院長インタビュー

内科と外科の垣根なく、患者さんを第一に考えた医療を提供する金沢赤十字病院

内科と外科の垣根なく、患者さんを第一に考えた医療を提供する金沢赤十字病院
寺﨑 修一 先生

金沢赤十字病院 院長

寺﨑 修一 先生

目次
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金沢赤十字病院は、全国で91ある赤十字病院の1つとして、石川県金沢市の地で90年以上地域に根差した医療を行ってきた病院です(2023年3月31日時点)。内科と外科の垣根なく、診断から治療まで一貫した医療を提供する「消化器病センター」や、高齢化とともに患者数が増えている糖尿病や腎疾患に対するチーム医療を実践する「糖尿病・腎センター」などがあります。赤十字病院の使命である災害救護にも力を入れており、熊本地震や東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)などに、医療救護班を派遣しています。

これからの時代に必要な地域完結型医療の中心となるべく、さまざまな取り組みを実施している金沢赤十字病院の院長である寺﨑 修一(てらさき しゅういち)先生にお話を伺いました。

金沢赤十字病院外観
金沢赤十字病院外観

当院は、石川県金沢市を中心とする石川中央医療圏にあります。1925年に日本赤十字社石川支部産院として開設されました。

1997年には地域災害医療センターに指定されました。地域の災害拠点病院として、災害急性期に現地で活動する専門訓練を受けた医療チーム「DMAT」を配備して、いつどこへでも派遣できる体制を整えています。近年では、2016年に起きた熊本地震や2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)などに、DMATを派遣しています。

2011年には、石川県地域がん診療連携推進病院に指定されています。治療の選択に関しては、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士など他職種のスタッフを交えたカンファレンスを行い、チーム医療の実践に努めています。

2016年から地域包括ケア病棟を増床しました。急性期から回復期までのさまざまな病期の患者さんに対応することで、地域に根差した医療を提供しています。
さらに2023年には石川県から紹介受診重点医療機関に指定されました。これにより、金沢市南部や野々市の方々にとってはかかりつけの先生から紹介されてより専門的な治療を行う、地域の中核的な病院としての位置づけが明確になりました。当院では紹介いただいた患者さんはすべて受け入れ、それぞれの方にもっとも望ましい医療を提供します。

当院がある石川中央医療圏は2040年まで高齢化が進むと予測されています。高齢の方が増えるということは、重症の患者さんが増えるとともに、病気によって日々の生活を自立的に行うことができる方が増えることを意味しています。そのような時代ではこれまでのような単に病気を治す病院は必要とされず、より患者さんのことを、地域のことを考えた病院が必要になるはずです。

そこで当院は2023年、新たに“「思いやりの心」をもって、「信頼される医療」を提供し、「地域に貢献」します”という理念を定め、この地域の医療を中核的に担っていこうと考えています。

思いやりの心をもつことは、当院のスタッフが患者さんの治療にあたるときに最も重視してほしいことです。患者さんやご家族とコミュニケーションを取り、やさしさを持って医療を提供することは非常に重要です。

また、当然ながら当院は、患者さんにとって信頼できる医療を提供していきます。さらに当院は地域の救急の患者さんを受け入れて治療を行う“急性期病棟”、地域の高齢の方を支える“地域包括ケア病棟”、集中的にリハビリテーションを行う“回復期リハビリテーション病棟”を持っており、切れ目ない医療を地域にお住まいの方々に提供することで地域の方々の日々の暮らしに貢献したいと考えています。

当院の消化器病センターは、食道・胃・小腸・大腸といった消化器管や、肝臓・胆のう・すい臓などの消化器分野における疾患全般に対して、内科と外科の垣根なく、診断から治療まで一貫した医療を提供するセンターです。消化器内科医・消化器外科医、看護師が1つの外来に集まって皆さんの診療を行います。

消化器の病気の治療法には、内科医が行う薬物治療や内視鏡治療、外科医が行う手術や抗がん剤治療、放射線科医が行うカテーテル治療や放射線治療など、さまざまな選択肢があり、患者さんが内科と外科のどちらを受診すればよいのか困ることがあったと思います。

消化器病センターが開設されたことにより、内科か外科かで迷われる必要がなくなりました。

また、外来から入院まで一貫して消化器診療を行えます。外来にいらっしゃった患者さんが入院し、検査・治療のうえ手術を行うことになっても、同じスタッフのままシームレスに看護・ケアを継続できます。このことは病気で不安な気持ちの患者さんのストレスを和らげることにつながっています。

さらに当センターは低侵襲(体に負担が少ない)な治療を積極的に行っています。消化器の手術の際に体に開ける創(手術用の孔)をなるべく少なくできる内視鏡手術やカテーテルを使った治療などは、従来に比べて患者さんの負担が少なく、回復も早いため在院日数が短くできます。とくに内視鏡は2021年に機器を入れ替え、より効率的で低侵襲な治療ができるようになりました。

消化器病センターでは、医師や看護師、薬剤師、医師事務作業補助者などの多職種がチームとなって、患者さんそれぞれに適したな治療のご提供に尽力してまいります。

消化器病センター
消化器病センター

日本では糖尿病の患者さんが増えているだけでなく、糖尿病が強く疑われている方も年々増加しています。糖尿病を放置すれば視力低下、腎機能障害、末梢神経障害動脈硬化といった合併症を生じます。高血糖と診断された方は、しっかりとした治療を受けて、糖尿病とその合併症にならないようにしなければなりません。

