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平成横浜病院の慢性期病棟で活躍する看護師たちの取り組み

平成横浜病院の慢性期病棟で活躍する看護師たちの取り組み
古谷 茂美 さん

平成横浜病院 看護部長

古谷 茂美 さん

目次
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医療界でよく使われる“急性期”や“慢性期”という言葉を皆さんはご存じでしょうか。“急性期”とは、病気などの体の不調により健康を損なわれた患者さんの状態を指し、発症後おおよそ14日間以内が急性期の目安とされています。一方“慢性期”とは病状がほぼ安定し、病気の進行も比較的穏やかな状態が続いている状態をいいます。急性期の治療は終了したものの、まだ継続的な医療提供の必要度が高い患者さんには、ご自宅などに戻られる前に、安心して療養していただける“慢性期病棟”への入院が必要となります。平成横浜病院の看護部長である古谷 茂美(ふるたに しげみ)さんに、同院の慢性期病棟と、日々病棟で活躍する看護師の皆さんについてお話を伺いました。

当院には4つの病棟があります。一般病棟である1つを除いて、慢性期治療を行う地域包括ケア病棟が1つと、主に回復期を担う病棟が2つです。急性期の治療を乗り越えられた患者さんは、身体機能の回復と病状の安定が見られる時期まで、それぞれの状態に合った病棟で過ごされ、退院を目指します。当院では脳卒中疾患の患者さんをはじめ、歯科、皮膚科、整形外科とさまざまな病気をもつ患者さんを幅広く受け入れています。

慢性期治療を行う地域包括ケア病棟は44床、病棟で働く看護師は17名です。2つある回復期の病棟は46床と51床で、それぞれ16名、22名の看護師が患者さんと向き合っています。また、緩和ケアの認定看護師が1名、特定看護師研修を終えた看護師が3名勤務しています(2019年12月時点)。

看護師は24時間365日、交代制勤務を行いながら、患者さんの命と健康を見守るやりがいのある仕事です。当院では2交代制を導入し、時間短縮、パート勤務など幅広い働き方をすることも可能です。

当院の慢性期病棟で活躍する看護師の多くは、急性期病棟での経験が豊富な方や、長期にわたってじっくりと患者さんと関わりたい方が希望されて入職しています。刻一刻と患者さんの状態が変化していく急性期病棟での看護医療と異なり、病気の経過がゆっくりのため、患者さんとの距離が近く、一人ひとりとじっくり向き合うことが可能です。実際に当院にも、「患者さんの退院支援*に携わりたい」という思いを持って勤務している看護師もいます。

*退院支援:患者さんやご家族の方が、症状や体の状態を理解したうえで、医療や看護を継続するためにどこで療養し、どのような生活を送りたいのかという自己決定を支援することなどを指す

実際にどのように看護師が働いているのか、当院の看護師の一日を患者さんへの看護内容とともにご紹介します。患者さんが普段行うリハビリテーションには、体や頭を積極的に使うプログラムを取り入れ、夜間はぐっすりと眠れるような工夫をしています。また、理学療法士や作業療法士、介護士と共に離床チームを編成し、四季折々のイベントを企画しています。最近では8月に夏祭り、5月には運動会を行いました。

慢性期病棟で働く看護師の1日

患者さんは急性期を乗り越えられてきているので、病状が重いわけではありません。しかし、入院前の生活に戻っていただくためにはリハビリや生活訓練が必須となります。リハビリなどに「積極的に取り組みたい」という患者さんもいらっしゃれば、中には「今日は疲れて嫌だ」と難色を示される方もいらっしゃいます。ご本人が嫌だと言うときに積極的に取り組むよう背中を押してしまうと、ご自宅に戻られたときにリハビリをあまりしなくなり、意欲すら失われてしまうこともあります。患者さんが入院前の生活に戻るためには、病院にいるときだけ積極的に取り組むリハビリをするのではなく、いかに「継続できるリハビリ」を目指すかが重要だといえるでしょう。そのため、看護師はリハビリを行う当院の理学療法士・作業療法士と患者さんの間に入り、両者の希望やゴールをうまく調整する必要があります。そんな風に患者さんが継続できるリハビリを行うには、日々身近に接している看護師の力がとても大きいと考えています。

