院長インタビュー

“世界一強く、そして優しい病院”を目指し、地域のニーズに寄り添う医療を提供する石巻赤十字病院

“世界一強く、そして優しい病院”を目指し、地域のニーズに寄り添う医療を提供する石巻赤十字病院
石橋 悟 先生

石巻赤十字病院 病院長、救命救急センター 医師

石橋 悟 先生

目次
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宮城県北東部に位置する石巻赤十字病院は、地域における高度、急性期病院としての役割を果たすため、“世界一強く、そして優しい病院”を目標に掲げています。

同院の特徴や強み、地域貢献への取り組みなどについて、病院長の石橋 悟先生にお話を伺いました。

石巻赤十字病院 外観
石巻赤十字病院 外観

当院には、赤十字病院として災害時には救護活動に赴くという使命があります。当然、東日本大震災のときにも災害医療の最前線として機能し、各地の救護チームと共に未曾有の大災害を乗り切りました。地域の災害だけではなく、阪神淡路大震災や熊本地震、北海道胆振東部地震など全国各地へ医療者を派遣し、救護活動を行っています。また、海外での国際救援活動も実施し、アジアやアフリカの国々に国際救援要員を派遣しています。こうした活動を支えるため、当院では災害救護にあたれる人材の育成(研修、訓練)を積極的に展開しています。

当院は1926年に日本赤十字社宮城支部病院として開設して以来、地域の医療にあたり徐々に拡大し、近年は“東北一、活気ある病院”を目標に掲げて歩んでまいりました。現在は救命救急センターを有する464床の病院となり(2019年10月時点)、地域の中核病院である高度、急性期病院として、一定の実現がなされたと自負しております。

2018年度からは新たな目標像に“世界一強く、そして優しい病院”を掲げ、よりよい病院づくりに励んでおります。これには、どのような医療環境にも耐えられる強靭な医療提供体制を構築していくこと、そして職員に対して思いやりのある職場環境を提供していくこと、という2つの思いが込められています。これからも地域の医療体制や時代の移り変わり、そして地域のニーズに基づいて、当院の診療体制を設計していく所存です。

救急搬送の様子
救急搬送の様子

当院の救命救急センターは宮城県第二の都市である石巻市に加え、三陸自動車道の延伸で医療圏が伸びたこともあり、周辺地域からも患者さんを受け入れて対応しています。また、三次救急医療機関として重症患者(集中治療室入院患者)に対応しており、多職種の医療従事者が連携して手厚い治療に努めます。

当院は、“地域がん診療連携拠点病院”に指定されており、地域の医療機関と連携してがん診療を提供できるよう力を入れています。

2016年には年々増加する乳がんの診療に加えて外見のサポートや心のケアなど多方面から患者さんを支援すべく、乳がん診療にかかわる機能とスタッフを集約した“ブレストセンター”を開設しました。ここでは、リンパ浮腫セラピストやソシオエステティシャンが化学療法の副作用による外見変化へのケアを提供するほか、2019年度からは、日本看護協会認定の乳がん看護認定看護師が外来から入院、退院まで一貫した看護を行っています。さらに当院では“薬剤師外来”を行い、抗がん剤や医療用麻薬などの服用、有害事象(副作用)などの説明やアドバイスなどで患者さんのサポート体制を充実させています。

また、遺伝性乳がん、卵巣がん症候群の診療体制の整備に向けた取り組みも行っております。ここでは“認定遺伝カウンセラー”の資格取得者による遺伝カウンセリング外来を開設し、さまざまな遺伝性疾患について専門医への“窓口”となるよう努めています。

石巻赤十字病院 内観

石巻赤十字病院 内観

患者さんの受診、入院から退院までを総合的に支援をする部門として、2015年4月に“総合患者支援センター”を立ち上げました。ここでは、患者さんの受診調整から、治療後の転院、在宅医療への移行調整を行うとともに、患者相談窓口、がん相談支援センター、院内ベッドコントロール機能の役割を担います。医療ソーシャルワーカーも配置し、患者さんを医療的側面と社会福祉的側面の双方からサポートして地域医療に貢献しています。

救命救急センターを持つ地域の中核病院であることから、common disease(日常的によくみる病気)から重症例まで幅広い症例が集まり、経験値(臨床の場数)が積める教育、訓練の場として研修医が集まっています。災害医療の訓練や救護活動にも積極的に参加しており、臨床研修では早い段階からさまざまな経験ができると自負しております。

当院には、“職員満足を達成し、働きがいのある職場を確立する“という基本方針があり、今後はさらに重点を置いていきたいと思っています。職員がいきいきと働けるよう環境を整備することや、多忙ななかでもより患者さんとの時間を確保できるような体制づくりなど、院内の働き方改革ということも併せて考えています。赤十字病院としてのマインドをしっかり持ちつつ、今後も職員一丸となって地域医療に貢献できるように取り組んでまいります。

石橋悟先生からのメッセージ

今後は地域の高齢化と人口減少がさらに進み、従来1つの病院で完結できていた医療の提供が困難な状況になりつつあります。地域全体を1つの病院ととらえ、地域の医療機関、行政、住民の皆さんと共にこれからの健康管理や医療、人生の最期について考えていくことが、住民の皆さんへのよりよい医療の提供につながると考えております。当院は地域の中核病院として地域医療ニーズの変化に先んじて対応しながら、引き続き高度、急性期病院としての役割を磨いていきます。

当院は全国から初期、後期臨床研修医を受け入れており、ここでの研修は、医師として活躍するスキルの早期獲得につながると考えています。

研修のコンセプトはただ1つ、“好きにしていい“です。これは、「自分自身がどのような医師になりたいかを考え、それに向かってさまざまなことを決断し進んでいきなさい」ということを意味しています。

研修後の進路をあれこれと指示することはありません。当院で研修し、引き続きここで経験を積みたいのであれば一緒に進みましょう。しかし、やりたいことや学びたいことがほかの医療機関にあれば送り出し、また戻ってきたいと思うのであればまた一緒に働ける日をお待ちしています。