当院は、地域の皆さんからのニーズに応え、2007年に糖尿病・腎センターを立ち上げました。糖尿病や腎疾患に対し、エビデンスに基づく治療を、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・臨床検査技師・理学療法士などの各専門職が力を合わせ、チーム医療として行っています。糖尿病・腎疾患の早期から進行期に至るまでのあらゆるステージにおいて、常によりよい医療を提供できるよう努めています。

当院では初めて糖尿病を指摘された患者さんや血糖値が悪化された患者さんを対象に、約2週間の糖尿病教育入院を行っています。医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・臨床検査技師がチームとなって、患者さん一人ひとりの治療方針の決定や指導を行います。

また、当院では糖尿病地域連携パスを導入し、糖尿病の地域医療連携を強化しています。診療所などのかかりつけ医との緊密な連携を図り、状態の落ち着いた患者さんは主に診療所で診ていただき、当院と診療所間で患者さんのニーズに合わせた治療を行っています。

2019年4月から、「消化器病センター」「糖尿病・腎センター」に加えて、「骨関節・脳血管リハビリテーションセンター」と「患者総合支援センター」を新たに設置しました。

骨関節・脳血管リハビリテーションセンターでは、当院の整形外科や脳神経外科による急性期医療が終わった後の患者さんのみならず、他院からの紹介で来られる患者さんのリハビリテーションがよりスムーズに行えるよう、体制を整えました。

リハセンター
骨関節・脳血管リハビリテーションセンター

患者サポートセンターの職員を中心に、医療ソーシャルワーカー(MSW)や入退院支援看護師の職員などが協力して退院後の生活まで支援し、同時に効率よくベッドコントロールが行えるよう機能を集約化しました。

患者サポートセンター
患者サポートセンター

当院のリハビリテーションは、急性期・回復期・生活期の全期間を通して、地域に根ざした一貫したリハビリテーションサービスを提供しています。早期の機能回復、家庭・社会復帰を目標とし、理学療法、作業療法、言語聴覚療法を、リハビリテーション計画に基づいて総合的に行っています。回復期リハビリテーション病棟では、土・日・祝日を含め365日リハビリテーションを実施しています。

また、生活環境を早期に把握するための家屋調査を入院直後に実施しており、入院中から退院後の生活を想定してリハビリテーションを実施していきます。必要に応じて退院前にも家屋調査を実施し、患者さん本人のご自宅での動きを確認するとともに、住宅改修や福祉用具についてのアドバイスもさせていただきます。

退院後も継続的に医療が必要な患者さんには、当院が連携する在宅医のご紹介や、訪問看護ステーション・ケアマネージャーなどと連絡調整を行っていきます。

リハビリテーション科の様子
リハビリテーション科の様子

当院には2つの患者会があります。1つは糖尿病患者さんが集う「のぞみ会」と、もう1つはがん患者さんが集うがんサロンを運営する「クロスピンク」です。

のぞみ会は、糖尿病を持つ患者さん・ご家族が交流し、親交を深めながら病気について学んでいます。糖尿病の方がともに語り学ぶことで、生活の質を高めることを目的としています。

クロスピンクは、がん患者さんやご家族にも参加いただけるがんサロンを開催しています。がんの種類や院内外にこだわらずに、どなたでもお越しいただけます。治療を終えられた方も、治療中の方も、ご家族も、仲間として集まり、楽しく情報交換しています。

患者さんやご家族同士、そして医療スタッフと病気についてともに語り合い、分かち合うことで、患者さんの生活の質(QOL)の維持や向上を目指しています。ちょっと心配なことがある、直接治療に関係ないから医師に聞きづらいといった場合は、患者会に参加している当院の医療スタッフに気軽に声をかけてください。

糖尿病デー
世界糖尿病デーには、敷地内を糖尿病予防・治療啓発キャンペーンのシンボルカラーであるブルーにライトアップ

当院は、2016年10月に地域包括ケア病棟を増やし、全病棟の約半分が回復期の病床になりました。そのため、急に調子が悪くなった方や、気になることがあって検査をしたい方、病気はよくなったと言われたけれどリハビリが必要な方、かかりつけ医にしばらくの入院を勧められた方など、さまざまな方からご利用いただけるように、幅広く、かつよりよい医療を提供することを目指しています。

コロナの期間は中断していた地域医療連携懇話会、オープンクリニカルカンファレンス(公開症例検討会)などは2023年から再開し、近隣の病院やかかりつけ医の先生方、介護施設の方との顔の見える関係づくりをますます進めています。

一昔前の医師は、「治療の内容や不安なことを医師に質問できない」「セカンドオピニオンなんてとんでもない」という印象があったかと思いますが、いまはそういったことはありません。病院同士、お互いの得意分野を尊重し合い、開かれたよい連携ができています。もし、在宅医療を希望される場合は、在宅医の先生をご紹介したり、訪問看護の準備をします。より専門的な治療が必要であれば近隣の大学病院にご紹介します。患者さんにご満足いただける医療の提供に努めてまいりますので、お気軽にご相談ください。

私は職員も患者さんもご家族もみんなが仲よく、笑顔があふれるような病院を目指しています。そのために挨拶はきちんとする、医師同士や看護師同士だけではなく他職種とのコミュニケーションを大切にする、ということを心がけるよう職員に伝えています。当院ではチーム医療を積極的に行っていますが、複数の医療スタッフが連携して患者さんの治療やケアにあたるときに同じ治療方針を持っていないと、患者さんが混乱してしまいます。同じ考え方や目線を共有するために大切なものは、コミュニケーションです。職員同士の仲がよく、そして患者さんやご家族も一緒にみんなが仲のよい病院になれるように努力してまいります。

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