院長インタビュー

回復期から在宅まで、切れ目のない医療で地域住民を支える洛和会音羽リハビリテーション病院

回復期から在宅まで、切れ目のない医療で地域住民を支える洛和会音羽リハビリテーション病院
木村 透 先生

洛和会音羽リハビリテーション病院 メモリークリニック 脳神経内科 院長

木村 透 先生

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1950年に矢野医院から始まった洛和会ヘルスケアシステムは、70年以上にわたる歴史の中で、いくつもの病院や施設を開業、機能分化を進めてきました。そのなかでも回復期、慢性期、在宅医療を担当するのが、2015年に開業した洛和会音羽リハビリテーション病院(以下、音羽リハビリテーション病院)です。

今回は、院長の木村 透(きむら とおる)先生に、同院の診療体制やリハビリテーション病院として行っている取り組みについて伺いました。

音羽リハビリテーション病院 外観
音羽リハビリテーション病院 外観

当院のリハビリテーション部には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など総勢106名のリハビリスタッフが在籍しており、入院中から在宅療養に至るまで多様なサポートを提供しています(2019年4月時点)。

主に、急性期治療を終えた患者さんが入院する回復期リハビリテーション病棟では、医師や看護師、各療法士、介護福祉士など各分野の専門知識を持ったスタッフが、個々の患者さんに必要なリハビリテーション(リハビリ)を計画・提供しています。後遺症の防止や回復、再発防止を図るため、365日体制で切れ目のないリハビリの実施に努めています。

病室の様子
病室の様子

在宅療養で状態の悪化した患者さんや神経難病患者さん、疲弊した介護者支援のためのレスパイト入院など、主に回復期病棟の受け入れ対象外の方に対する入院診療を行っています。積極的なリハビリ介入を行っていることが、大きな特徴です。

メモリークリニック(物忘れ外来)は、認知症に関するさまざまな相談を受け付ける外来です。私をはじめとした日本認知症学会認定の認知症専門医、指導医と認知症サポート医が診療を担当しています。

複数の神経画像検査や認知機能テストなどを組み合わせた鑑別診断を行い、それぞれの患者さんに適した、薬物療法と生活指導を行います。治療方針に関しては、患者さんご本人や、ご家族とじっくり話し合って決めています。

地域のさまざまな医療、介護サービス機関と連携を行っており、院内に置かれた京都市によって運用される京都市山科区認知症初期集中支援チームとも緊密な関係にあります。また同外来では、新薬の臨床治験にも積極的に取り組んでいます。

正常圧水頭症慢性硬膜下血腫などに起因する、いわゆる治療可能といわれる認知症の場合、早期診断・早期治療によって症状を改善させることができます。アルツハイマー型認知症など根治が難しい認知症も、治療によって進行を遅らせられる可能性があります。

当院の中に、日本音楽療法学会認定の7名の音楽療法士が常勤する洛和会京都音楽療法研究センターが設置されています(2020年1月時点)。当院で入院中の患者さんは、院内にいながら各種リハビリと並行して音楽療法を受けることが可能です。音楽療法とは、歌を歌ったり、楽器演奏をしたり、音楽に合わせて体を動かしたり、音楽を聞くことで、病んだ心と体の機能を改善させる治療法です。リハビリ、認知症やがんの治療、緩和ケアの現場で活用されています。

音楽療法は、自由診療であり公的医療保険の適用外となります。個人で音楽療法を受けられる場合、必要な費用の目安は1セッション(40分)で、税込5,000円です。また、当院の音楽療法は自宅で受けることもでき、ご希望の場合は1セッション(40分)、税込8,000円の費用がかかります。また、音楽療法は必ずしも効果が保証されているものではありません。あらかじめご了承ください。(2020年1月時点)

整形外科では、系列病院である洛和会音羽病院(以下、音羽病院)の整形外科との連携により、主に術前術後の患者さんの外来診療を行っています。また、地域の先生方からも、患者さんの紹介を受けています。

具体的には、音羽病院や近隣病院で手術を受けた患者さんを受け入れ、当院の回復期病棟でリハビリを提供しています。自宅に戻られた後も、必要に応じて訪問リハビリの実施を行うことで切れ目のないケアを提供しています。

また、脳神経内科では、認知症以外にもパーキンソン病頭痛、神経免疫疾患などの病気を対象に、日本神経学会認定の専門医、指導医を含めた脳神経内科分野を専門とする複数の医師が外来診療を行っています。

