インタビュー

排便障害(便秘、便失禁)に対する治療/ケアの重要性

排便障害(便秘、便失禁)に対する治療/ケアの重要性
味村 俊樹 先生

自治医科大学 医学部 外科学講座 消化器一般移植外科学部門 教授

味村 俊樹 先生

この記事の最終更新は2019年07月12日です。

便秘や便失禁などの「排便障害」は、生命に直接かかわることはありませんが、患者さんの日常生活や心理面に多大な影響を及ぼします。そのため、原因や状況に応じた適切な治療、ケアが望まれます。排便障害治療を専門とする味村俊樹(みむら としき)先生に、排便障害に対する治療/ケアの重要性について、お話を伺いました。

*詳しくは慢性期.comのページをご覧ください。

排便障害(排便機能障害)とは、「正常な排便が障害された状態」で、主な症状に便秘、便失禁、下痢、頻回便などがあります。このうち、本日は「便秘」と「便失禁」についてお話します。

「便秘」という言葉は、一般的に広く知られています。しかし、実際のところ排便習慣には個人差が大きく、患者さんが便秘という言葉で意味する内容はさまざまです。

私は、2010年頃より「便秘」を、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義してきました。この定義は、2017年の慢性便秘症診療ガイドラインなどで採用されています。

便失禁は、「無意識または自分の意思に反して肛門から便がもれる症状」と定義されます。世界的には便失禁の定義がいくつか存在しており、便失禁とガス失禁を区別するかどうかという点について、国際的に統一されたコンセンサスは得られていません。しかし、日本では、現状、便失禁とガス失禁を合わせて「肛門失禁」と定義しています。

味村先生

排泄(排尿、排便)は、私たち人間の生活に密接に関係していますから、非常に重要なことです。特に、高齢者や障害を持っている方は排便障害を起こしやすいため、それらに対する治療、ケアの必要性は高いと考えます。

私は長い間、排便障害を専門的に診療してきました。昔は、排便障害をきちんと診療できる医師や病院が不足しており、便失禁などで困っている方がいても、治療にたどり着けるチャンスが少なかったのです。実際に、「どこへ行っても診てもらえず、味村先生の存在を知って、ここに来ました」と口にする方もいらっしゃいました。

その頃に比べたら、排便障害に関する社会的な理解は広がったように感じています。背景には、インターネットなどによる情報の浸透や、便秘症/便失禁の診療ガイドラインに基づく診療の発展があるのでしょう。

しかしながら、日本における排便障害の治療のレベルは、決して高いとはいえません。これからはほかの医師たちと協力しながら、医学生への講義などを通じて、排便障害の治療の水準を向上させていきたいと思っています。

慢性期.com

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