意識障害を含む)を持つ患者さん、筋ジストロフィー、難病患者さんなどを入院させる機能もこれに該当する。