漢方外来では、常勤の日本東洋医学会認定の漢方専門医がさまざまなご相談に応じています。また、日本東洋医学会の指定研修施設でもあり、地域の漢方医学の質向上と若手の漢方医教育にも力を入れています。

ほかにも、当院には日本循環器学会認定の循環器専門医や日本内科学会認定の総合内科専門医などが在籍しています。さらに音羽病院には紹介外来もあり、同院をはじめとした各専門医療機関と連携しています。

当院に在宅診療専任の常勤医が着任し、2019年10月から訪問診療を開始しています。現在は通院不可能な神経難病患者さんや、がんなどの終末期における緩和医療を受ける方が主な対象ですが、今後は地域のニーズに合わせ、柔軟に対応する予定です。

一方、当院の回復期リハビリテーション病棟で治療を終えた後、住み慣れた自宅でリハビリを続ける必要があったり、希望されたりする患者さんに対しては訪問リハビリを行うことにより、切れ目のないリハビリ医療を提供しています。

訪問リハビリテーションは、理学療法士と言語聴覚士が担当しています。複数担当制をとることで患者さんそれぞれに適切なケアを行い、ご自宅で安定した生活を送れるようになるまでしっかりと支援を行います。

リハビリスペース
リハビリスペース

当院のリハビリスペースは、ガラス張りで、全体を見渡せる造りになっています。患者さんが互いにリハビリに取り組む姿を見られることが特徴です。街中で道行く人たちが立ち話をするように、患者さん同士がコミュニケーションを取り、励まし合う姿も見かけます。

廊下や階段など、リハビリスペース以外でのリハビリに取り組む患者さんもいらっしゃるので、廊下にはベンチを設置するなど、患者さんの負担を軽減する工夫も行っています。

敷地内にあるリハビリガーデンには、歩行訓練のために横断歩道や階段、スロープなど、実際の生活でしばしば目にする設備を整えました。患者さんには、自宅に帰った後の生活を想定した訓練を行っていただくことができます。

リハビリガーデン
リハビリガーデン

当院のある京都市山科区では、複数の病院がそれぞれの強みを活かして連携する役割分担がなされています。

当院が主に担う医療は、急性期治療と在宅療養の間をつなぐ回復期、療養医療です。また在宅医療の支援も行える病院として、洛和会グループ以外の病院、各種施設からの受け入れも積極的に行っており、地域の皆さまに貢献できるように努力しています。

リハビリスペースを見渡せるガラス張りの階段
リハビリスペースを見渡せるガラス張りの階段

当院は、子育てをしながら働く職員を応援するための制度を整えています。

たとえば、育児中の女性職員については、通常の5日間フルタイム勤務ではなく、週2~4日間での勤務が可能です。勤務時間帯も、早出・遅出出勤や長短時間勤務の組み合わせなど、柔軟に対応しています。洛和若草保育園などの院内保育室や病児保育室“よつば”など、職員のお子さんをお預かりする施設も整っています。

また、育児休暇は男性職員も取得可能です。

当院の属する洛和会ヘルスケアシステムでは、新入職員が早く各病院や施設に馴染めるようにさまざまな取り組みを行っています。

たとえば、新入職員が全員参加する合宿研修を行っています。また、入職式の後はグループワークを中心とした研修やレクリエーションにより、他職種のスタッフとも交流できる機会を設けています。

“お姉さん制度”と名付けられた新人看護師のためのプリセプター制度では、先輩職員が新入職員とペアを組んで仕事面・精神面でのフォローを担います。さらに入職後は、1・2・3・5年目のタイミングでフォローアップ研修を行い、他職種の同期との交流を深められるようにしています。

木村先生から

 

リハビリは、これからの地域医療における重要なキーワードの一つです。今や、全ての診療、介護に通底する基本的要件ともいえると思います。また、認知症に対する理解と対応も重要なポイントです。ぜひ興味を持って積極的に取り組んでいただけたらと思います。

年齢を重ねると徐々に身体機能が衰え、ふらつきや転倒が起こりやすくなり、認知機能の低下による物忘れなども増えて、いわゆるフレイル(衰弱)という状態に簡単に陥ります。そのまま放っておくと寝たきりや、介護が必要な認知症へと進んでいきます。

こうした症状に気がついたら、ぜひお気軽に病院へご相談ください。できれば、介護が必要な状態になる前に、どういった治療・工夫ができるかを一緒に考えたいと思います。地域の皆さんに寄り添いつつ、より安心して生活できる地域づくりに貢献できれば幸いです。

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  • 洛和会音羽リハビリテーション病院 メモリークリニック 脳神経内科 院長

    木村 透 先生

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