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横浜市における医療の役割分担〜現状とこれから
医療には、急性期医療や回復期医療、慢性期医療など、さまざまな機能があります。地域住民が医療に困らず安心して暮らすことのできる社会を作るためには、地域住民のニーズに合わせてバランスよく医療を提供す...
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横浜市における医療の役割分担〜現状とこれから

公開日 2019 年 03 月 15 日 | 更新日 2019 年 03 月 15 日

横浜市における医療の役割分担〜現状とこれから
横川 秀男 先生

医療法人 横浜柏堤会 理事長  戸田中央医科グループ 副会長

横川 秀男 先生

目次

医療には、急性期医療や回復期医療、慢性期医療など、さまざまな機能があります。地域住民が医療に困らず安心して暮らすことのできる社会を作るためには、地域住民のニーズに合わせてバランスよく医療を提供する必要があります。横浜市では、行政・病院・医師会などが強固なネットワークを結び、医療機能の役割分担を円滑に進めています。

本記事では、横浜市戸塚区を中心に、さまざまな医療機能を持ったサービスを展開している、横浜柏堤会 理事長である横川秀男先生に、横浜市における医療の役割分担についてお話を伺います。

横浜市における医療体制の過去と現在

連携がまったくとれていなかった時代から、大きな改善を遂げた横浜市の医療体制

私が戸塚共立第1病院に来た1993年頃は、横浜市全体における救急医療体制はまったくといっていいほど整備されておらず、特に小児救急医療は非常に深刻な状況でした。あるときには、中区にあるホテルニューグランドに宿泊していたお子さんが、およそ15kmも離れた当院まで搬送されてきたこともあったほどです。

しかしながら、ここ10年、15年の間で、救急医療を含めた横浜市全体の医療体制は、劇的に改善されました。これは横浜市のバックアップのもと、市内の国立病院や大学病院などが中心となり、体制の整備に尽力してきた結果といえるでしょう。

横浜市にはもともと赤十字病院、済生会病院、国家公務員共済組合連合会病院など、歴史ある大病院をはじめ、かかりつけの開業医・クリニックが多くありました。そのような中で、病院間のネットワークもだいぶ整ってきました。

現在では、多くの大病院はほとんどお断りすることなく、24時間体制で救急患者さんを積極的に受け入れています。また、それらの病院に負担がかかりすぎないよう、二次救急医療病院や中規模の急性期病院は、自分たちができる治療を可能な限り行うことで、地域全体で患者さんをカバーしようという意識が横浜市の医療機関全体に根付いています。

横浜市は人口370万人以上の大都市であり、医療提供体制や病院数に関して、まだまだ課題はあると思いますが、市民の方々にとっても、病院にとっても、安心できる医療体制が築き上げられてきていると感じます。

医療の役割分担の必要性と実践例

地域のニーズに合わせた医療の選択と実践

市民の方々へよりよい医療を届けるためには、地域の中で医療の役割分担を行うことが大切です。つまり、それぞれの病院が、「地域の中でどのような医療が足りないか」を考えて、それに合わせた医療を実践する必要があります。

特に中規模の急性期病院は、医療の役割分担についてより一層しっかりと考え、近隣にある同じ規模の病院と連携しながら、医療機能の住み分けを行う必要があります。

中規模の急性期病院は、大規模病院と違い、キャパシティの面でできる医療が限られており、実践する医療を自ら選択する必要があります。その際に、地域のニーズと大きくかけ離れていたり、近隣の病院と同じような医療を行っていたりしては、市民のための医療を提供しているとはいえません。

地域全体が1つのチームとなって、足りない医療を補い合う〜戸塚区周辺の事例

医療の役割分担という点において、横浜市は適切に分担できている地域であると感じます。私が運営する横浜柏堤会がある戸塚区においても、隣接している泉区や栄区などの病院とネットワークを組んで、患者さん目線に立った医療の役割分担を進めています。

たとえば、横浜柏堤会 戸塚共立第2病院では、外傷や加齢による障害などを対象とした一般整形外科を大きな強みとする東戸塚記念病院が近隣にあることから、同じ整形外科でも専門性の異なる、スポーツ整形外科を2016年に開設しました。これまで戸塚区周辺には、スポーツ整形外科を専門的に診療している病院がほとんどなかったこともあり、現在では多くの患者さんに利用していただいています。

医療の役割分担を進めるうえでは、地域全体が1つのチームとなることが大切です。病院同士、よきライバルとして切磋琢磨し合いながら、互いの強みや特色を尊重し合い、地域が必要とする医療をチームで実践する必要があるでしょう。

横浜市における医療の役割分担の課題

横川先生

急性期治療を終えた患者さんの受け皿の不足

課題としては、手術などの急性期治療を終えた患者さんの受け皿となる回復期病棟や慢性期病棟などが不足していることです。そのために、本来、回復期病棟や慢性期病棟に移っていただくべき患者さんが、急性期病棟に多く残っているという現状があります。急性期病棟は常にほぼ満床状態が続いているため、緊急入院の患者さんの受け入れが難しいケースも出てきます。

戸塚共立第1病院でも、患者さんが増える夏や冬の病床稼働率は、ベッドコントロールをしっかり行っていても満床に近いことがほとんどです。

今後、高齢化社会がさらに進むにつれて、回復期病棟や慢性期病棟のニーズはより高まってくるでしょう。しかしながら、これらの機能を持つ施設を新たに建設するにしても、横浜市には建設できる場所がなかったり、場所があったとしても地価が高かったりなど、さまざまな問題があり、すぐには建設できません。急性期治療を終えた患者さんの受け皿を、どのように作っていくかが今後の課題といえます。

病棟稼働率…病床がどの程度効率的に稼働しているかを示す数値。100%に近いほど、満床状態であることを指す。

急性期病棟が足りていない病院も多くある

回復期病棟や慢性期病棟が不足していることを受け、すでにある急性期病棟の一部をこれらの病棟へ転換させる「病床の再配分」も今後必要になってくるでしょう。

しかし実際には、急性期病棟がまだまだ足りていない地域も多くあり、単純に急性期病棟を転換させればよいということではありません。急性期病棟が足りない病院、急性期病棟を持っていても使いきれていない病院を的確に見極めたうえで、病床を再配分する必要があります。さらに、急性期病棟として使っていない病棟を回復期病棟や慢性期病棟に転換させる場合は、各病院の経営状況が落ち込まないよう、行政によるきめ細かいフォローが非常に重要です。

恒常的な情報発信が必要

市民の方々に向けて、恒常的に医療情報を発信することも、大事なことだと思っています。各病院がどのような強みを持っているのか、どのようなスタッフがいるのか、などの情報が多くの方に伝わり、市民の方々が適切な病院にアクセスできて初めて、医療の役割分担ができたといえるのではないでしょうか。

現在、各病院が独自で市民公開講座を行うなどして情報発信に努めています。興味があって足を運んでくれる一部の方々には発信できてはいるものの、広い範囲での情報発信はまだまだ不十分といえます。

多くの横浜市民の方々に、いかに医療情報を届けるかが、今後の最重要課題ともいえるでしょう。

昭和大学医学部を卒業後、心臓血管外科医としての技術を積む。1993年に36歳という若さで戸塚共立病院の副院長に就任し、病院再建に乗り出す。現在、横浜柏堤会の理事長として、地域に根ざした多様な医療サービスを展開する。