24時間交代制で患者さんと接している看護師だからこそ、患者さんの病状の小さな変化には敏感です。実際に「今日は様子がおかしいな」という気付きから検査をしたところ、データに異変が現れたことがありました。

看護師という仕事の素晴らしいところは、日々の業務で行う補助や介助を通して、その違いに気付くことができる点です。排泄物の量や発疹(ほっしん)、いつもと何かが違うという気付きを医師に報告、その後の処置へとつなげられるのは、患者さんを見る時間が長い看護師たちの観察力があるからこそだと思います。

患者さんは入院中、多くの時間を看護師と共に過ごします。そのため患者さんも「看護師さんに気軽に話せる」「なんでも話したくなる」と感じ、本音でお話をしてくださることがあります。患者さんを看護するうえで何よりも大切なのは情報であり、情報収集のうえで大切なのはコミュニケーションです。患者さんが本音で相談できる存在でいるためにも、患者さんのお話に耳を傾け、寄り添うことが大切です。

慢性期病棟の看護師として、働くうえで一番やりがいを感じるのは、患者さんが笑顔で退院されるときです。リハビリや生活訓練を乗り越え、患者さんが満足そうな表情で去っていかれるときは「また頑張ろう」と心から思います。なるべく患者さんの希望に沿った形で退院できるのは、急性期病棟とは大きく異なる慢性期病棟のよさだと思います。

毎日患者さんと接している看護師でも、脳疾患で言葉が思うように出ない方、自分の気持ちを表現することを控える患者さんのお気持ちを察することに難しさを感じることがあります。しかし、難しいからといって諦めることはなく、コミュニケーションを取るうえで工夫をしたり、病院スタッフとのカンファレンスなどで対処法を考えたりしています。分からないことはそのままにせず、情報共有をしながら学んでいくというのが当院の看護師の強みです。

機能が分担されている一般病棟や大きな病院と異なり、慢性期病棟では診療科にとらわれない幅広い知識が求められます。高齢の方をはじめいろいろな病気を抱えた患者さんがいらっしゃるため、一定の専門領域だけを分かっておけばよい、ということはありません。そのため、看護師も経験の豊かさや知識の豊富さが求められる環境です。

その昔、アルコール性肝疾患の男性患者さんがいらっしゃいました。その方は病院へ運ばれて治療を受けたもののお酒を断つことができず、その後も入退院を繰り返していたのです。その患者さんの入院の際、看護師として関わらせていただいたのですが、その後は外来通院で大丈夫なほど回復へ向かいました。ある日、その患者さんが外来通院にいらした際に「タクシー運転手の仕事が決まった」と報告しにきてくれたのです。一度お世話をした患者さんが健康を取り戻し、お話にきてくれる。看護師として、それはとても嬉しい驚きでした。その方はつい最近もいらっしゃり、近況をお話しされて行きました。

わたしがその患者さんに対して特段何かをしたというわけではありません。しかし、入院時も外来受診の際も積極的に話しかけるようにしていました。根気よくコミュニケーションを取り続けることが、患者さんとの関係性を深めるきっかけにつながったのかもしれません。

平成横浜病院の慢性期病棟を実際にご利用(している/する予定の)ご家族の皆さんに伝えたいこと

当院の看護部は、患者さん一人ひとりを大切に看護することを目標に掲げています。勤務するうえで日々勉強し、技術の向上のため努力していますので、ぜひ安心してご入院いただければと思います。ご家族の皆さんが疑問に思った点やご不明点は積極的に改善・解消していきますので、気軽にお伝えください。当院は、患者さんやご家族の皆さんがどんなことでも話しやすい病院作りをこれからも目指していきます。

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